NBA

[渡邊雄太 NBAサマーリーグ リポート3]3戦目のウルブズ戦で14得点「思い切ってシュートを打つことができた」(宮地陽子)

Author Photo
Sporting News Logo

7月9日(日本時間10日)、UNLV(ネバダ大ラスベガス校)のコックス・パビリオンで行なわれたミネソタ・ティンバーウルブズ戦で、NBAサマーリーグ3試合目に出場した渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)は、日を追うごとに確実にコーチ陣からの信頼を勝ち取っているという手ごたえを感じていた。

「きょうは出だしが悪かったんですけれど、それでもしっかり使ってくれましたし、コーチの信頼は高くなってきていると思う。それがプレイタイムにも繋がっています。コーチに信頼されていると思うと、自分自身も気が楽にプレイできるので、きょうは本当に思い切ってシュートを打つことができました」。

守備で安定した存在感


きょうも控えからの出場だった渡邊が最初にコートに立ったのは第1クォーター残り6分23秒の場面。渡邊も言うように序盤はシュートタッチがよくなかった。最初の3ポイントシュートを外し、その後、相手チームからシューターとしてマークされていることに気づくと、2本続けて積極的にドライブインでペイント内に攻め込んだが、2回ともインサイドを守るビッグマン相手に苦しい体勢を強いられてシュートミス。結局、第1Qはフィールドゴール3本をすべて落とし、無得点に終わった。

得点が入らなかった第1Qだが、ディフェンス面では相変わらず安定した存在感を見せていた。試合に出た直後に相手のポイントガード、ジョナサン・スターク(#7)をマークし、彼の3Pをブロック。その後は主にウィングの選手をマークしていた。

初戦、2試合目と相手のビッグマンとのマッチアップが多く、「今回は4番(パワーフォワード)で使われることが多くなると思う。正直、自分がどのポジションをやりたいなどというわがままは言っていられない」と話していた渡邊だが、3試合目にしてウィング選手のマークを任されたことは、最初の2試合で自分のディフェンス力を見せることができた成果だと喜んだ。実際、ポイントガードやウィングとのマッチアップは大学時代の役割と同じで、やりやすい面もあったという。

「僕の初日、2日目のディフェンスを見て、ウィングでもしっかりこいつはつけるなっていうふうに思ってもらえていると思うんで。本当に、ディフェンスしっかりやっていてよかった」。

3ポイントショットで反撃を牽引


第2Qが始まってまもなく、ドライブインでこの試合4本目のシュートを外すと、渡邊はいったんベンチに下がった。だが、3分も経たないうちにすぐにコートに戻ってきた。チーム全体のオフェンスが不調でターンオーバーも多く、点差は開くばかり。一時は最大14点のリードを取られた。

反撃の口火を切ったのは渡邊の3Pだった。前半残り4分30秒に左コーナーから1本目の3Pを沈めて追い上げ開始。ディフェンスでは、大学時代に同じA10カンファレンスでよく対戦し、マッチアップもしていたジャレッド・テレル(#34/ロードアイランド大出身)を相手に、スタッツには残らないものの、シュートチェックからジャンパーを決めさせなかったり、ドリブルでの攻撃もよく抑えていた。

ネッツ追い上げムードの中、渡邊が残り1分31秒に決めた2本目の3Pで29-29の同点となり、そして残り32.7秒に渡邊がトランジションからのレイアップを決めると一時はネッツが31-29と逆転。ハーフタイムを31-31の同点で迎えた。

渡邊雄太 Yuta Watanabe Nets NBA Summer League Photo by Yukihito Taguchi
Photo by Yukihito Taguchi

実は、ティンバーウルブズのロスターには、テレルに加え、デニス・クリフォード(#42/デイビッドソン大)と、A10カンファレンスでよくマッチアップしていた相手が2人いた。サマーリーグという緊張してもおかしくない舞台で、懐かしい顔とのマッチアップになったことは、渡邊にとっても感慨深く、そしてやりやすかったともいう。

「懐かしい顔ぶれと同じコートにまた立てて、ちょっと昔を思い出しました。特に彼ら2人とも大学時代からマッチアップして、本当にやりあっていましたし。大学を思い出すような試合でした」。

ヘッドコーチも渡邊を絶賛


後半に入ってからもリズムよく3Pを打ち続けた渡邊は、第3Q終盤にトランジションからの3Pを躊躇なく打って決め、早々に二桁得点に乗せた。さらに第4Qが始まってまもなく、残り8分44秒にもトップから3P。その後、崩れたオフェンスからの3P、トランジションからディフェンスのいる中で打ったレイアップは外したものの、結局、チーム最多タイの14得点をあげ、2分18秒を残してベンチに下がった。

試合は69-78でネッツが敗れ、サマーリーグ3連敗となったが、渡邊個人は3試合連続で右肩上がりの活躍。認められている証拠に、この日の出場時間はチーム最多の26分26秒。3Pを6本中4本決めてサマーリーグ3試合での自己最多14点に加え、4リバウンド、1アシスト、2ブロックと存在感を示した。

試合後、ジャック・ボーンHCは「コーチ陣としては、彼を安心して使うことができる。彼は私たちにオフェンス面で(3Pを決めることで)スペースを作り出してくれるし、ディフェンス面でも、どんなマッチアップ相手でも躊躇することなく、つけることができる」と絶賛した。

「試合と練習を通して、チームで最も安定したプレイを見せている選手だと思う。ディフェンス面での彼の努力と合わせて称賛できることだ。オフェンス面でアンセルフィッシュに正しいプレイをし、あと、ディフェンス面では身体を張ってプレイする」。

「まだまだ反省点は多いです」


渡邊自身は手ごたえを感じる反面、フィジカル面での課題も感じたという。ひとつはドライブインしたときに、大学とはまたひとつサイズも強さも上のプロのインサイド選手相手にシュートを決めきれなかったことだ。

「ゴール近辺でインサイド選手相手に対するフィニッシュ力がまだまだだなっていうふうに感じました」。

また、ディフェンス時に、スクリーンをかけられたときのフィジカル面で対応しきれなかったことも反省材料だった。

「スクリーンの激しさが大学とここ(サマーリーグ)とではまた少し違う、そこでちょっと最後までつききれなかった部分がきょうもあったりして、まだまだ反省点は多いです」。

もっとも、ボーンHCは、渡邊がフィジカル面で時に苦労している場面も見たうえで、それでも渡邊が落ち込まずにすぐに向かっていく姿勢を持ち続ける点を評価した。

「確かにフィジカル面で、誰かに上腕で当たられたり、彼が自分より大きな選手をボックスアウトしようとしているときに時々圧倒されているときがある。でも、すばらしいのは、それでも彼は打ちのめされることなく、また体勢を立て直して、次のプレイに向かうところだ」。

サマーリーグ前半の予選リーグを終えたネッツは、次は勝ち上がり方式の決勝トーナメントを戦う。対戦相手、試合日程は10日(日本時間11日)の全日程が終わった後に発表される予定だ。決勝トーナメントでは1回戦で負けた場合でもあと1試合組まれるため、最低でもあと2試合、渡邊のサマーリーグ挑戦は続く。

文: 宮地陽子 Twitter: @yokomiyaji
写真: 田口有史

[ハイライト動画]ネッツの渡邊雄太がウルブズ戦で3ポイント4本成功を含む14得点


渡邊雄太出場予定 ネッツのサマーリーグ日程・成績

7/7 AM6:00 ネッツ 80-86 マジック(コックス・パビリオン)
7/8 AM8:00 サンダー 90-76 ネッツ(コックス・パビリオン)
7/10 PM12:00 ネッツ 68-79 ティンバーウルブズ(コックス・パビリオン)
7/12~17 未定
※日時は日本時間の試合開始時間(ラスベガスとの時差+16時間)。最初の3試合の結果次第で以降の試合日程が確定。全試合の日程は こちら

日本でのNBAサマーリーグ放送・配信予定

▶  Rakuten NBA Special(Rakuten TV/楽天TV)

▶  NBAリーグパス

[特集]渡邊雄太 NBAサマーリーグ2018挑戦記

著者
宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

スポーツライター/バスケットボールライター