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ハッスルスタッツ賞に輝いたパトリック・ベバリーの影響力

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どうすれば選手の貢献度を数値化できるのだろう? そして、スタッツには反映されないものの、試合結果に大きな影響を与えるプレイをどうやって数値化すれば良いのだろう?

従来のスタッツに反映されなかったプレイの代表例は、以下の5項目だ。

●ルーズボールへのダイブ

●相手からチャージを奪う献身性

●相手のパスコースを読んで手を出し、ディフレクション(ボールを逸らすこと)を誘うプレイ

●相手チームのシューターとの距離を詰め、競った状態でショットを打たせるプレイ

●チームメイトのために堅実なスクリーンを張り、チームの得点に貢献するプレイ

これまでは数値化できないと思われていた上記の項目も、今では『ハッスルスタッツ』として数値化されている。NBAが考案した新たな計算方法により、どの選手がチームの勝利に繋がるハッスルプレイをしているかがわかるようになった。

6月26日(日本時間27日)に行なわれたNBA史上初の『NBAアウォーズ』で、史上初めて設けられたハッスルスタッツ賞に、ヒューストン・ロケッツのパトリック・ベバリー(28日に成立したトレードでロサンゼルス・クリッパーズにトレード)が輝いた。

同賞の受賞者を決めるにあたり、新たな計算法で算出された数値のトップ5を記録した選手は、以下の通りだ。

1. パトリック・ベバリー(ヒューストン・ロケッツ)
2. ドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
3. ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
4. ゴーギー・ジェン(ミネソタ・ティンバーウルブズ)
5. ナーレンズ・ノエル(フィラデルフィア・76ers/ダラス・マーベリックス)

では、どうやってハッスルスコアを算出しているのか、その内訳を紹介しよう。

●対象選手はレギュラーシーズン50試合以上に出場し、1試合平均15分以上プレイした選手。

●今回計算された5つのハッスルスタッツは、スクリーンアシスト(得点につながるスクリーン)、ディフレクション、ルースボール奪取、チャージ誘発、ショットコンテスト(相手のショットに対する守備)。

●対象選手は、ポジション(ガード/フォワード/センター)別に毎分ごとのスタッツで比較される。

●それぞれのスタッツに関し、対象選手の相対的なパフォーマンスを基準にハッスルスコアが算出される。

●5つの分野のスタッツから算出した数字を合計した結果、パトリック・ベバリーが最高値を記録。

●受賞したベバリーを除くハッスルスコアのトップ10は、上記のトップ5以下、ネネ(ロケッツ)、ケネス・ファリード(デンバー・ナゲッツ)、トニー・アレン(メンフィス・グリズリーズ)、サディアス・ヤング(インディアナ・ペイサーズ)、ポール・ミルサップ(アトランタ・ホークス)。

Patrick Beverley Rockets

■ベバリーのハッスルスタッツ

ハッスルスタッツ ベバリー 全体順位 ガード順位
ルースボール奪取 1.64 1 1
チャージ誘発 0.33 5 2
ディフレクション 3.1 16 9
スクリーンアシスト 0.72 107 7
ショットコンテスト 6.64 120 19


算出されたハッスルスコアの結果、受賞したベバリーはルースボール奪取部門で、ガードと全体で1位の1.64を記録。チャージ誘発部門では、ガードで2位、全体5位の0.33という数字を記録した。

ハッスルプレイを決める選手は、一般的に『向こう意気の強い』、『アグレッシブ』、『激しい』、『全力』、『泥臭い』、『汚れ仕事役』、『妨害者』などと形容される。

受賞したベバリーには、過去に何度となく上記のような形容詞がつけられてきた。言うならば、 彼はトップレベルの曲者である。守備の際には相手を追いかけ回し、ラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー)、カリー、デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)、クリス・ポール(クリッパーズ ※28日にロケッツへ移籍)、カイリー・アービング(クリーブランド・キャバリアーズ)ら、エリートレベルのポイントガードを苦しめている。誰もが対戦する側になるのを嫌うが、味方にすると心強いと思われるタイプの選手だ。

先述の通り、ベバリーは昨季1試合平均31.0分の出場にとどまりながらも、ルースボール奪取部門で全体1位、チャージ誘発部門でも、シャーロット・ホーネッツのケンバ・ウォーカーに次いでガード2位の数値を記録。ハッスルスタッツは毎分のパフォーマンスを基準に計算されるため、ルースボールのリカバリー部門2位だったワシントン・ウィザーズのジョン・ウォール(昨季1試合平均36.0分出場)、チャージ誘発部門でガード1位だったウォーカー(昨季1試合平均35.0分出場)よりもアドバンテージが大きかった。

ガードのハッスルスタッツランキングを見ると、ベバリーは、ディフレクション(ガード9位)、スクリーンアシスト(ガード7位)、チャージ誘発、ルースボール奪取と、4つのカテゴリーでトップ10入りを果たしている。ショットコンテストでは、1試合平均3.4本の3Pに競った計算だ(ガード11位、全体23位)。

ベバリーは、26日に発表されたNBAオールディフェンシブファーストチームに自身初めて選出された(2013-14シーズンはセカンドチームに選出)。ハッスルスタッツは、従来のスタッツや計算方法では試合への影響力を計れなかったベバリーのような選手の力を正当に評価する上で重要な数字だ。

従来のスタッツでは、昨季のベバリーはスティール(1.5)で21位、ブロック(0.4)で131位。これではファーストチームに選出される見込みはない。同様に、出場している時間と、ベンチに下がっている時間のチームパフォーマンスの差を表すスタッツ(プラスマイナス)も参考になるとは言えない。昨季のスタッツを例にあげると、ロケッツはベバリーが出場した時間帯は100回のポゼッションで平均106.0失点、ベンチにいた時間帯は100回のポゼッションで平均106.8失点を記録している。

だが、ベバリーが記録したハッスルスコアを基準に考えれば、パトリック・ベバリーという選手、そして彼が試合にどういう影響を与えているかが、より鮮明に見えてくる。


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ