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[コラム]プレイオフ注目の2チーム、ホーネッツ&ブレイザーズ(佐々木クリス)

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What's good? みなさんこんにちは、佐々木クリスです。もうあっという間にNBAのシーズンの大部分が過ぎようとしており、プレイオフも間近になってきましたね。春ももうすぐそこ、来週にはゴールデンステイト・ウォリアーズを中心に現地取材に行ってくる予定です。

というわけで、今回はちょっと早めにプレイオフを騒がせてくれること間違いない、他のチームにとっては危険な2チームのストーリーをお届けしたいと思います!

その2チーム、みなさんにご紹介するにあたり幾つか共通項が見えてきました。

・オールスターに選ばれなかったエースがいる。
・エースを強力にバックアップする相棒がいる。
・3PTシュートがチームの攻撃の大きな主軸に据えられている。
・プレイオフに出ると予想した人は少なかった。

さて、東西からそれぞれ1チームなのですが、みなさんはどの球団か分かりましたか? 最初にあげた共通項“オールスターに選ばれなかったエースがいる”が一番のヒントだと思いますが、正解はシャーロット・ホーネッツ、そしてポートランド・トレイルブレイザーズ。

オールスター以降、あのウォリアーズとサンアントニオ・スパーズに次ぐ勝率(10勝3敗 ※3/17現在)で快進撃を続けるホーネッツは3/15現在イースタン6位。そして開幕前は先発選手の4人を放出したことからプレイオフ争いには加わらず再建期を迎えると目されたブレイザーズもウェスタン6位につけており、きっちりと堅実なプレイを続けてシーズンを終えられれば、共にプレーオフ進出は濃厚です。

名実共にチームを牽引するエース

そのチームを牽引する両エースはホーネッツ、ケンバ・ウォーカー。ブレイザーズ、デイミアン・リラード。リラードは2013年の新人王。新人の頃からの活躍と昨年の夏に自身のシグネチャーモデルシューズのプロモーションのため来日もしていることから、日本でもその名前はNBAファンの間で広く広まっていると思います。

一方のケンバは今季の活躍からオールスター選出の候補としてあげる現地記者は十分にいたものの、一般的なNBAファンにその名が知れ渡っているとは言い難いのも事実。かつてはNBAのポイントガード(PG)製造所のように機能していたニューヨーク出身のケンバ。そのニューヨーク仕込みの鋭いクロスオーバーが注目されていた彼ですが、先週の週間MVPにもウォリアーズ、ステフィン・カリーと並び選出されたばかり。徐々に活躍が認められてきています。

ちなみに2人のオールスター以降の1試合平均の数字はこのようになっています。

リラード
34.8分 30.4点 3.6リバウンド 5.5アシスト FG 46.6% 3PT 42.1% FT 93.5%

ケンバ
36.9分 25.3点 4.5リバウンド 6.5アシスト FG 49.1% 3PT 41.8% FT 81.8%

素晴らしいですよね。これがどれだけ凄いのか?

今年のMVP最有力候補ステフィン・カリーはもはや別世界の住人なので、2010-11シーズンMVP受賞当時のデリック・ローズと比べてみると……

ローズ(2010-11)
36.2分 25.3点 3.4リバウンド 6.7アシスト FG43.5% 3P29.9% FT88.5%

となっています。

見方によっては2人ともオールスター選出はもちろん、MVP級の活躍とも言えなくはないですね。

NBA.comによるとケンバはシャーロット・ホーネッツの選手としては1997年のグレン・ライス以来、19年ぶりとなる4試合連続の30点オーバーを記録。

リラードは1970-71シーズンのジョフ・ペトリー以来、球団としては初めての5試合連続で30得点以上を記録。1シーズンの30得点試合数では21回と1991-92シーズンのクライド・ドレクスラーと並んで球団記録を保持。単独首位になるのも時間の問題と言えそうです。

2人には強力なコンビを組むパートナーがいる!

ホーネッツ、ケンバの相棒は今季トレードでブレイザーズからホーネッツに移ってきたフランス代表、万能型フォワード、ニコラ・バトゥーム。

3PTの雨を降らせる“レインブラザーズ”との異名もチラホラ聞こえるバックコートコンビをリラードと組むのは、3年目ですっかりスコアラーとしての存在がNBAに定着したMIP(最も成長した選手に贈られる)賞最有力C.J.・マッカラム。

ではコンビで残している成績を比較してみましょう。

リラードとマッカラムのコンビはシーズンの平均得点の合計では

GSW/カリー&トンプソン52.4点
OKC/デュラント&ウエストブルック 52.0点

に続く3番目に高い45.7点。

シーズン前からは予想されなかったハイスコアリング・デュオを結成。両者が爆発したときの危険度は言わずもがな、たとえひとりを鎮火させても、また別のところで出火する、なんて状況が日常茶飯事なのです。実際、2人同時に先発出場するものの、リラードがベンチに下がるとマッカラムはベンチメンバーを率いるPGとしてチームを束ね、オフェンスを機能させています。シューティングガード(SG)のみならずコンボガードとしてその才能を開花させているのですね。

ただその前兆が全くなかったわけではなく、昨季のプレイオフでは怪我人続きのチーム状況下で出場時間が与えられると、メンフィス・グリズリーズとの最終3試合では平均25.7得点。リラードに言わせると『その前から彼がプレイできるのは分かっていた。チームの皆が知っていた。大学の頃から知っていたしね。ただ人間としてかなり成長した』。そんなところが躍進に繋がっているのでしょう。

しかもマッカラムは“プルアップ”と呼ばれるドリブルからのシュートを得意としており、その確率は1試合8本以上のプルアップを打つ選手中の確率ではエース、リラードを凌ぎ、リーグでもカリーとデュラントに次ぐ3位、eFG(※)は49.8%となっているのです。

このタイプのシュートでeFG%が50%を超えるのはカリーとデュラントしかいないことを考えても、効率よく決めるのがいかに難しいかを感じていただけると思います(カリーは60%超え……恐ろしや)。

※eFG%=3ポイントシュートは通常のFGに比べて1.5倍の点数がカウントされるので、3PのFG30%は実際には通常のFG%でいえば45%の価値があるという考え方。3Pの効果を加味したシュート成功率。

ちなみにホーネッツのコンビは合計の1試合平均は36.1点と、大部分がケンバによるところ。パンチ力としてはあと一歩足りないようにも思いますが、ケンバ&バトゥームの魅力は得点力のみならず、アシストにあります。シーズン平均で5.3本と5.6本とバトゥームは先発PGを上回る数字で、2人合わせてチームの1試合平均の半分を稼いでいます。さらにホーネッツは(後ほど3Pの話は詳しくしますが)、3Pが多いチームなのでアシストから生まれる得点は多く、このようになっています。

バトゥームのアシストからの得点/13.4pts
ウォーカーのアシストからの得点/13.7pts
合計 27.1pts

リラードのアシストからの得点/16.6pts
CJ・マッカラムのアシストからの得点/10.0pts
合計 26.6pts

このアシストからの得点にコンビの平均得点の合計も足してみましょう。すると、

ケンバ&バトゥーム
63.2pts チーム平均得点103.2点

リラード&マッカラム
72.3pts チーム平均得点104点

チームの得点の6割、7割のオフェンスをチームの2人が生み出していることになります。ブレイザーズの2人がコンビとしては1歩リードしていますが、それだけ負担も大きいとは言えるので、善し悪し以上にチームのスタイルの違いとも言えます。

2人の選手が同時に襲いかかる脅威、そして起点となれる効果。それはピック&ロール(P&R)の数字でも読み解くことができます。

この両チームのリーグ比でのP&Rの回数はホーネッツ6位、ブレイザーズ4位。その効率、1回のP&Rあたりの得点の期待値も全く同じ6位と4位になっています。

共にP&Rを多用する上、得意としている、その中心にそれぞれのコンビがしっかり組み込まれています。

ケンバはプレイ選択の46%以上がP&Rであるのに加え、バトゥームも20%超え。ブレイザーズのコンビに至っては、それぞれが今季500回以上、ボールを保持した状態でP&Rを行なっているのですが、ブレイザーズは500回以上行なう選手が2人存在する唯一のチームなのです。

多くのチームでP&Rがオフェンスの主軸となっている現代のバスケットボール。1回目のP&Rにはディフェンスも対処してきます。そのディフェンスをかいくぐり、逆方向に展開してもう一度P&Rを仕掛けて最終的に守備を崩す。P&Rを託せる選手がコートにひとりではこれは難しい。それだけボールを巧みに扱い、コート上を読み取れる人間が2人(またはそれ以上)いることは大きな武器になるのです。

さて、いよいよ3Pの脅威をお話ししなければなりません。両チームともかなりの3P数を1試合で放ってきますが、大事なのはその成功数。共に1試合あたり10.5本の3Pを成功させていてこれはリーグ3位タイ。

なぜこれだけ多くの3Pを成功させることができるのか?……>>>コラムの続きはWOWOW NBA ONLINEでチェック!!

文:佐々木クリス( WOWOW NBA ONLINE Twitter: @chrisnewtokyo

WOWOW NBA ONLINE 3月18日掲載 「Vol.204 佐々木クリスが語る『2016プレーオフをかき乱すのはこいつらだ!』」より

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ