NBA

[宮地陽子コラム第91回]クリッパーズのセルビア人コンビ、ミロシュ・テオドシッチ&ボバン・マリヤノビッチ

Sporting News Logo

クリッパーズを盛り上げるセルビア人コンビ

 

今シーズン、ロサンゼルス・クリッパーズには2人のセルビア人選手が加わった。

最初に入ったのは30歳のルーキー、ミロシュ・テオドシッチ(3月19日に誕生日を迎え、現在は31歳)。ヨーロッパや国際試合での実績は十分あり、以前からNBAチームに勧誘されていたが、目標だったユーロリーグ優勝を優先してNBA挑戦を先延ばしにしてきた。2016年にCSKAモスクワ(ロシア)を優勝に導き、ヨーロッパでの契約を終えた去年夏、クリッパーズと契約した。

シーズン途中に加わったのはボバン・マリヤノビッチ。1月下旬、ブレイク・グリフィンのトレードで、デトロイト・ピストンズからトバイアス・ハリス、エイブリー・ブラッドリーと共に移籍してきた。NBA3年目、現役NBA選手のなかでは、クリスタプス・ポルジンギス(ニューヨーク・ニックス)と並んでリーグ最長身の221cm。彼と並ぶと、211cmのディアンドレ・ジョーダンですら小さく見えるほどだ。

子供の頃からお互いを知っていて、セルビア代表ではルームメイトだったという2人の間には強い絆があるが、試合後の行動は対照的だ。取材嫌いのテオドシッチが、試合に勝っても負けても、リポーターたちがロッカールームに入る前に裏口から抜け出して早足で帰途につく一方で、マリヤノビッチはロッカールームの椅子に腰かけ、ニコニコと、早口の英語で取材に答える。

メディアへの対応は対照的だが、共通しているのは2人とも、コート上のプレイで早くもファンを魅了し、人気者だということ。テオドシッチの意表を突くノールックパスは、クリス・ポールがいなくなった痛みを忘れさせる薬のようだ。シュートよりアシストが好きなテオドシッチは、その理由について「幸せになれるのが2人になるから」と語っていたが、同時に、会場にいる2万人近いファンも幸せにしている。

[ハイライト動画]ミロシュ・テオドシッチのノールックパス

クリッパーズのヘッドコーチ、ドック・リバースは「ミロシュ(テオドシッチ)のいいところは、彼が勝者だということだ」と称える。

故障による欠場が多い1シーズン目(現在も足底筋膜炎で欠場中)だったが、出場した45試合では華麗なパスだけでなく、泥臭いハッスルプレイでもチームに貢献していた。そんな究極の負けず嫌いを評価され、勝負所で起用されることも多かった。

マリヤノビッチの場合は、試合に出る時間は限られている。1月末にクリッパーズに加わって以来、出場したのは16試合で平均7.2分(4月4日時点)。2~3分だけ出て終わるときもあれば、10分以上出る試合もある。

それでも、出場時間にかかわらず、試合に出てくればすぐにインパクトを与えることができる選手だ。ほかではないサイズに、相手チームも対応せざるをえなくなるからだ。リバースHCは、試合の流れを変えたいときに彼をコートに送り込む。

「ボバンは(相手チームに)問題を作り出す選手だ」とリバースHC。

「単に大きいだけでなく、スキルもあるし、パスもできる。フリースローも決める。いろいろなことをやってくれる」。

グレッグ・ポポビッチも認めるボバン・マリヤノビッチの人間性

 

マリヤノビッチがインパクトを与え、注目されているのは試合中だけではない、試合前のフロアで、ハリスやジョーダンのビッグマントリオで見せるダンスは、かつてウォームアップ中に繰り広げられていたダンクショーにかわる試合前の名物になりつつある。

2016-17シーズン、NBA1年目のときに所属していたサンアントニオ・スパーズのヘッドコーチ、グレッグ・ポポビッチは、マリヤノビッチのことを「これまでいっしょにやった中でも、誰よりも楽しそうにしていて、愛すべき存在」と振り返った。

「彼はいつでも幸せそうで、どんなことでも楽しんでいる。すばらしい人間。彼を見るたびに、こっちも笑顔がこぼれてくる」。

選手が入れ替わり、主力選手の故障も多く、激動のシーズンを送っているクリッパーズ。4月5日時点ではウェスタン・カンファレンス10位で、プレイオフ出場に黄信号が灯っているが、シーズンがどんな結果で終わろうと、セルビアからやってきた2人の選手が今シーズンのクリッパーズに与えたプラス効果は間違いなく大きい。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

宮地陽子コラム バックナンバー


今なら1か月間無料で見放題! スポーツ観るならDAZN!!

著者