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[コラム]“アウェイ”のアメリカ代表、準々決勝アルゼンチン戦のカギは?(ジョン・シューマン)

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アメリカ代表は、アルゼンチン代表とつい先月対戦したばかりだ。米国は最初のエキシビションゲームとなったこの試合に、37点差の大勝を収めた(111-74)。リオデジャネイロ・オリンピック男子バスケットボール予選ラウンドでは、オーストラリア(98-88)、セルビア(94-91)、フランス(100-97)と、危うげなディフェンスを露呈しながらも勝ち進み、8月17日(日本時間18日 午前6時45分~)に行なわれる注目の準々決勝に向けて照準を定めている。強敵スペインとは準決勝で対戦する可能性がある。

アルゼンチンに対して、米国は全ポジションにおいてサイズで上回っている。選手層の厚さで上回っている点も大きなアドバンテージだ。さらにアルゼンチンのスターターのうち3人(マヌ・ジノビリ、アンドレス・ノシオニ、ルイス・スコラ)は36歳以上である。その彼らが11日間の間に6試合もプレイすることになる。

しかし、観客の声援はアルゼンチン側に向けられるであろう。米国対ブラジル代表戦は、ホームであるブラジルへの大声援で異様な雰囲気に包まれたことだろう。だが、アルゼンチン戦においても、その雰囲気に大差はないはずだ。大勢のアルゼンチンのファンが会場に詰め掛け、大声援を送るに違いない。

米国のヘッドコーチを務める“コーチK”ことマイク・シャシェフスキー・ヘッドコーチは、アルゼンチンのスピリットを称賛する。彼らの精神力は、熱狂的なファンの声援によってさらに強固なものとなっていく。そしてファンは、今大会がジノビリ、ノシオニ、スコラ、カルロス・デルフィーノの4選手がアルゼンチン代表のユニフォームを纏って戦う最後の大会になることを知っている。だからこそ、ファンの熱の入りようもひとしおだ。

コーチKは「彼らの連携は素晴らしい。彼らはまるで兄弟のようだね」とアルゼンチンについて語っている。

「彼らは長年、共にプレイしてきた。そして彼らは技術的に優れているだけではなく、素晴らしいスピリットを代表チームに植え付けた。彼らはアルゼンチンを、次の段階へと牽引したんだ」。

観客の声援は、米国の選手とファンにどんな影響をもたらすだろうか? 幾人かの代表選手にとっては経験したことのないものになるであろう。アルゼンチンのファンの大声援は、米国のファンを揺さぶり、ひょっとすると味方に引き込んでしまうかもしれない。


2004年アテネ五輪金メダリストのマヌ・ジノビリ、ルイス・スコラらベテランが牽引するアルゼンチンは、予選ラウンドB組4位(3勝2敗)で準々決勝に進出 Photo by Getty Images Sport

これについて、アウェイの大観衆の矢面に立ってプレイしてきた米国のケビン・デュラントは次のように語った。

「かえって僕たちを勢いづけるかもね。僕たちに必要なものなのかもしれない。今までよりも多くのエネルギーをもって試合に臨むことができる。誰もが僕たちが負けることを望んでいるんだ。特にこの会場でね」。

これほどまでにアウェイの敵意に満ちた環境は、11年に及ぶ米国代表ヘッドコーチの経験を持つコーチKにとっても、2010年にトルコのイスタンブールで行なわれた世界選手権の決勝、対トルコ戦以来のものであろう。

17点差(81-64)で米国が優勝を決めたこの試合では、デュラントの28得点の活躍を前に、トルコの観客もただ結果を黙って受け入れるしかなかった。しかし、当時の米国は、デュラントを素晴らしいディフェンスでサポートしていた。一方、今回のチームは、かつてのチームほどのディフェンスをいまだに確立できていない。

「歴代代表チームのような姿を取り戻さないといけない」。

こうポール・ジョージが語るように、ディフェンスの改善は急務だ。

「ショットクロックのブザーが鳴るまで注意を払い続けることを、僕たちのうちの多くが徹底できていないように思う。敵は常に動き続け、常にカットし続け、常にスクリーンを仕掛けてくる。彼らの動きやスピードを様子見する暇なんてないんだ。この姿勢がまさに今最も必要とされている。結局は、相手にしっかりと対応する必要があるということなんだ」。

ディフェンスの問題は、意識というよりも、個人の実力の問題なのかもしれない。コーチKはディフェンス強化に向け、誰にスターターとして多くのプレイタイムを託すかを決めなくてはならない。

カイリー・アービング、クレイ・トンプソン、デュラント、カーメロ・アンソニー、デマーカス・カズンズという現状のラインナップは、フランス代表を相手に20分間で52得点を許した。エキシビションゲームを含む直近10試合のデータを見ると、米国は、カイル・ラウリーが出場している時間帯に、最もディフェンスの効率が良い。また、直近3試合に限って言えば、ジョージが出場しているときの数字が最も良い。この2人は、アルゼンチンの層の薄いベンチ相手に大きな影響をもたらすかもしれない。とはいえ、コーチKは接戦の終盤に、優秀なディフェンダーを起用することにこだわり続けるであろうか?

戦いの火蓋は日本時間木曜日に切って落とされる。残り3試合――ひょっとするとより少ないかもしれないが――という状況の中で、チームUSAのディフェンスは今まさに改善されなければならない。そしてその改善は、これまで経験したことのない環境の中で成し遂げられなくてはならないのである。

原文: U.S. begins medal round with road game vs. Argentina by John Schuhmann/NBA.com
翻訳: 藤澤宗一郎


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ