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[コラム]ロケッツ ケビン・マクヘイルHC解任劇を考察(佐々木クリス)

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What's up! 近頃は肌寒くなり、冬がもうすぐそこまで来ていますね。しかし、NBAは熱くなるばかり、いまだ12試合ほどしか消化していないのにトピックス十分、毎回どんなことを書こうか思案している僕クリスですが、今回は越冬に失敗したヘッドコーチ(以下HC)とそれにまつわる情報をお届けしたいと思います。それでは、レッツゴー!

勝率59.8%はロケッツHC史上最高

今季初のHC解任劇、それは開幕から連敗街道まっしぐら76ersや、チームのエースとHCが激しい口論になったと言われるキングスではなく、ヒューストンの地で起こった。

開幕前にはタイ・ローソンの補強もあって優勝候補のひとつに挙げられるようなチームだったロケッツがまさかの開幕4勝7敗。しかもその内容が悪く、20点差での開幕3連敗。特にその3敗目のマイアミ・ヒート戦は得意の3ptが後半だけで1/16と全く入らず、試合は後半途中から得点26対67のワンサイドの猛攻を受けての敗戦。

その後の4連勝で『きたー! ロケッツ復活!』と喜んだファンも多かったと思うが、再び失速して4連敗。この時点で何らかの変化が必須と感じた首脳陣は、ケビン・マクヘイルHCを解任、チームの指揮はマクヘイルのアシスタントコーチであったJB・ビッカースタッフ暫定HCへと引き継がれた。

マクヘイルHCはロケッツで指揮を取るのは5シーズン目、通算成績では193勝130敗と勝率59.8%はロケッツHC史上最高だった。ここ3シーズン、チームはしっかりとプレイオフ進出、昨シーズンはロサンゼルス・クリッパーズを窮地からひっくり返して破り、カンファレンス・ファイナルに進出していた。

HCとしても昨年12月の時点で3年1200万ドルの契約を延長していただけにシーズン前には解任など想像もつかなかったことのように感じるし、首脳陣も苦渋の決断だったと思う。その辺りはダリル・モーリーGMの『難しい決断だった。簡単に決断を下したわけではない』とのコメントに表れているし、『ウェスタン・カンファレンスでは、物事が変わるのを待っている時間はない』との発言は、優勝候補と位置づけていた自チームの不甲斐なさと、重圧を同時に醸し出している。

そして、GMのさらなる発言、『判断を迫られていることは分かっていた。成績だけじゃない。どれだけの点差をつけられているか、チームがどう反応しているかといったことで判断した』や、オーナーのレスリー・アレキサンダーの『チームはオフェンスでもディフェンスでもコーチの指示に反応していなかった。ハードにプレイしておらず、その状態が続いていた』といったコメントにこそ、今回の解任を紐解くひとつの要素が隠されていると僕は考えている。

“プレイヤーズコーチ”の限界

それはマクヘイルHCが“プレイヤーズコーチ”であることを理解すると、もう少しはっきり見えてくる。

コアなファンならご存知かも知れないが、様々なコーチングスタイルが存在するNBAの中で、マクヘイルHCは間違っても戦術やタイムアウト明けの手腕で唸らせる“戦術型HC”とは言いにくいところがあり、彼はむしろ殿堂入りの名選手として、現役選手たちの気心が分かる、選手の立場で考えてあげられる“プレイヤーズコーチ”だった。

要するに彼の最大の魅力は“求心力”であって、選手たちに“やる気を出させる”ことなのだ。

僕も試合中に解説させていただいているが、ロケッツというチームはGMの統計学や確率論に裏付けられたオフェンスを行なっており、ジェームズ・ハーデンという3ptとフリースロー(FT)での得点力に加え、ドライブからのアリウープやシューターへのアシストに長けているエースがいて、ドワイト・ハワードのようなリング下の支配者が居れば、後は肉付けをすれば良いだけ。乱暴な言い方をすれば、それ以外の戦術はなくても戦える。

また、ディフェンスでは相手の3ptシュートとリング付近のシュートを抑えていく。この考えが昨シーズンの1チームによる3pt試投数最多記録と、守備において相手チームの3pt成功率をリーグ最小に抑えているところに表れている。攻撃のシステムはモーリーGM、守備のシステムはACであったJB・ビッカースタッフが構築、となると変化が求められるこの状況で変えられるものはHC以外になかった……。

マクヘイル解任と同日にアメリカESPNの記者が興味深い記事を投稿していた。それは2000-01シーズンに9人を数えたオールスター選出経験もある元NBA選手でHCをする人物が、2015-16シーズンには4人(マクヘイルを入れて5人)に減っているという内容だ。5年前は53.4歳だったHCの平均年齢が、今季は52.1歳と若干低年齢化しているというのだ。

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文:佐々木クリス( WOWOW NBA ONLINE Twitter: @chrisnewtokyo

WOWOW NBA ONLINE 11月13日掲載コラム「Vol.185 佐々木クリスが語る『今季初の解任劇を考察』」より

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ