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[コラム]NBAファイナル2017:三部作は新章へ――猛威を振るった“ビースト”(佐々木クリス/WOWOW NBA ONLINE)

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三部作(Trilogy)と囃し立てられている同一チームによるリマッチは、我々の意識が届く遥か前に新章に突入していたのかも知れない。ディフェンディング・チャンピオン、クリーブランド・キャバリアーズは昨年のゴールデンステイト・ウォリアーズとは比べ物にならない“ビースト”を迎え撃つことになった。

38-8-8-0、この数字の組み合わせでピンと来たファンの方も多いだろう。2012年以来となるファイナルの舞台に戻ってきた“KD”ことケビン・デュラント、彼の2017 NBAファイナル第1戦のスタッツだ。トリプルダブルに近い数字の並びだが38得点をあげながら最も際立っていたのは0ターンオーバーだろう。

1978年以降ではターンオーバーをひとつも犯さずにあげる得点ではマイケル・ジョーダンの37点を超え、シャキール・オニールの41点にわずか届かないだけだ。

ちなみにチーム全体でもターンオーバーは4本でKDがこの試合で決めた6本のダンクよりも少なかった。

カリーの3ptを恐れるあまりトランジションでKDが止められない。紅海が2つに分かれて道が開ける。リングへ向かうKDはそんな気分だったのではないだろうか。2016年の夏に古巣オクラホマシティ・サンダーを離れ、ゴールデンステイト・ウォリアーズに加入した事で多くの批判も浴びたかつてのMVPはとてもシンプルにバスケットボールをプレイしているように見えた。

試合後の会見で『僕はチームメイトの能力の分だけ力を発揮できる』と言っていた通り、チームでも31アシストを記録しながらの38得点と個人頼みでないことは明確だった。

さらにウォリアーズはこの試合で56本ものペイント内ショットを放ち28本を成功。ドレイモンド・グリーンが試合後に『相手のゲームプランは3pを抑えにきていた。(攻撃というものは)いつでも相手ディフェンスが見せてきたものに対して選択するものだ』とインサイドにアタックできたことのロジックを説明する。

その最前線にいたのがKDであり、ボールを触らずにレーンを作ったのがカリーとクレイ・トンプソンの重力だったことは言うまでもない。プレイオフ中、トンプソンのシュートが決まらないことが取り沙汰されるが、グリーンはそんな雑音を『奴は打ち続けるよ。俺らも彼が打つのをやめることを予期すらしていない』と試合後に一蹴。FG3/16に終わった世界屈指のシューターには絶大な信頼を置いていると強調した。

対するキャバリアーズはペイント内で15/38とアタックの成功率が伸びなかった。普段から10回ほどのドライブを仕掛けるレブロン・ジェームズが2倍近くドライブを仕掛けたにもかかわらずだ。 ここにもKDの存在感が光った。レギュラーシーズン中は相手のリング周りのシュートを48.7%に抑えてきた彼の“長さ”を活かした守備はプレイオフ中41.8%とさらに磨きがかかっている。

さすがのキング・レブロンもアジャストに時間がかかると言わざるをえない。それと同時にレブロンのアタックにシュートチャンスの創造を託すキャバリアーズのシューター陣も、より良いレブロンからのパスアングルを作る調整が必要になる。多少荒さのあるミスポジションでも打たせてくれた今までの相手とは違うkとはタロン・ルーHCも実感したのだろう『今まで見てきた中で史上最高のチーム』とあまりにもあっけらかんと認めてしまった。 

KD同様その攻撃は素晴らしいが、守備は集団としても凄まじかった。12本のスティールを記録したばかりか、相手のパスやドリブルを手に引っ掛けることで攻撃を停滞させたり、ショットクロックを減らして精神的なプレッシャーにもなり得る“ディフレクション”は16回を記録。キャブズがスティール0本、ディフレクション8回ということからも、どちらが相手の攻撃を掻き乱していたかは明らか。さらにルースボールへの反応を見ると、ウォリアーズが22回確保に対し、キャブズは6回。ウォリアーズ22回のうち6回はクレイ・トンプソンが1人で記録した数だとデータは示す。

ただし、キャバリアーズにもまだ希望はある。……>>>コラムの続きはWOWOW NBA ONLINEでチェック!!

文:佐々木クリス(WOWOW NBA ONLINE Twitter: @chrisnewtokyo, @WOWOWNBA

WOWOW NBA ONLINE 6月4日掲載 「Vol.283 3部作は新章へ 猛威を振るった“ビースト”」より

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