NBA

[渡邊雄太 NBAサマーリーグ リポート5]アピールと課題確認の両方ができたサマーリーグ参戦「通用する部分が見えた5試合だった」(杉浦大介)

Author Photo
Sporting News Logo

「収穫はすごく大きかった」――。

初参加のNBAサマーリーグを終えて、普段は控えめな発言が多い渡邊雄太はそう言い切った。ラスベガスで行われた5試合を会場かテレビで見た人なら、そんな言葉に納得することだろう。

ブルックリン・ネッツの一員としてMGM Resorts NBAサマーリーグ2018に参加した渡邊は、7月13日(日本時間14日)にUNLV(ネバダ州ラスベガス校)のコックス・パビリオンで行なわれたインディアナ・ペイサーズ戦に出場した。

11日(同12日)の決勝トーナメント1回戦でヒューストン・ロケッツに敗れて4連敗となったネッツと、1勝3敗のペイサーズ。勝っても負けてもこれで最後の“敗者戦”とあって、ネッツのジャレット・アレン、ペイサーズのアーロン・ホリデーといったNBAロスター入りが確実な選手たちは出場しなかった。

そんなゲームに、渡邊は前戦に続いて2戦連続でスタメン出場。第3クォーター終了時点まではチーム最多の出場時間を記録し、またも存在感を誇示した。

第1クォーター開始3分弱で最初のスティールを決めて勢いをつけると、残り5分40秒には3ポイントラインのやや後方でボールを受け、スピンムーブからの見事なフェイダウェイジャンパーで初得点。さらに残り2分7秒では左サイドでのドライブから13フィート(約4メートル)のプルアップジャンパーも成功し、最初の10分で4得点をマークした。

「いつもと違ったバリエーションの得点の仕方ができていたと思います。今まではトランジションのレイアップか、3Pが多かったですが、今日は1対1から得点できたりだとか、そういう部分を見せることができました」。

このチームでは3&Dタイプ(3ポイントショットとディフェンス)でプレイしている渡邊の得点シーンは確かにお膳立てをしてもらった上であげたものが多かったが、ここで自らもクリエイトできることを示せたのは大きかったはずだ。ディフェンス面では主に2018年ドラフト2巡目全体50位指名のアリーゼ・ジョンソンとマッチアップ。「1対1ではほとんどやられたというイメージはない」という言葉通り、献身的な守備の貢献度も普段通りだった。

17-17の同点で迎えた第1クォーターもあと41秒というところで渡邊は一旦交代すると、そのまま第2クォーターの残り3分まで出番はなかった。渡邊不在の間にネッツは30-46と大量リードを許してしまう。ネッツにはディフェンス、周囲を生かすことを考えてプレイしている選手は渡邊以外にほとんどおらず、過去4戦同様、背番号42がコートに立っている際のほうがゲームは確実に引き締まった。

結局、前半は52-41 でペイサーズがリードして終了し、渡邊は12分で4得点、3アシスト、1スティール。好パスで味方選手のオープンショットを演出するシーンも目につき、ここまでの+/−(プラス/マイナス=当該選手のオンコート時のチームの得失点差)はまたしてもチーム内で唯一プラス(+6)の数値だった。

Yuta Watanabe
サマーリーグ5試合に出場し収穫を得た渡邊雄太 Photo by NBA Entertainment 

第3クォーターも渡邊の好調なプレイは続いていく。8分53秒では珍しくチーム全体が流麗なボール回しを展開したあと、渡邊がドライビングレイアップを成功。その直後には渡邊のジャンパーがファウルを誘い、ここで得た2本のフリースローを確実に決め、8得点となった。このままゲームに出続けていれば、2試合ぶりの二桁得点をマークする可能性は高かったはずだ。

もっとも、この日の渡邊は完璧だったわけではもちろんない。試合後、本人、ジャック・ボーン・ヘッドコーチが口を揃えた通り、より頑強な体躯の選手たちにはやはりフィジカルで見劣りした。8日間で5試合目というハードスケジュールもあって、疲れを感じさせるシーンも散見した。3Pシュートが3本中0本に終わったのには疲労の蓄積が関係したのかもしれない。

「体力ではなく足に疲れがきました。フィジカルが厳しく、踏ん張ろうとする分、余計に足にきます。息が上がるってことはなかったんですけど、やっぱり足が思ったほど動かなくなる時間がありました」。

試合後、渡邊も自身の課題として指摘され続けている部分を素直に改めて認めていた。そして、第3クォーターも終盤にはひやっとするシーンが待ち受けていた。

残り4分5秒で左サイドからドライビングダンクを狙うも、エドモンド・サムナーにブロックされ、フロアに強烈に叩きつけられてしまう。痛そうな素振りを見せた渡邊は、しばらく治療を受けることを余儀なくされる。

その後にベンチに戻るも、第3クォーター終了時で58-91と大量リードされていたこともあり、以降の出場はなかった。結局この日の渡邊は8得点、3アシスト、1スティール。このままネッツは79-116で敗れ、0勝5敗でサマーリーグを終えることになった。

「もうブロウアウト(大差をつけられた展開)でしたし、コーチももう最後の試合ですし、無理して出す必要はないということでした。ちょっと残念な終わり方って言ったら残念な終わり方。でもまあ、しょうがないです」。

試合後、渡邊は左肩をアイシングをしながらメディアの前に現れた。腰は問題なく、ブロックされた際にひねった肩のほうに痛みがあるという。それでも幸いにも軽傷で済み、表情は明るかった。

「大学でやれていたことがどこまでできるんだろうと始める前は思っていたんですけど、やってみて、やはり自分のディフェンスは武器になると思いました。得点に関しても二桁得点取る日もありましたし、今日もずっと出ていたらもっと取れていた。通用する部分というのが見えた5試合でもあった。そういった意味では収穫はすごく大きかったかなと思います」。

本人のそんな言葉通り、サマーリーグの5試合で様々な意味でアピールできたことは間違いない。

最終戦を除く全試合で20分以上をプレイし、オクラホマシティ・サンダー戦、ミネソタ・ティンバーウルブズ戦では二桁得点をマーク。ディフェンスではガードからフォワードまでを懸命にガードし、守備面での多彩さも誇示した。そのプレイで『Watanabe』の名前を浸透させ、地元メディアの取材を受ける機会も増えていった。

「まだまだこれから努力が必要。まだ足りない部分は本当に多いんで、しっかり残り開幕までひたすら努力して、(NBAの)開幕ロスターに残るっていう目標をしっかり掴みたい」。

フィジカルの課題も改めて浮き彫りになり、大目標のNBA への道のりはまだまだ長い。それでも確実に前に進んだ。多くの関係者が揃った場所で、アピールと課題確認の両方ができたのだから、今回のサマーリーグは、渡邊にとって大きな意味のある時間になったはずである。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

写真:田口有史

杉浦大介コラム バックナンバー


渡邊雄太出場予定 ネッツのサマーリーグ日程・試合結果


7/7 AM6:00 ネッツ 80-86 マジック| 戦評 コラム|  ハイライト動画
7/8 AM8:00 サンダー 90-76  ネッツ| 戦評 コラムハイライト動画
7/10 PM12:00 ネッツ 68-79 ティンバーウルブズ| 戦評 コラム| ハイライト動画
7/12 AM7:00 ネッツ 102-109  ロケッツ | 戦評 コラムハイライト動画
7/14 AM5:00 ネッツ 79-116 ペイサーズ │戦評コラムハイライト動画
※日時は日本時間の試合開始時間(ラスベガスとの時差+16時間)。全試合の日程は こちら


日本でのNBAサマーリーグ放送・配信予定


▶  Rakuten NBA Special(Rakuten TV/楽天TV)

▶  NBAリーグパス

[特集]渡邊雄太 NBAサマーリーグ2018挑戦記

著者
杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。