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オリンピック出場を決めたセルビアを牽引するMVP、ニコラ・ヨキッチ(青木崇)

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日本も出場したベオグラードでのリオデジャネイロ・オリンピック最終予選は、地元セルビアが圧倒的な強さを見せてリオへの切符を手にした。すべてのプレイヤーがチームの中で持ち味を発揮し、完成度の高いプレイをしていたことは、4試合でのフィールドゴール成功率が54.6%、平均93.5点、28.5アシストという数字が証明している。

そんなチームの中で光っていたのは、2014年にフェニックス・サンズがドラフト1巡目27位で指名したボグダン・ボグダノビッチ、デンバー・ナゲッツでの昨シーズンにオールルーキー・ファーストチームに選出されたニコラ・ヨキッチの2人だ。

ボグダノビッチは持ち味のシュート力を武器に平均17.8点を奪っただけでなく、ドライブから何度もチームメイトを生かし、アシストでも平均6本を記録した。NBAでも十分やれる可能性を秘めていることをこの最終予選で明らかにしており、MVPに選ばれてもおかしくなかった。


トマス・サトランスキーのディフェンスをかわすボグダン・ボグダノビッチ(右) Photo by Getty Images Sport

そのボグダノビッチ以上のインパクトを残して大会MVPに選ばれたのは、21歳のビッグマン、ヨキッチだった。巧みなフットワークとフェイクを駆使してフィニッシュできるインサイドプレイや、ミドルレンジのジャンプシュートで、ボグダノビッチと並ぶ大会ベストの平均17.8点をマークした。プエルトリコとの決勝ではアシスト6本と視野の広さを見せつけ、速攻のきっかけを作るボールハンドリングと機動力も兼備したオールラウンドな能力があることを示した。また、リバウンドでも大会No.1の7.5本を記録するなど、そのプレイぶりはロサンゼルス・レイカーズ入りしたころのブラデ・ディバッツを思い起こさせた。

「代表でプレイできるのは光栄だ。役割が大きくても小さくても、チームの勝利に貢献したい。NBAでもセルビア代表でもルーキーはルーキーさ。NBAでは試合が多く、シーズンも長いから、順応するのが大変だったけど、ファーストユニット(スターター)でプレイしたことで、慣れるのも早かった」。

こう語るヨキッチがリオ五輪で質の高いプレイを継続できれば、ケネス・ファリードとのフロントラインは、成績向上を目指すナゲッツにとって大きな武器になりうる。来シーズンのNBAでは、注目すべき若手の一人と言っていいだろう。

日本も対戦したチェコ代表の司令塔、トマス・サトランスキーは、昨年のユーロバスケット同様、ドライブから得点機会をクリエイトする巧さを発揮し、大会最高の平均7.3アシストを記録した。ジャンプシュートに課題があるといえ、セルビアとの準決勝で3本中2本の3ポイントシュートを決めるなど、ドライブや201cmのサイズを生かしたポストアップ以外の得点パターンも身に付けつつある。

この2シーズンはスペインのFCバルセロナでプレイし、昨シーズンのユーロリーグで29試合中27試合に先発。元NBAで今回プエルトリコ代表として出場したカルロス・アローヨがバックアップを務めることで、PGとしてより多くのことを学んだ。2012年のドラフト2巡目32位で指名され、先日ウィザーズと契約を結んだサトランスキーについて、アローヨは次のように語っている。

「彼は常に“ベスト”と対戦したがっている。競争心がすごく旺盛で、負けることが大嫌い。でも、正しいやり方でプレイをしているし、高い能力があり、強い野心もある。練習では常に同じレベルの熱意を持って取り組んでいるから、(ウィザーズで)うまくいくことを願っているよ。彼には“You are ready.”(君は準備ができている)と伝えたよ。すばらしい機会であり、決して多くの人がNBAでプレイできるわけじゃないけれども、彼は幸運にもそのチャンスを得た。僕は彼をサポートするよ。僕からのアドバイスは、“自分自身で居続けること”と、NBAで生き残るために“ハングリーさを絶対に失わないこと”だ」。

サトランスキーはジョン・ウォールのバックアップとして、ジャズから移籍してきたトレイ・バークと出場時間を争うことになるだろう。


今大会を持って代表引退を表明したカルロス・アローヨ Photo by Getty Images Sport

6thマンとして最終予選に出場していたアローヨは、36歳になってもプエルトリコ代表の中で最も輝いていた。2004年のアテネ五輪で体感したことを、チームメイトにも経験させたいという一心でハードに戦い、平均13.3点、4.5アシストをマーク。ラトビアとの準決勝では、第4クォーター残り35秒に勝利を決定付ける3Pを決めた。

決勝でセルビアに敗れたものの、第4Q途中でベンチに下がると、エディ・カシアノ・ヘッドコーチを筆頭に、スタッフと選手全員がアローヨとハグ。得点源として奮闘したJ.J.・バレア(ダラス・マーベリックス)は、「彼がプエルトリコのバスケットボール界にもたらしたこと、世界にその存在を知らしめてくれたのは、僕にとってすごく特別なこと。これまでの人生の中で、彼はチームメイトとして、対戦相手として最高に競争心の強い選手の一人だった。プエルトリコのために彼がやってきてくれたことに対し、“心からありがとう”と伝えたよ」と、感謝の言葉を口にした。

NBAで9シーズンプレイしたアローヨは、セルビアとの決勝を最後にプエルトリコ代表からの引退を表明した。2004年のアテネ五輪の初戦で24点、7アシストをマークし、アメリカを倒す原動力になるなど、プエルトリコが誇る偉大なプレイヤーとして、語り継がれる存在となるのはまちがいない。

文:青木崇 Twitter: @gobluetree629

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