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[コラム]コービー・ブライアント引退を目前に控えて(佐々木クリス)

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“ヒーロー vs 悪役”。KOBEが今季限りの引退を表明したときに打ち出されたコンセプトをみなさんは憶えているだろうか?

自分を愛する人は愛してくれれば良い、憎む人がいてもそれはそれで良い。他人からの評価は受けない、自分は自分の生き方で突き進んできた。それこそが自己の証明と言わんばかりのタイトルだった。この地球上で何人の人が“自分を貫いた”と言える生き方をしてきただろうか。もちろんコービーの人生はまだこれからも先が長い。しかしコート上での華々しいプレイと同じ位その生き様に引きつけられたファンも多いはずだ。

しかし、今や“ヒーロー vs 悪役”という言葉は聞かれない。

どこに行ってもコービーを愛する人しか存在しないからだ。

ボストンのTDガーデンぐらいだろうか、コービーが今季大きなブーイングの中でプレイしたのは……そしてそのブーイングすら試合終了のブザーが鳴らされると、名も無きボストンファンがコービーに宛てた手紙の通り、コービーへの喝采に変わった。

(Hero 対 Villain、引退発表直後のNBA界の反応やボストンファンの手紙の詳しい解説はこちらをどうぞ)

かつては鋭い視線と辛辣な言葉で敵の選手のみならず、味方の選手さえも丸呑みするような“ブラックマンバ”の“戦闘か逃走か”を突きつけてくる剥き出しの闘争本能は影を潜め、コービーの顔には試合中にかかわらず笑みまでこぼれる。

試合中ダンクを狙おうものなら全てのファンが息をのむ。

強烈なトマホークを叩き込んでいた頃とは違って怪我をしないかを心配して……。

長年のライバル選手やライバルチームのファンは昔経験した苦い思い出を忘れていない。

史上最低の勝率でラストシーズンが終わりそうなロサンゼルス・レイカーズとコービーに対して同情するものは1人も居ない。その代わりそこにあるのはNBA史上最長となる1球団で20シーズンを過ごし、数々の記録を塗り替えてきた漢へのリスペクトだ。

素晴らしいスポーツマンシップが各会場を包むが、もはやコービーへの賛辞を送らなければバスケットボール界ではアウトサイダーとまで感じるような状況にまでなったのは驚きだ。

コービーと一言で良いから言葉を交わしたいと試合後に相手選手が列を成す。シューズにサインを求める相手選手が増えたため遠征に持っていくシューズの数は平均5足から少なくとも7足に増え、サインした数は優に30を超えているという。しかも次世代を託すライバルたちにメッセージまで添えている。

何度も言うが悪役はどこにも見当たらない……。

以前も引用したが、かつて引退表明後に今季のコービーのように人々からセンセーショナルな引退シーズンをプレゼントされたレイカーズのレジェンド、カリーム・アブドゥル・ジャバーは現役バリバリの頃には想像もしなかった引退についてこうコメントしている。

『引退よ、君はとても優しかった。ボールを手にせず、背中に番号を背負わない私が選手としてではなく人間として誰なのかを気付かせてくれた』。

コービーの背中に8番を思い描く人もいれば24番を描く人もいるだろう。背中の文字はブライアントと書かれているだろうか? HERO? それとも憎むべきVILLAIN? MVP? それとも優勝の回数?……>>>コラムの続きはWOWOW NBA ONLINEでチェック!!

文:佐々木クリス( WOWOW NBA ONLINE Twitter: @chrisnewtokyo

WOWOW NBA ONLINE 4月8日掲載 「Vol.208 佐々木クリスが語る『コービー・ブライアント、キャリア最大の誤算』」より

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ