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[三尾圭フォトリポート第2回] レブロン流リーダー論 ~MSGで感じた"選ばれし者"のリーダーシップ~

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NBAオールスターから始まった東海岸での2週間に及ぶ取材も最終日を迎えて、わたしは「世界で最も有名なアリーナ」に戻ってきた。

今回の出張撮影取材の最後を飾るカードは、マディソン・スクエア・ガーデンでのニューヨーク・ニックス対クリーブランド・キャバリアーズ戦だ。エースのカーメロ・アンソニーが左ひざの手術を受けるためにシーズンを早々と終え、チーム最高年俸を得るアマーレ・スタウダマイアーを契約買い取りで解雇したニックスは、Dリーグのチームかと見間違えるようなロスターでタンキング路線を邁進中。対するキャブズはチームの調子が上向きで、開幕前に優勝候補と騒がれた力がようやく着いてきており、この対戦はワンサイドゲームが予想された。

試合前に今回の狙いをレブロン・ジェイムズ一人に定め、大差が付きレブロンが早々とベンチへ下がる事態も想定して、キャブズのベンチに最も近いところを撮影場所として選んだ。

レブロンがコートでプレーしているときはもちろんのこと、ベンチに下がってからも注意深く観察していると、彼なりのリーダーシップの取り方を再確認できた。

レイカーズのコービー・ブライアントは最近のインタビューで、「リーダーは孤独。上手くいかないときは、いくようにする。だからリーダーはタフであるべき。リーダーは衝突を恐れない。何にも満足しない。リーダーは快適ではない状況にいないといけない。チームメイトを急き立て、駆り立て、能力の限界を引き出す。リーダーが快適に過ごしているようなチームは負ける」と、独自のリーダー論を口にしたが、レブロンのリーダーシップはコービーとは180度逆で、気心の知れた仲間と楽しく盛り上げていくものだ。

ドラフト同期生で仲の良いドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュと一緒にマイアミ・ヒートでビッグ3を結成して、悲願の優勝を勝ち取ったのが良い例だが、レブロンは一人で舵を取るのではなく、信頼できる仲間たちと力を合わせて頂点に君臨した。

そのスタイルはキャブズ復帰後も変わらず、プレーオフ経験のないケビン・ラブとカイリー・アービングとともに負担を分かち合いながらチームを率いている。ベンチに座っていても頻繁にアービングにちょっかいを出して、レブロンの回りからは笑いが絶えない。

コート上では幅広い視野から鋭いパスを繰り出してチームメイトの得点を演出するが、自慢の視野の広さはベンチでも発揮される。一つひとつのプレーに対して的確なアドバイスをチームメイトに与えたり、「俺たちも試合をさっさと終えて帰りたいので、無駄な笛を吹くのは止めようぜ」とレフェリーに野次を飛ばしたりと、ベンチでもレブロンなりのやり方でリーダーシップを示している。それだけでなく、コートサイドの観客の野次にもウィットに富んだ受け応えをして、コート上と同じような万能性を見せる。

しまいには「お前が撮るのはこっち(ベンチ)側ではなく、あっち(コート)だろ」と、レブロンが座っているベンチにレンズを向け続けるわたしにまで絡んできた。

今季開幕前にクリーブランドへ撮影に訪れたときには、プレシーズン戦にもかかわらず、苦しそうな表情を浮かべていたレブロンも、ここ18戦で16勝とチームが絶好調なこともあり、笑顔が多く見られ、楽しそうにプレーしている。

レブロンがヒートに引き続きキャブズも優勝に導くことができれば、マイケル・ジョーダンからコービーへと受け継がれた「孤高のリーダー」時代に終止符が打たれ、仲間たちと和気あいあいと楽しくチームを牽引する"レブロン型リーダー"の時代が訪れるかもしれない。

文・写真:三尾圭
取材:現地2月22日 マディソン・スクエア・ガーデン/ニューヨーク

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