NBA

[コラム]ヤマノナナエさん、オクラホマシティ・サンダー観戦記の裏側(大西玲央)

Nanae Yamano

SNSに投稿していたサンダーのイラストに選手も反応

日本在住のサンダーファンであるヤマノナナエさんが、4月18日(日本時間19日)にオクラホマシティで開催されたユタ・ジャズ対オクラホマシティ・サンダーのファーストラウンド第2戦を現地で観戦し、国内外の多くのメディアに取り上げられた。

2012年にたまたまテレビでサンダーの試合を見て以来、ラッセル・ウェストブルックの大ファンとなったナナエさんは、ソーシャルメディアにサンダーの選手たちのイラストを投稿するようになった。昨シーズンからは毎試合終わったあとに、試合の内容を見事に捉えたイラストをインスタグラムにアップし続けている。

本人が言うように「スポーツ選手はスーパーヒーローのように描かれることが多い」のだが、ナナエさんの絵は人間味溢れるかわいらしいタッチで、その独特な視点が海外のファンにも大ヒット。サンダーの選手たちまでもが彼女のイラストを「いいね」したり、自身のソーシャルメディアに投稿するまでになっていた。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』のベン・コーエン記者が彼女をインタビューするために日本に訪れ、記事で紹介したことがきっかけとなり、今回の現地観戦が実現した。筆者も通訳として帯同することとなり、間近で彼女の体験を追うことができた。

 

「リーグパスで見ているだけでも大変なのに、生で見たら自分がどうなってしまうのかわからなかった」

試合の2週間ほど前に連絡を受け、日本を出たことすらなかったナナエさんは急いでパスポートを取得。しかしそれ以前に、「プレイオフ出場が決まっていなかったので心配でしょうがなかった」と彼女は連絡を受けたときの心境を話してくれた。

「リーグパスで見ているだけでも大変なのに、生で見たら自分がどうなってしまうのかわからなかったから、本当は現地で観戦したいと言う気持ちはあまりなかったんです」。

当初のフライトが悪天候によりキャンセルされたのに加え、代わりの便が遅れるなどのトラブルもあり、現地入りしたのは午前3時頃だった。それでも空港からまず向かったのはサンダーのホームアリーナであるチェサピーク・エナジー・アリーナ。サンダーの選手のグラフィックが至る所に飾られているアリーナを見ながらも、彼女は「まだあまり実感がわかない」と語った。

 

オクラホマシティの市長からも面会の依頼が

しかし翌日からその気持ちは少しずつ変わっていった。アメリカンな朝ごはんを済ませてから、まずはオクラホマシティ市庁舎を訪問した。なんとデイビッド・ホルト市長が自らツイッターを通して「ぜひ会いたい」と連絡をくれていたのだ。

その後はチームオフィスを訪れ、サンダースタッフとご対面。PRチーム、グラフィックチーム、放送チームそれぞれが大歓迎してくれることにナナエさんは驚きを隠せない様子だった。そしてチームからインタビューを受け、『Thunder Cares』のチャリティオークション用に一枚絵を描きあげたナナエさんは、オクラホマシティ市街へと向かった。

1995年の連邦政府ビル爆破テロ跡地にあるメモリアルや、有名な植物園を観光している途中、ナナエさんは見知らぬ人に声をかけられた。なんとナナエさんが来ていることをSNS上で知り、たまたま通りがかったところ本人であることに気づいたのだと言う。さらにその後、市長のツイートを見て興味を持った地元テレビ局からインタビューの依頼も舞い込んできた。

もともとサンダーファンの間で認知度が高かったのが、現地に来たことでオクラホマシティに彼女の存在が急速的に広まっていたのだ。

 

アリーナ入口の黒板にイラストを描き、NBAコミッショナーの席で観戦

夜はサンダーの選手たちがよく試合後に食事をしに来るという『マホガニー・プライム・ステーキハウス』で食べきれないほどの料理を楽しみ、ようやく1日目が終了。ずっとテレビで見ていたオクラホマシティに来てみた感想を聞いてみると「なんだか知っている街に来ている気分」と、まだどこか実感のなさそうな返答だった。

Nanae Yamano

翌朝は、ナナエさんを再び取材にきたコーエン記者と朝食で合流し、再びチェサピーク・エナジー・アリーナへと向かい、アリーナの入り口付近にある一面黒板になっている壁にナナエさんがチョークで絵を描くこととなった。「チョークで絵を描くのは初めて」と言いながらも、どんどん出来上がっていく絵を見ながらスタッフたちは満面の笑みで「すごい」を連呼していた。

まだファンが会場に入れない試合開始3時間前にはコートまで行き、誰よりも先にウォームアップをするラッセル・ウェストブルックを間近で見ることができた。ずっと追いかけてきた選手が目の前で動いているのを眺めながら、「本当にいるんだ。いつも見ているのと同じ動き、同じ声だ」と述べていた。

Nanae Yamano

試合開始直前には、会場の外で生放送の収録を行なっているプレゲームショーに出演。そこから急いでコート上に戻り、MCのマルコム・タブスとマスコットのランブルとともに合流し、試合開始のサイレンを鳴らし選手たちを出迎えた。『NBA TV』に出演しているデニス・スコット元選手と談笑しながら選手たちのウォームアップを見終えると、ようやくこの日の試合の席につくことができた。

あまりにも近い席に驚いていたが、帰国後その席がNBAコミッショナーのアダム・シルバーが普段座る席であることを知りさらに驚愕した。

試合中にも何度か会場の巨大モニターで紹介されたこともあり、ナナエさんはハーフタイム中に会場を歩いていると多くのサンダーファンに声をかけられていた。そのどれもが「オクラホマシティに来てくれてありがとう!」という内容のものだったのがとても印象的だった。

 

大好きな選手ロバーソンと面会、プレゼントも

試合後、大好きな選手のひとりであるアンドレ・ロバーソンと会う機会が設けられた。ロバーソンはナナエさんを発見すると満面の笑みで彼女と大きなハグを交わした。後から聞いた話によると、ロバーソンは試合前にもナナエさんに会いたくて探し回っていたのだ。

今シーズンの82試合分のイラストを印刷したポストカードブックをナナエさんがロバーソンに「選手たちへのプレゼントです」と渡すと、ロバーソンは「すごい!チームに渡さず自分用にとっておこうかな」と嬉しそうに話していた。

「自分がどうなってしまうのかわからない」ことから現地観戦をしてこなかったナナエさんだが、実際に来てみてどうだったか聞くと「全員が知り合いかのようだった」と答えた。

「SNSでフォローしている選手、スタッフ、カメラマンと実際会ってみると、もうお互い知り合いかのような感覚でした。OKCの会場は『うるさい』ことで有名ですが、実際に来てみてその『うるさい』一部になってみると、いつもと変わらない観戦スタイルだった自分に気づき、家で観戦しているときもいかに自分が『うるさい』のかがよくわかりました」。

今回の旅で、ソーシャルメディアがいかに世界を小さな、身近なものにしているかが実感できた。日本という世界の反対側に住んでいるファンが、現地のファンと同じ感覚を共有できているのだ。確かにナナエさんにはイラストというツールがあったが、根本的な原動力は「好きだから」というものであり、それは世界中のファンが共有しているものなのである。

文・写真:大西玲央 Twitter: @BullsFiJ


関連動画

サンダーファン ナナエさん インタビュー

サンダーファン ナナエさん ストーリー

サンダーファン ナナエさん ジャズ対サンダー第2戦で紹介される

[特集]NBAプレイオフ2018


今なら1か月間無料で見放題! スポーツ観るならDAZN!!

著者