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渡嘉敷来夢インタビュー「オリンピックの舞台を楽しみたい」(宮地陽子)

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WNBAシアトル・ストームで2シーズン目を戦っている渡嘉敷来夢。今シーズンは、同じポジションに、大学4年間のうち3回全米最優秀選手に選ばれた有望新人、ブリアナ・スチュワート(コネティカット大)が加入したこともあり、控えから出場になると覚悟し、割り切ってシーズンを迎えた。

しかし、2年目の試練はそれだけではなかった。プレイオフ出場を目指すストームは、6月下旬にトレードとFA契約で2人の中堅選手を獲得して戦力補強したのだが、そのうち1人、クリスタル・トーマスが渡嘉敷と同じポジションだったために、控えのプレイタイムを分け合うことになった。出場時間はさらに減り、6月30日のダラス・ウイングス戦では4分の出場に終わっている。

2年目にしてプロチームの厳しさに直面しているわけだが、その一方で、8月から始まるリオデジャネイロ・オリンピックに向けて、身体と気持ちの準備を整えなくてはいけない。どういった姿勢でシーズンを戦っているのか、7月4日、遠征先のアトランタにいる渡嘉敷に電話で話を聞いた。


──WNBA2シーズン目ということに特別な思いはありますか?

うーん、あまり特別意識してはいないですね。ただうまくなりたくて来たという感じで、特別にWNBAにこだわったり、特別にWNBAでプレイしたいという気持ちがあったわけでもないので。

──特別にWNBAにこだわっているわけでもない中で、WNBAでプレイすることを選んだのはなぜですか?

世界最高峰でプレイすることが自分にとってプラスになるのかなって思ったので。チャンスがあるなら、プレイできるのならやりたいと思い、今シーズンも来ました。

──去年1年やってみて、WNBAはどういうリーグという印象を持ちましたか?

タフだなと思いました。試合と試合の合間も全然なくて、移動しての試合もあったりと、身体的には本当にきつかった印象が強いです。あとは選手一人ひとりの身体の強さであったり、技術(の高さ)。見ているだけでなく、試合に出て肌でそういったことを感じられた。自分が知らないことだったので。それは新しく自分の辞書に加わったと感じていて、いい経験ができたと思っています。

──今シーズンを始めるのにあたって、去年との違いは?

今年は同じポジションにドラフト1位(ブリアナ・スチュワート)が入るということなので、それだけ、その選手からいろいろと吸収できるかなと思って、シアトルに戻ってきました。

──ブリアナ・スチュワートが入ったことで、今シーズンは控えになるということは最初から受け入れてやっていたようですけれど、そこは割り切るしかなかったという感じですか?

そうですね。そこはもう、どんなに自分の技術が上になったとしても、むこう(スチュワート)が試合に出るというのはわかりきっていることなので。それは割り切れるかなというのはあります。日本にいてそういう立場だったら悔しいと思うんですけれど、ここはアメリカで、自分がインターナショナル(海外からきた選手)だから、そういう気持ちになるのかなとは思うんですけれど。

──挑戦しに来ている立場だからということ?

そうですね。はい。何か吸収できればなと思っています。やっぱり日本ではトップであり続けることが当たり前ですし、トップじゃないと嫌だっていうのはありますから。アメリカでも、もちろんそういう気持ちではやってはいるんですけれど、さすがに、そういう気持ちを持ち続けてずっとやっていても持たないので。ここはアメリカだからと割り切っています。

──シーズンの始めの頃には、昨シーズンは何も知らなかった分思い切りよくできていたのが、今シーズンは状況がわかっているだけに考えすぎてしまうという話をしていましたけれど、そのあたり、現在はどうですか?

今はもう、出ている間は何も考えず、一生懸命やるっていうことだけを意識してやっています。考えることはなくなりました。

シーズンの始めの頃は、自分が行くよりも味方を探してしまうことがあったんですけれど、今は、基本ボール持ったらまずは自分のことを考えようかなと思ってやっています。

──そうやって割り切って思い切りできるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

きっかけは、どんなに自分の試合内容がよくても悪くても、プレイタイムが限られているので。だから逆に、出ている間は何も考えずに思い切りやろうって思っています。悪くてもよくても5分って決められていたら5分しか出られないし、どんなに調子よくても、ミスしていなくても、代えられるときは代えられるので、まぁ、いいかなと思ってやれるようになりました。

──シーズン中にトレードやFA契約があって、選手が2人カットされてというのは、WJBLではないことですよね。

そうですね。それはやっぱり慣れないですね。カットされるのを近くで見たりだとか。そういうのは精神的にけっこうくるので。それがまだ、(シーズン前の)トライアウトの時期だったら、そんなに深く仲良くなる前ですけれど、去年もいっしょにシーズンをやっている仲間とかがカットされるのは慣れないですね。

──プレイタイムが減った中、この後、オリンピックの前には日本代表に合流するまでの間にどういった準備をするつもりですか?

今は、一番はコンディションとモチベーションですかね。動けって言われたら、多少、最初のほうは動けなかったとしても、(合流してから)オリンピックまで2週間あるので、そこでしっかり作っていけたらと思っています。あとはメンタル的なところで、しっかりと持っていかないと、とは思います。

ある程度動いておかないとだめなので、自主練はこまめにしています。このチーム(ストーム)のスタイル的には外にいることが多いですけれど、自主練ではチームメイトに協力してもらって、中での1対1をやったりしています。そういう風にちょっとずつやっていくしかないですね。あとは、どれだけ日本代表に戻ったときに合わせることができて、仕上げていけるか。日本代表に合流したら何も言わずにやるしかないと思っているので。今は、シアトルでのストレスをオリンピックの舞台でぶつけられたらなって思っています。オリンピックの舞台を楽しみたいと思っています。

日本代表からもビデオだったり、フォーメーションを送ってもらったりしているので。今はちょっとでも時間があるときに、そういうのを見て、モチベーションを高めていこうかなって思います。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

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