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[コラム]レブロン・ジェームズが振るった“エクスカリバー”(佐々木クリス)

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どの試合も10点以上の点差で勝敗が決まっていたものの、6戦を通じての両チームの総得点は全く同じ610点。ともに放ったシュートは495本ずつ。どちらが勝っても歴史的意義は十分。

NBA記録となるレギュラーシーズン73勝を有終の美で飾り2連覇を達成せんとするゴールデンステイト・ウォリアーズ。エースに史上初満票でシーズンMVPに輝いたステフィン・カリーを擁し、史上最高のシーズンを送ったチームとして石碑に名を刻むのか?

対するクリーブランド・キャバリアーズはシリーズ1勝3敗からファイナルを制する史上初のチームとなり得るか? そして何よりレブロン・ジェームズの故郷からほど近く、52年間プロスポーツの優勝から遠ざかる都市に光がさすのか?

レブロンがスポーツ界で最も美しい言葉2つと形容した“ゲーム・セブン”は期待に違わず、第4Q残り4:39の時点で89-89の同点(シリーズ累計699-699!)。

ここから世界中のバスケットボールファンが酸欠状態の無得点状態が続くことになる。次に両チームが得点するまで実に12本のシュートがリングを通過することなく終わるのである。 

今こうして記憶を呼び起こすだけでも全身がこわばり、プツプツと汗腺が開く。空気は湿った綿のように重く肺を圧迫する。 

カイリー・アービングも『次に得点したほうが勝つと思った』と振り返った通り、雌雄を決する決勝打を目に焼き付けようと瞬きも忘れ見守ったのは僕だけではない。 

しかし、目に焼き付けるべきは力強いダンクでも、美しい放物線を描く3ptでもなかった。

それはレブロン・ジェームズのキャリアをNBA史において微かな疑念も許さないものにする、もつれにもつれたファイナル第7戦目、自身47分の出場のうちの45分目のプレイ。

常人ならば心身ともに疲労困憊のなか、昨季のファイナルMVPアンドレ・イグダーラにお見舞いした目の覚めるような“チェイスダウン・ブロック”(後ろから追いかけてのブロック)だった。

少し時を戻し、キャバリアーズはアービングのシュートが外れ、ウォリアーズは即座に速攻に移ることができる好位置でイグダーラがディフェンス・リバウンドを確保する。攻撃に転じたウォリアーズは速攻を得意とするカリー、イグダーラの2人が先頭を走る理想的な形。キャバリアーズの守備はJ.R.・スミスが孤立無援状態。

バスケットボールのプレイ経験があるものなら誰もが“よし! 頂いた!”と感じる絶対的に優位な状態だ。

J.R.との距離を見定めたカリーは、3分半ほど前にターンオーバーを犯した野心的なパスとは違い、基本に忠実なバウンズパスをイグダーラに対して想いを託すかのように出した。

レイアップを沈めようとイグダーラが踏み切る。誰もが均衡が破られると思った……。

カリーはその瞬間を『最後の瞬間まで彼が見えなかった。イグダーラに最高のタイミングでボールを供給できるように全神経を使っていた。リング周りで非常に器用だしね。レブロンは素晴らしいボールへの反応を見せた、チェイスダウン・ブロック。素晴らしいプレイをした、それ以外言えることなんてないよ』と振り返る。

スポーツを科学的に分析するESPNの『スポーツサイエンス』という番組は過去にもレブロンのチェイスダウン・ブロックを分析している。それでもファイナル終焉後、改めて解析がなされた。是非ご覧いただいて、あの瞬間を再体験していただくことをお勧めしたい

ウォリアーズの速攻が始まってレブロンがスプリントした距離は……>>> コラムの続きはWOWOW NBA ONLINEでチェック!!

文:佐々木クリス( WOWOW NBA ONLINE Twitter: @chrisnewtokyo

WOWOW NBA ONLINE 7月1日掲載 「Vol.229 佐々木クリスが語る『チェイスダウン・ザ・チャンピオンシップ』」より


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