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[宮地陽子コラム第53回]渡嘉敷来夢一時帰国、日本代表ヘ合流 「オリンピックには絶対に出たい」

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WNBAのシアトル・ストームでルーキー・シーズンを送る渡嘉敷来夢が、日本代表に合流するために一時的にストームを離脱、8月23日に帰国した。

成田空港で集まった取材陣を前に開口一番、「自分、太りました?」と聞いてきた。アメリカに渡って約3か月、フィジカルの強い選手たちを相手にするためにトレーニングした成果もあり、3~4kg体重が増えたというが、「自分ではそれが筋肉なのか脂肪なのかわからなくて、久しぶりに会う人ならわかるんじゃないかと思って」と笑った。

「(アメリカでは)みんなから『なんでそんなにヒョロヒョロなんだ』『もっと強くしろ』って言われる。自分が『太ったかな』って言うと、『太ったかじゃないよ』『そんなこと言っている場合じゃない』って突っ込みが激しいです」。

それでも、アメリカで高さや強さを相手にしてきたことは自信になっている。8月29日から中国・武漢で始まるアジア選手権(リオ五輪予選)では、その経験を生かして優勝を狙い、オリンピック出場権(※)を取りたいと意気込む。

WNBAでの経験をどう考えているのか、オリンピック予選を戦うために途中離脱したストームのチームメイトたちから、どんなことを言われて送りだされてきたのか――。23日の成田空港、24日のナショナル・トレーニングセンターでの囲み取材から、渡嘉敷のコメントをいくつか抜粋してお届けしよう。

※アジア選手権の優勝チームにオリンピック出場権、2位と3位のチームに来年、オリンピック前に行なわれる世界最終予選出場権が与えられる。


アジアの人を吹き飛ばしていきたい


●WNBAでの収穫
「アメリカで、身体は強くなったと、自分では思います。太ったように見えると思うんですけれど、その少しは筋肉で、身体が強くなった部分で、たくましくなったなって思えるようなプレーをしたら、『あいつ太っただけじゃないな』って思ってもらえるかなって思います」

●WNBAで経験し、学んだことで、代表のチームメイトに伝えたいこと
「ボールに対する執着心だったり、あとはたぶん、(ストームで勝てない分)誰よりも勝利から離れていると思うので。勝ちたいという気持ちは、たぶん誰よりも強いと思います。そこはプレー面で見せていけたらなと思います」

●WNBAでの経験をアジアでの戦いでどう生かすか
「オフェンス・ファウルになるぐらい、アジアの人を吹き飛ばしていきたいなと思います。たぶんアメリカよりは強いことはないと思うので。そこは自分の強みとしてやっていきたいです」

●ストームを離れるときのチームメイトとの会話
「寂しいって言いました。みんなと離れるのはやっぱ寂しいです。あと、ストームとしてプレーオフも出たかったんで。そのためには自分がいないこの4試合がだいぶ大事で、それはちょっと残念かなぁという会話をしたりしました。『みんなにいい報告できるように頑張ってくるから』って言ったら、みんな『頑張れ~』って応援してくれて。みんなとハグしてきました」

「スー(バード)は『こっちでやっていたらアジアなんて大丈夫だよ。アジアの中だったらみんな突き飛ばせるんじゃない? タクでも』って言っていました(笑)。あとは『日本にいるよりもシアトルにいて成長できたから、それをみんなまだ知らないから、大丈夫だよ、自信を持って』とも言われました。ヘッドコーチも『タクが進化したのを誰も知らないからね』と言ってくれました」

●オリンピックに対する思い
「少し前、2、3年前までは(特別な舞台とは)考えられなかったんですけれど、今はバスケットをやっている以上、選手である以上は、オリンピックには絶対に出たいと思います。スポーツマンとしての最高の舞台だと思っています。今は想像しかできないので、実際にオリンピックに出場して、オリンピックがどういうところなのか、皆さんにご報告したいです」

「スー(バード)は3回金メダル取っているんですけれど、『オリンピックは絶対に出るべき場所だよ』みたいなことは言っていたので、オリンピックへの思いはそれでまた一層強くなりました。金メダリストが言っているんだから絶対だなって思います」

●WNBAでメンタル的に鍛えられたところ
「むこうに行って、あまりしょげることがなかったので。逆にボコボコにされたり、守れなかったり、すごい選手とマッチアップしたときに、『ヤバイ、すごい楽しい』っていうのに変わっちゃっていたので。自分がブロックされたり守られたときは、『自分、守られちゃったよ』って思いながら。でも、次はああしたい、こうしたいっていうのがすぐ生まれてきたんで。逆に、それがメンタル的にいいところというか、楽しさを知れた部分なのかなって思います。メンタルは、強くなったと思います」

「すごい選手とマッチアップできると、試合前からワクワクしちゃいます。そんな感じは今までなかったので、それは新しい自分だし、新しい感情かなって思いました。でも、本当に、悩んだといえば、チームのためにどうしよう、どうしようと思って考えすぎちゃったらだめになっちゃったので、そういった部分では、この日本代表でもあまり考えすぎないようにしたい。本能で動いたり、考えないで動いたほうがチームのためになると思うので。それはストームのコーチとかにも言われています」

●日本中から大きな期待を受けて
「高校のときから、その期待には応えてきていると思うので。今回も、その期待に応えられるように。(準備の)日数は少ないですけれど、あとはやるだけなので、やっていきたいなと思います」

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

 

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ