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[宮地陽子コラム第59回]NBA選手たちのクリスマスゲーム事情

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クリスマスゲームはNBAにとって特別な試合だ。毎年クリスマスには注目の試合が組まれ、全米中継される。今年も、昨シーズンのNBAファイナルのカード、クリーブランド・キャバリアーズ対ゴールデンステイト・ウォリアーズを含む5試合が組まれており、試合開始時間をずらして、朝から順番に行なわれる。アメリカでクリスマスといえば、家族で集まりクリスマス・ディナーを食べる日。その団欒の間に、いつテレビをつけてもNBAの試合が見られるというわけだ。

選手たちからしてみると、クリスマスの日に試合が組まれているということは、それだけ自分のチームが注目されていることの証だ。子供のころに、家族とテレビでクリスマスゲームを見たときの思い出が強い選手ほど、自分たちが、この日にプレイすることを名誉だと思う気持ちも強くなる。

それでも、特に子供がいる父親なら、できればクリスマスは家で過ごしたいもの。だから多くの選手は「クリスマスゲームを戦うならホームゲーム」と願っている。

双子の男の子と女の子のパパでもあるウェスリー・ジョンソン(ロサンゼルス・クリッパーズ)に、愚問と思いながらも、クリスマスの時期にホームとロード、どちらで試合をしたいか聞いてみた。

「家族や子供たちがいて、彼らと一緒に過ごしたいから、ホームのほうがいい」とジョンソン。当然の答えだ。ちなみに、今年のクリッパーズのクリスマスゲームはロードゲームではあるものの、同じ街で同じステイプルズ・センターをホームコートとするレイカーズとの対戦なので、ホームゲーム同然。その点はラッキーだ。もっとも翌日はユタで試合があるため、家で過ごせるのは、クリスマスの朝だけだが――。

「この時期に家族と離れて過ごさなくてはいけないのはつらいけれど、ずっとやっていることだからね。慣れるとは言わないけれど、そういうものだと思ってやっている」とジョンソンは言う。

一方で、この時期に家にいることで大変なこともあるはずだ。たとえば、今もそうなのかはわからないが、かつてボストン・セルティックスは、クリスマス前後の時期を、アリーナが使えない時期としてリーグに提出し、遠征が組まれるように計っていたと聞いたことがある。クリスマス前後は家の行事なども多く、家にいると集中力を欠くから、というのがその理由だった。

そこで先日、この時期にホームにいられることがどれだけ嬉しいかを語っていたフェスタス・エジーリ(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)に、あえてこの時期にホームゲームが続くことの大変さを聞いてみた。今年のウォリアーズは、12月半ばからクリスマスを挟んで月末まで、5試合連続で約2週間、遠征がなくホームゲームが続いているのだ。

エジーリは、そんなひねくれた質問にも、彼らしく真面目に答えてくれた。

「確かにホリデーの間は、みんな学校が休みで、家族が遊びに来たりするからね。みんなが来て、両親は料理を作ってくれる。チケットのリクエストがいつもよりずっと多い。いつもより気が散ることがたくさんある。僕らのやっていることをいっしょに楽しみたいと思う人たちがたくさんいるのは悪いことではなく、いいことなのだけれどね。でも、そんなホリデーの雰囲気によってやらなくてはいけない仕事から少し気が散ってしまう。僕ら(ウォリアーズ)はすばらしい選手の集まりだから、みんな、それでも練習する時間をきちんととり、集中するように努めると思うけれど、一般的に言うと、ホリデーにホームにいるということは、チームにとっては気が散ることだと思う」。

今年のクリスマスに、そのウォリアーズと対戦するために、3500km離れたクリーブランドから遠征してくるのがキャバリアーズだ。昨シーズンのNBAファイナルの組み合わせとあって、見るほうには楽しみなカードだが、去年はマイアミでクリスマスを迎えたキャバリアーズの選手にとっては、2年続けて遠征先でクリスマスを迎えることになる。今年で10回目のクリスマスゲームを戦うレブロン・ジェームズにとっては、なんと、これが7回目のアウェイでのクリスマスゲームだという。

ジェームズ家のクリスマスの慣習について聞かれたジェイムズは、こう語ったという。

「残念ながら、今年もクリスマスは家族といっしょに過ごすわけではない。だから、うちにはクリスマスの慣習はないんだ。クリスマスにホームゲームをすることができたら、そのときには我が家にもクリスマスの慣習ができるだろう」。

なんだか寂しい話だが、実は、ジェームズが今年クリスマスにホームゲームを戦えない理由の大元は、ジェームズ自身にあった。

というのも2年前、当時マイアミ・ヒートにいたジェームズは、チームメイトのドウェイン・ウェイドらと共に、NBAコミッショナー就任直前のアダム・シルバーとのミーティングで「ディフェンディングチャンピオンの自分たちがクリスマスを遠征先で戦わなくてはいけないのはおかしい」と不満を表明したのだ。シルバーは、もっともだと意見を聞き入れ、前シーズンのチャンピオンはホームでクリスマスゲームを戦えるように配慮するようになった。その次の夏にキャブズに移籍したジェームズは、それ以来優勝から遠のいており、去年も今年も、クリスマスはロードで迎えることになったというわけだ。

果たして、ジェイムズは今シーズン優勝して、来年のクリスマスでのホーム開催を確実にできるのか。その前哨戦としても、25日(日本時間26日)のキャブズ対ウォリアーズの試合に注目だ。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ