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ステフィン・カリー物語(中編): 信頼できる指導者と出会った大学でブレイク

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Stephen Curry Story

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高校2年の夏に新たなフォームを身につけ、カリーは高校時代を通じて目を引く実績を残した。最終学年時には身長は6フィート(約183cm)、体重は160パウンド(約73kg)に達した。しかし、それでもメジャーカレッジからの評価は高いとは言えないままだった。父親が殿堂入りを果たしているバージニア工科大学でのプレイを望んだが、オファーは奨学金のないウォークオンのみ。それ以外のビッグ・カンファレンス・チームからもめぼしいオファーは届かなかった。

「僕はターヒール(ノースカロライナ大)のお膝元で育ったから、デューク大、ノースカロライナ州立、ノースカロライナ、ウェイクフォレストといった強豪校でプレイしたかった。(オファーがなかったことを)モチベーションにしようと思った」。

結局はデイビッドソン大、バージニア・コモンウェルス大、ウィンスロップ大といった強豪とは言えないカレッジからしか勧誘されず、最終的には地元のデイビッドソン大を選んだ経緯をカリーはそう説明する。“デル・カリーの息子”として少なからず名前を知られていたことも考慮すれば、小さくない挫折だったに違いあるまい。ただ、不本意な形で進んだデイビッドソン大で、自身の力を高く評価してくれるボブ・マッキロップ・ヘッドコーチと出会ったことが1つの大きなターニングポイントになった。

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「サイズのなさ、身体の小ささがゆえにメジャーカンファレンスのチームは彼をリクルートしなかった。みんなはロウワーメジャー、ミッドメジャーでプレイするレベルのガードだと考えたんだ。しかし、私は彼は素晴らしいプレイヤーだと思った」。

マッキロップHCはそう語り、実際にカリーを信じた。カレッジでのデビュー戦となったイースタンミシガン大戦では前半だけで9ターンオーバーを記録するも、マッキロップHCは後半もカリーを起用し続けてチームは逆転勝利。すると続くミシガン大戦でカリーは32得点、4アシスト、9リバウンドをマークして勝利に貢献する。

ここでカレッジでもプレイできるという手応えをつかんだカリーは、1年生ながらシーズン平均21.5得点をあげ、NCAAの1年生における3ポイントショット成功数の新記録を樹立した。NCAAトーナメントでは1回戦でメリーランド大に負けたものの、この試合でもカリーは30得点と奮闘。カンファレンスの新人王を獲得するとともに、U-19世界選手権のアメリカ代表メンバーとして銀メダル獲得するなど、リクルートしなかったメジャーカレッジを後悔させるような活躍を続けていった。

「(マキロップHCは)僕はすぐにチームにインパクトをもたらせると自信を持ってくれた。“コーチを信頼すれば良いことが起こる”と信じさせてくれたんだ」。

信頼しあう指揮官の下でさらなる成長を続けたカリーにとって、2年生時は本格的なブレイクイヤーとなった。この年もカンファレンストップの平均25.5得点をあげ、デイビッドソン大のカンファレンスゲーム20連勝に大きく貢献。そして、NCAAトーナメントではセンセーショナルな働きで全米のファンを魅了することになった。

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2008年のNCAAトーナメント、ゴンザガ大戦で大活躍 Photoby Getty Images Sport

3月21日のゴンザガ大戦では10本中9本の3ポイントを決め、40得点をあげて勝利の立役者に。さらに2回戦のジョージタウン大戦では30得点、3回戦のウィスコンシン大戦でも33得点を叩き出して、チームはエリート8(ベスト8)に進出。カリーは、クライド・ラブレット、ジェリー・チェンバース、グレン・ロビンソン以来となる4戦連続30得点以上をあげた史上4人目の選手になった。

「あの経験を表現する言葉は依然として見つかりません。毎日、ただ首をかしげながら、“今起こっていることが信じられる?”といった感じだった。黙ったまま家に帰り、次は彼が何をやってくれるかを想像したものでした」。

母親がそう感嘆するほど、カリーとデイビッドソン大のシンデレラストーリーのインパクトは大きかった。それはまさしく“マーチマッドネスの魔法“だった。わずか10日の間にカリーは全米に名を知られる存在となり、セスの言葉を借りれば、「それまでは“デルの息子”だったのが、父のほうが“カリーの父親”になった」のだった。

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著者
杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。