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2015 ユーロバスケット総括リポート(青木崇)

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グループ戦を4か国、勝ち抜き戦となるファイナルラウンドをフランスのリールで開催した今年のユーロバスケット(欧州選手権)。結果は2連覇を狙った地元フランスを準決勝で倒し、リトアニアとの決勝にも快勝したスペインが、ここ4大会で3度目となる頂点に立った。

マーク・ガソル(メンフィス・グリズリーズ)、ファン・カルロス・ナバーロらを欠く布陣ながらも、フランス戦で40点を奪うなど文句なしのMVPに輝いたパウ・ガソル(シカゴ・ブルズ)の大活躍と、相手のフィールドゴール成功率を準決勝で38.4%、決勝で35.4%に抑え込んだ厳しいディフェンスが頂点に立った要因だ。リオデジャネイロ・オリンピックでは、打倒王者アメリカを目指し、3度目の正直を果たすための機会を得た。

とはいえ、スペインが絶対的な強さを見せたわけではない。グループ戦ではセルビアとイタリアに敗れ、ドイツとの5戦目を1点差で辛勝していなければ、ベスト16に進むことさえできなかった。準優勝のリトアニアもグループ戦のベルギー戦で黒星を喫した一方で、全勝で勝ち上がってきたフランスとセルビアは、いずれも準決勝敗退。こういった事実からも、出場チーム間の実力拮抗は明らかであると同時に、16日間で9試合という厳しい日程を戦い抜く力がなければ、頂点に立てないのがユーロバスケットなのだ。

優勝を決めた後、ガソルがこう語ったことがそれを象徴している。

「大会序盤で苦しみ、そこからチームは抱えていた問題を何とか修正し、這い上がることができたと思う。後がないところまで追い込まれたけど、その状況で最高の力を発揮すること、特にディフェンスをよりハードに続けることが相手に勝つために必要と全員が理解していた。チームメイトたちを誇りに思うし、コーチングスタッフはすばらしい仕事をしてくれた」。


Pau Gasol, Spain, Photo by FIBA.com

リトアニアは2大会連続の準優勝と、バスケットボール強豪国としての存在感を示した。ベスト5に選ばれたジョナス・バランチュナス(トロント・ラプターズ)は平均16点(9位)、8.4リバウンド(5位)、FG成功率59.1%(3位)、ダブルダブル4回と、攻守両面でチームを牽引。また、この夏にインディアナ・ペイサーズでサマーリーグに出場したマンタス・カルニエティスは、大会No.1の平均7.8アシストを記録するなど、ヨーロッパ屈指のプレーメーカーであることを改めて証明した。

地元フランスは、スペイン戦の第4Qに6分以上FGを決められなかったことが致命傷となった。第4Q途中の9点リードを守り切れず、頼りのトニー・パーカー(サンアントニオ・スパーズ)は延長戦の中盤で決まれば勝ち越しのフリースローを2本ともミス。ニコラ・バトゥーム(シャーロット・ホーネッツ)も、昨年のワールドカップのような爆発力を発揮できないまま終わるなど、フランスはNBA選手の貢献度が十分でなかった。

ただし、センターのルディ・ゴベール(ユタ・ジャズ)は、バンサン・コレ・ヘッドコーチが「絶対に欠かすことのできない選手」と語ったように、10リバウンド以上、3ブロックショット以上がそれぞれ4回ずつと、昨ワールドカップ同様にディフェンスで強烈な存在感を示した。


Upper: Jonas Valanciunas, Lithuania, Lower: Rudy Gobert, France, Photos by FIBA.com

昨ワールドカップ準優勝のセルビアは、2点差で敗れたリトアニアとの準決勝で力尽き、4位に終わった。今季からミネソタ・ティンバーウルブズでプレーするフォワード、ネマニャ・ビエリツァは、大会を通じて平均13.9点、6.6リバウンド、2.7アシストをマーク。ドライブ、ポストアップ、レンジの広いジャンプシュートによる得点に加え、巧みなボールハンドリングを駆使してゲームメークができるなど、オールラウンダーとしての能力を存分に発揮した。ウルブズに入っても、即戦力として活躍できる可能性は十分にある。

ベスト4進出を逃したギリシャとイタリアにも、メダルを獲得する力はあった。ギリシャは無敗でグループCを突破したものの、準々決勝でスペインに2点差で惜敗。2006年に日本で開催された世界選手権の銀メダリストで元ヒューストン・ロケッツのバシリス・スパヌーリス、ヤニス・ブルーシス、ニコス・ジシスのベテラン3人は、大会後に代表からの引退を表明した。来年の五輪最終予選は、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)を中心に、世代交代を迫られることになるだろう。


Upper: Nemanja Bjelica, Serbia, Lower: Marco Belinelli, Italy, Photos by FIBA.com

イタリアは今回、マルコ・ベリネリ(サクラメント・キングス)、ダニロ・ガリナリ(デンバー・ナゲッツ)、アンドレア・バルニャーニ(ブルックリン・ネッツ)のNBA選手たちの活躍に加え、ロケッツが権利を持つスウィングマン、アレサンドロ・ジェンティーレが飛躍した。このカルテットはチーム平均85.8点中65.8点を稼ぎ、グループ戦でスペインを105対98で倒した際には87点をマークしている。イタリアの爆発力は欧州トップレベルであり、五輪最終予選を突破して五輪出場を果たす可能性は、ギリシャよりも高いと見ていいだろう。

今回のユーロバスケットで台頭したのは、2012年のNBAドラフト2巡目32位で指名された2メートルの大型PGトマス・サトランスキ、身体能力の高いビッグマンである元ワシントン・ウィザーズのヤン・ベセリーによるワンツーパンチが軸となったチェコだ。グループDを3位で突破し、ベスト16ではクロアチアに快勝するなど、7位で五輪最終予選の切符を手にした。

文:青木崇 Twitter: @gobluetree629

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ