[宮地陽子コラム第79回]岐路に立つクリッパーズ
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[宮地陽子コラム第79回]岐路に立つクリッパーズ

2008年の王者セルティックスと似た状況を迎えているクリッパーズに待ち受ける未来

セルティックス黄金期メンバーが集結

先日、TNTの『エリア21』(NBA中継番組内の人気コーナー。ケビン・ガーネットがホストを務め、毎回ゲストを呼んで試合やNBAの話を繰り広げている)で、2008年のNBAチャンピオンだったボストン・セルティックス同窓会と称して、当時の主力メンバーが集まった。その場に招待されなかったレイ・アレンに対する確執について語った部分が注目を集めたが、彼らの本音トークの話題はそれだけではなかった。

そのひとつが、優勝チームが数年後には解体されてしまったことだった。優勝直後の夏にフリーエージェントになったジェームズ・ポージーと再契約することができず、その2年後にはトニー・アレンにも2年間の契約しかオファーせず、引き留めることができなかった。そして2011年2月にはケンドリック・パーキンズとネイト・ロビンソンがオクラホマシティ・サンダーにトレードになった。優勝から3年たたないうちに、優勝を支えていた選手たちが抜け、まわりからチームが崩れた。少なくとも、選手たちはみんな、そう感じていたようだ。

ガーネットが言った。

「王座を守れるように、優勝チームのメンバーが戻ってこられるようにしてほしかった」。

ラジョン・ロンドも言う。

「僕らには、優勝メンバーみんなが戻ってこられるようなフェアなチャンスが与えられなかった。(チームを去った)彼らは僕らの成功の鍵だった。その点、サンアントニオはうまくやっている。僕らにも、成功するための方程式があったのに、そこから離れてしまった」。

ポール・ピアースも言う。

「彼らを失ったとき、まるで、その穴を接着剤でふさごうとしているように感じた」。

2008年優勝後のセルティックスに似た空気感を持つクリッパーズ

そんな話を聞いて思ったのは、ロサンゼルス・クリッパーズのことだった。ここ2シーズン所属していたピアースは今季限りで引退するが、当時セルティックスのヘッドコーチだったドック・リバースが、球団社長兼HCを務めているからか、あのチームに似た空気を感じるチームだ。

もちろん、クリッパーズは当時のセルティックスとはまったく別のチームだ。セルティックスのような伝統もなければ、優勝したこともない。それどころか、カンファレンス・ファイナルにすら進出していない。今シーズンも、ブレイク・グリフィンの故障離脱があったとはいえ、プレイオフ1回戦で敗退している。

それでも、当時のセルティックスと共通する悩みに直面している。クリス・ポール、ブレイク・グリフィン、ディアンドレ・ジョーダンという“ビッグ3”に払う年俸がサラリーキャップの中で大きな部分を占めており、それ以外の選手がFAになったときに、他チームと競うだけのサラリーをオファーすることが難しくなっているのだ。

この夏のクリッパーズは、ポールとグリフィンがFAになる可能性があるほか、JJ・レディックがFAとなり、ルーク・バー・ア・ムーテ、マリース・スペイツもFAになる可能性が高い。FAになる選手が全員戻ってくる可能性は低いが、誰を残すのか、抜けた選手の穴をどうやって埋めるのか、様々な決断が待ち構えている。

プレイオフを勝ち抜けないのだから、変化を起こすのは当然だという声もある。中には、そろそろチームを根本から変えるときだという意見すらある。


クリッパーズにとって、最初に決断しなくてはいけないのは、ポール、グリフィン、ジョーダンを中心とするビッグ3体制を来季も続けるのかどうかだ。FAになるポールやグリフィンらは自らに選択権があるとはいえ、チームとしても、彼らを引き留めることを最優先にするのかどうかを決める必要がある。そのことは、リバース球団社長兼HCも認めている。

「(チームを補強するために)何が必要なのかはわかっている。私たちの構造だと得るのが難しいこともある。この夏に決めなくてはいけないことのひとつは、このままの構造でいくのかどうかだ。それは間違いなく決断することになる」。

リバース球団社長兼HCに迫る決断のとき

ビッグ3体制を続けると、まわりの選手の補強には限界がある。常に低サラリーで来てくれる選手を探し、戦力になる若手を育てていかなくてはいけない。若手育成の面でクリッパーズはあまり成功してきていないが、来季からはDリーグのチームを持つことが明らかになっており、これまで以上に若手育成に力を入れていくという。

一方で、リバースは、計算だけでは割り切れない思いもあることを明かしている。ポール、グリフィン、ジョーダンはクリッパーズのイメージを変え、新たなレガシーを作り出した功労者なのだから、チームに残って戦い続けるチャンスを与えられるべきだというのだ。

「彼らは、優勝して自分たちのレガシーを築くチャンスを持つべきだと思う。心からそう思っている。実際に私たちがそういう決断をするかどうかにかかわらず、私のなかでは、このフランチャイズの誕生は彼らのおかげだと思う気持ちが大きい」。

リバースがここで「フランチャイズの誕生」というのは、ポールやグリフィンらが生まれる前から存在しているクリッパーズのことではなく、その一員であることを誇りと思えるようなチームの誕生という意味がこめられていた。かつて、自身もクリッパーズの選手だったリバースは、このチームがリーグのお荷物とされていた時代のこともよく知っている。

オーナーがスティーブ・バルマーに交代し、彼のもとでチームが生まれ変わり、他のチームが当たり前にやってきたことを当たり前にできるようになっただけに、そのフランチャイズを初優勝に導くなら彼らを中心としたチームで、という気持ちが強いのだという。

「クリッパーズの歴史上、ラルフ(ベテランの実況アナウンサー、ラルフ・ローラー)以外には、『自分はクリッパーズだ』と思っている人はいなかった。(多くの人々がそう思えるようなチームになれたのは)彼らのおかげだ。だから、彼らがこの先もチームを導いてくれたらどんなにいいだろうと思う」。

チームとしてのレガシーを築いていく中で、そういった人間的な価値観が財産となることもある。一方で、方向転換を図ることで成功することもある。果たしてクリッパーズは、そしてポールやグリフィンは、この夏にどんな道を選ぶのか――。

バルマーがオーナーになって3年余り、チームは大きな岐路に面している。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

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