NBA

[宮地陽子コラム第50回]渡嘉敷来夢インタビュー「だいぶその強さには慣れてきた」

Sporting News Logo

WNBAのシーズンも開幕から1か月余がたち、間もなく折り返しを迎えようとしている。シアトル・ストームの渡嘉敷来夢は開幕から7月15日までの全16試合に出場(うち2試合はスターターとして出場)、平均20分弱のプレータイムを得て、チームに貢献。6月28日のタルサ・ショック戦では21得点をあげてもいる。調子がいいときだけでなく、強敵相手に苦労したり、試合に勝てなかったり、うまくいかないことも多いが、それでも世界のトッププレーヤーたちが集まるリーグで戦う毎日は刺激的なようで「本当に楽しい」と顔をほころばせる。

ストームは過去に2004年と2008年に優勝したことがあるが、今は再建期にある。ヘッドコーチのジェニー・ブーセックは「今年のチームの目標は共に成長していける若い選手たちを見つけ、育てていくこと。ストームにとって最初の世代から次の世代に移行すること」と言っており、渡嘉敷のことも、次の世代のストームの一人として考えているようだ。

7月12日、フェニックス・マーキュリーとの対戦後に、渡嘉敷にシーズンを戦ってきて刺激を受けていることや、どんなことを考えてプレーしているのかを聞いてみた。


──WNBA開幕からここまで戦っての自分での手応えはどうですか?

最初の頃よりはだいぶタフにはなってきたのかなと自分では思っています。最初の頃はみんな強くて──今も、みんな強いと思うんですけれど、だいぶその強さには慣れてきたと思います。

──試合数も多いですよね。日本だと週末だけなのが、こちらでは週3~4試合あって……。

はい。試合の間が全然ないです。あと、シアトルは(他のチームに比べて)一番、移動が大変なので。移動してその日に試合ということもあったので、本当にタフだと思います。たぶん、これからは日本の移動なんて全然苦じゃないですよ(笑)。しかも、その飛行機移動に慣れてきちゃっている自分が怖いなって思います。

──味方でも相手チームでも、他の選手を見ていて刺激になるところはありますか?

すごくあります。味方は、練習中いつもやっているし、この人たちはトップの選手なんだなって、すごく感じます。対戦相手では、特に試合でチャンピオン・チームとやるとき、ミネソタ(リンクス)やフェニックスとやるときは、一人一人がすごいなって思います。自分はあまりWNBAの選手を知らなかったんですけれど、ミネソタの人は、見たことがある人たちばかりで。

──外から見ているだけでなく、実際に対戦することで、身をもって相手の凄さを実感することもありますか?

見ていてもわかると思うんですけれど、肌で感じると、より一層強さを感じて、『ヤバイな、この人たち』って思います。

──一番ヤバイなと思ったのは誰ですか?

今回ドラフト2位で入ったタルサの選手(アマンダ・ザウイB)も強いと思いました。どのチームもセンターは強いです。3番というよりも5番寄りの4番が出てくると、『ウワッ』って思います。どちらかというとポストのディフェンスは今も苦手です。自分より大きくて強い人たちにつくことは、これまであまりなかったので。そこはパワーで勝てないので、足を使って、フットワークを使って、まわってやれって言われていたのですけれど、その通りだなって。そこも勉強ですよね。

──お手本にしてみたいという選手はいますか?

やっぱりデュプリー(フェニックス・マーキュリーのキャンディス・デュプリー)はすごいですね。あの落ち着きというか余裕が…。『そこでシュートを打つ?』みたいなタイミングで決めるし。自分はフィジカルになると焦ったり、急いでしまったりというのがあるんですけれど、あれぐらい余裕があったらいいなって思います。

勝負どころで強いなと思うのはミネソタ組ですかね。サモーン(オーガスタ)とかマヤ(ムーア)はすごいなって思います。あとは、チームメイトのスー(バード)の経験、ゲームのコントロールのしかたは、さすがです。スーがコートに出てくるだけで、ゲームがサーって落ち着く感じがします。

Ramu Tokashiki vs Candice Dupree, 10 July, 2015, Photo by NBAE/Getty Images

 

──ここまでで、自分で一番満足感があった試合は21点をあげたタルサ戦ですか?

21点のときもそうですけれど、初めてスターターで出た試合(6月27日のサンアントニオ・スターズ戦)で14点とったときも(印象に残っています)。その頃からわりと思い切りよくできているのかなとは思っています。

──チームとしては勝てなくて苦戦のシーズンを送っているわけですが、勝てなくて、負けが続く状況については、自分の中ではどう消化して、対応していますか?

勝っていながら逆転負けして……という試合が3試合続いて、4試合目にやっと勝てたときは、いつかは勝てると信じていたのが実ってよかったなと思いました。

(勝てないときは)やっぱり悔しいですけれど、強いチームに競っているので、それなりに自分たちの力にはなっているのかなとは思います。監督(ブーセックHC)は『今年は勝てなくても、これからのチームだ』と言っていて、確かにその通りなのかなと。(日本で)ずっと上位のチームにいただけに、ある程度割り切っていないとメンタルが落ちていっちゃうので。逆にそこは開き直ってやっています。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

 

【バックナンバー】

[宮地陽子コラム第49回]マブス移籍を決断したD・ジョーダンが抱えていた“目標と現実のギャップ”

[宮地陽子コラム第48回]クリーブランド・キャバリアーズの絶望と希望

[宮地陽子コラム第47回]スティーブ・カーHCがついた“嘘”

[宮地陽子コラム第46回] ロッドマンとカーを彷彿させるドレイモンド・グリーン

[宮地陽子コラム第45回] 敗将ドク・リバースが奏でる”鎮魂歌”

[宮地陽子コラム第44回] 好調クリッパーズの“パパたちの幼稚園”

[宮地陽子コラム第43回] “鉄仮面”ティム・ダンカンの人間味あふれる素顔

[宮地陽子コラム第42回] アジアの血を受け継ぐレイカーズの期待の星、ジョーダン・クラークソン

[宮地陽子コラム第41回] ホークスの躍進を支えるドイツ産若手有望PG、デニス・シュローダー

[宮地陽子コラム第40回] NBAデビューを果たしたジョン・ストックトンの息子デイビッド

[宮地陽子コラム第39回] コービーの"恋唄"とウェストブルックの"返歌"

[宮地陽子コラム第38回] LAに帰還したパウ・ガソルが示したレイカーズへの思い

[宮地陽子コラム第37回] ウォリアーズのロッカールームに掲げられたスローガン

[宮地陽子コラム第36回] 他チームとは異なる76ers独自の"成績表"

[宮地陽子コラム第35回] "今年のサンズ"と評されるバックスの予想外の躍進

[宮地陽子コラム第34回] コービーとジョーダン、2人に通ずるメンタリティ

[宮地陽子コラム第33回] ジミー・バトラーが語る"成長の理由"

[宮地陽子コラム第32回] アイザイア・トーマスが語る"小兵の心構え"

[宮地陽子コラム第31回] 1勝が成否を分ける“歴史的な激戦”がまもなく開幕

[宮地陽子コラム第30回] ウォリアーズのS・カー新HCが浸透させつつある“自分らしさ”

[宮地陽子コラム第29回] 故郷に戻ったレブロンがメディアデイで見せた笑顔

[宮地陽子コラム第28回] ボリス・ディアウがFIBA W杯で示したリーダーシップ

[宮地陽子コラム第27回] FIBA W杯: 米国代表の頼れる男、ケネス・ファリード

[宮地陽子コラム第26回]デリック・ローズが語った “天井知らずの自信”

[宮地陽子コラム第25回]レイカーズのJ・リン――過去にとらわれることなく

[宮地陽子コラム第24回]NBAサマーリーグに参加した日本人たち

[宮地陽子コラム第23回]レブロン復帰、ウィギンス獲得などで注目を集めるキャブズ

[宮地陽子コラム第22回]王者スパーズのP・ミルズと日本の意外な関係

[宮地陽子コラム第21回]”オールドスクール”なポポビッチHCとダンカンの知られざる攻防

[宮地陽子コラム第20回]J・クロフォードの人柄が表われていたシックスマン受賞スピーチ

[宮地陽子コラム第19回]混乱のなかで際立つリバースHCのリーダーシップ

[宮地陽子コラム第18回]物議を醸したビデオ判定が示す“バッドボーイズ時代との違い”

[宮地陽子コラム第17回]移籍後もレイカーズファンに愛されるスティーブ・ブレイク

[宮地陽子コラム第16回]間近で見ることが増えて確信したJJ・レディックの真価

[宮地陽子コラム第15回]ジャクソン、ダントーニ、ウッドソン――ニックス対レイカーズ戦で見られた“複雑すぎる人間関係”

[宮地陽子コラム第14回]NBA選手も虜にする“マーチ・マッドネス”の魔力

[宮地陽子コラム第13回]サンズの双子プレイヤー、モリス兄弟の見分け方

[宮地陽子コラム第12回]“ビッグベイビー”がクリッパーズを選んだワケ

[宮地陽子コラム第11回]トレード期限の厳しい現実

[宮地陽子コラム第10回]王者と挑戦者の心意気

[宮地陽子コラム第9回]NBA選手たちの思わぬ強敵“時差”との戦い

[宮地陽子コラム第8回]井上雄彦氏が語るレイカーズに対する熱き想い

[宮地陽子コラム第7回]グラミー賞と渡邊雄太とピザ

[宮地陽子コラム第6回]ブライアン・ショーがフィル・ジャクソンから学んだこと

[宮地陽子コラム第5回]レイカーズを救う“お調子者”ニック・ヤング

[宮地陽子コラム第4回]コービー復帰戦で見えた“スーパースターたる理由”

[宮地陽子コラム第3回]消えたレイカーズの“パウンディング・ザ・ロック”

[宮地陽子コラム第2回]名将リバースHCの“巧みな話術”

[宮地陽子コラム第1回]NBA取材歴26年目、その年数に自分でもびっくり

著者