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[宮地陽子コラム第41回] ホークスの躍進を支えるドイツ産若手有望PG、デニス・シュローダー

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“スパーズ・イースト”(スパーズ東支部)と呼ばれるアトランタ・ホークス。元サンアントニオ・スパーズGMアシスタントのダニー・フェリー(現在は停職中)が選手を集め、長年、スパーズのグレッグ・ポポビッチHCのもとでアシスタントコーチを務めたマイク・ブデンホルザーが指揮を執るのだから、似たチームになるのももっともなのかもしれない。それにしても、ブデンホルザーがヘッドコーチになって2シーズン目という短期間で、そのイズムを浸透させることができているのは驚きだ。

たとえば、先日、ロサンゼルスでレイカーズと対戦したときのこと。6試合遠征の3試合目、翌日もサクラメントに移動して試合があるということを考え、ブデンホルザーHCは本来のスターターのうちジェフ・ティーグ、デマーレ・キャロル、ポール・ミルサップの3人を休養のためにラインナップから外した。これもポポビッチ方式だ。もっとも、同じ休ませ方をしたから似ているというわけではない。大事なのは、そのことによって生まれる効果だ。

主力選手を休ませるときに、ポポビッチやブデンホルザーが期待しているのは、単に負担の大きい主力選手の休養だけではない。いつもはプレータイムが限られている脇役選手たちが、この機会に主力として出場し、練習で見せていたことを試合でもできることを見せ、その経験によってさらに成長してほしいという目的がある。トップチームであり続けながら、その一方で若手を育ててきたスパーズ成功の大きな鍵だ。

果たして、レイカーズ戦では、NBA2年目のデニス・シュローダー、3年目のケント・ベイズモア、4年目のシェルビン・マックら若手が活躍して接戦を制した。特に先発ポイントガードを務めたシュローダーは、勝利を決めるドライブインからのレイアップを決めている。

試合後に、他の記者たちと共にシュローダーに話を聞いた。ドイツでプロを経験、2013年ドラフトでホークスに1巡目17位で指名され、19歳でNBA入りした若手有望選手だ。しかし、昨シーズンは本人が期待していたほど試合に出られず(49試合で平均13.1分)、途中でDリーグのチームに送り込まれたこともあり、フラストレーションを感じていたという。それでも、今となってはその経験が必要だったとわかると語る。

以下、レイカーズ戦の囲み取材から、デニス・シュローダーの一問一答。

──試合終盤に決めたレイアップについて話してもらえますか?

「あれはコーチが、僕を信頼して僕が得点するプレーを指示してくれた。自分にチャレンジする気持ちでゴールに向かって入っていったらノーマークになったから、レイアップを入れたんだ」

──最近、試合終盤の勝負所でボールを手にする展開になっていますが、そのことについてどう思いますか?

「コーチが僕のことを信頼してくれているということだと思う。コーチは毎日、僕に話しかけてくれる。僕が成長していることの証でもあると思う。信頼してもらえて嬉しい」

──ジェフ・ティーグの休養欠場でスターターになったわけですが、スターターの役割について、試合前にコーチ・ブデンホルザーからは何か言われましたか?

「試合が始まるときにコーチから、『これは君の試合だ。いつものような試合をすればいい。何も変えなくていい。チームメイトと共に戦い、自分が空いていれば打てばいい』と言われた。試合に勝ってよかった」

──プレータイムさえ得ればこういうことができると自分では思っていましたか?

「去年は、とにかく試合に出たい、プレーしたいと思っていた。でもコーチからは、システムを信じて、練習で自分のプレーを磨くようにと言われ、その通りにしていた。今年は出場時間をもらうようになって、自信を持ってコートに立つことができている」

──ヨーロッパから来て、NBAの若手スターの一人として認められるようになったことについてどう思いますか?

「昨シーズンは、Dリーグに行ったりして、僕にとってきついシーズンだった。でも、練習し続けた。去年はあまり使ってもらえず、僕もコーチに腹を立てていたのだけれど、今となってはそういったことすべてが報われた。なぜ、コーチがそういうやり方をしたのか、今はわかる。今年の僕の成長はコーチたちのおかげ、彼らが僕を叱咤激励してくれたからだ」

──Dリーグに行った経験から、どれぐらい学ぶことができたと思いますか?

「Dリーグに行ったのは、僕にとってはとてもいい経験だった。毎試合36分プレーして、毎回ボールを持つことができた。チームを率いるように心がけていた。その経験は僕にとってとてもよかったと思う」

──このような活躍をしていれば、相手からもマークされるようになると思いますが、そのことについてはどう思いますか?

「すばらしい気分だ。その前にやってきた努力がすべて報われている気がする。これからも練習し続け、毎日上達するように心がけているけれど、自分でも進歩しているのがわかるんだ」

──ヨーロッパでバスケットボールをするようになったのはいつですか?

「14か15歳ぐらいのときに始めた。プロとしてプレーするようになったのは17歳のときだった。若いときからプロとしてやっているんだ」

──前髪のメッシュがあなたのトレードマークのようになっていますが、いつから、どういう理由で始めたのですか?

「最初にやったのは16歳、17歳頃、プロとしてプレーするようになったときだ。母から、髪を全部ブロンドにしたらいいと言われたんだ。でも、それはできなかったから、こう(一部だけメッシュを入れるように)した。2週間に1回、ブリーチしているんだ」

──なぜ金髪?

「リーグで他の誰もやっていなかったから。それでやるようになった。自分でも気に入っている」

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

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