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[2017-18シーズン戦力分析]フィラデルフィア・76ers

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2017-18シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第4回目は、フィラデルフィア・76ers編をお届けする。

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2016-17シーズン成績:28勝54敗

新加入選手:マーケル・フルツ(ドラフト)、フルカン・コークマス(ドラフト)、JJ・レディック(フリーエージェント)、アミア・ジョンソン(フリーエージェント)

退団選手:ジェラルド・ヘンダーソン(解雇)

どうやら76ersは、チーム再建を次の段階に進むことができた。そうでなければ、将来のドラフト全体1位指名権になり得る指名権を諦めてまで、2017年ドラフト指名順を2つ繰り上げることはしなかったはずだ。

76ersと同じ立場に置かれた大半のチームなら、何もせず、現状で獲得できるベストプレイヤーを指名しただろう。だが、彼らは違う。ブライアン・コランジェロGMは、同ポジションに就任以降、初めて大胆な決断を下した。今年の新人の中で決して全チームが高評価を下したわけではなく、今後5年以内であっても同年にエントリーした選手の中でベストプレイヤーになれる保証のないポイントガード、マーケル・フルツの指名に踏み切ったのだ。

だが今回の動きは、これまで上位指名権獲得を狙って故意に試合に負ける“タンキング”の代名詞だったチームが、ようやく現在のロスターに登録された選手に満足したことの証でもあった。今後はセンターのジョエル・エンビード(昨季平均20.2得点、7.8リバウンド、2.5ブロックを記録)を中心にチームを作っていくのだろう。そして76ersは、新人スイングマンのベン・シモンズ、万能性の高い若手ロバート・コビントンを高く評価している。

フルツは76ersの選手に相応しい要素を満たしている。高校最終年までトップ選手とみなされていなかったにもかかわらず、ポジティブな志向の持ち主だ。そして、そのフルツと比較するとシューター型ではないシモンズにハンドリングを任せられるコンボガードでもある。76ersは今年のドラフトをコントロールすることを好んだため、ジョシュ・ジャクソン(フェニックス・サンズ)やジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)、その他全体3位で指名できる選手では満足できなかった。

考えられる最高のシナリオは、若手中心のチームが生産的な結果を残すこと、全員が健康な状態を保つこと、そしてアレン・アイバーソン時代以来となる希望を与えてくれることだ。

そのためには、もちろん健康がキーワードになる。エンビードは昨季31試合の出場に終わり、半月板の手術によりレギュラーシーズン終了を迎えられなかった。いまだにチームプランに含まれていると見られるジャリル・オカフォーも50試合の出場に終わり、右足の骨折で全休したシモンズは、大事を取って今年のサマーリーグにも出場しなかった。

つまり、76ersはまだシモンズがどういう選手かを把握できていないのだ。エンビードは出場時間制限のあるなかでの起用でこそモンスター級の活躍を見せたが、来夏制限付きフリーエージェントになるため、チームはコートに立ち続けられていない選手に対して金銭的な決断を下さなければならなくなる。

また、チームの若手の中には勝利を経験した選手がいない。ワシントン大学出身のフルツは昨季負け越してNCAAトーナメントに勝ち上がれず、シモンズもルイジアナ州立大学時代の2015-16シーズンにNCAAトーナメント進出を逃した。そしてエンビードも、カンザス大学でアンドリュー・ウィギンズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)とチームメイトだったが、全米制覇を成し遂げられなかった(エンビードは在学中もけがに苦しんだ面もあった)。

それでも選手個々の過去は関係ないかもしれない。76ersは若く、有望な選手を集めることを目標とし、それは達成された。大事なのは未来だ。その点で言えば、76ersはオカフォーをチームのプランに含めるかどうかを決めなくてはならない。

かつてはチームの中心に位置づけられながら、今季のプランではトップ4のオプションにも含まれていない。エンビードとポジションが同じということもオカフォーにとっては大きな痛手で、弱点のディフェンス、身体能力が足を引っ張ってしまっている。仮にオカフォーをトレードしても、76ersが困ることはない。しかし、NBAではローポストを中心にプレイするセンターの数が減少しているため、オカフォーに対する評価はそこまで高くない。だが76ersは、2017-18シーズン中にオカフォーのトレード先を見つけられた場合に備え、アミア・ジョンソンと格安の1年契約を結んだ。

フルツを指名する前には、フリーエージェントのJJ・レディックを獲得した。昨季76ersは3ポイントショット成功数でリーグ10位(831本)だったが、成功率では同25位(34.0%)に終わった。本来ならサクラメント・キングスから獲得したニック・スタウスカスにレディックが担うような役割を期待していたのだが、今のところ期待に応えられていない。レディックとは年俸2300万ドル(約25億2200万円)という高額な契約を結んだが、単年契約ということを考えれば、双方にとってWin-Winの契約だ。それにレディックは3Pでチームに貢献してくれるだけでなく、ベテランとしてロッカールームに落ち着きを与えてくれる。

フィラデルフィアで起こった変化により、76ersへの期待も高まっている。チケットやジャージーも売れ、ファンもプレイオフ進出の可能性を考え始めた。ただ、若い選手が多いチームには不安定な要素も多いため、期待し過ぎないほうが賢明とは言える。

それでも、ここ4シーズンの間に76ersが経験したことを考えれば、選手もファンも、今年の変化をポジティブに捉えてよいだろう。ましてや、イースタン・カンファレンスでは何が起こっても不思議ではない。それはつまり、来年の4月(プレイオフシーズン)にフィラデルフィアでバスケットボールの試合が見られるかもしれない、ということでもある。

原文:30 Teams in 30 Days: Philadelphia 76ers' long search for firm foundation appears over by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)


2017-18 フィラデルフィア・76ers主要データ

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ