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[コラム]ラスベガスの砂漠気候より熱かったNBAサマーリーグ(鴨志田聡)

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NBAへの登竜門となるNBAサマーリーグ。今年のサマーリーグは、これまでのオーランド、ラスベガスに加え、3か所目となるユタでも開催され、NBA人気が上がってきていることがを伺い知れます。その人気のほどは、ラスベガスの会場でも感じることができました。

NBAはファンをより楽しませるために、ドラフト1位、2位の選手をサマーリーグのこけら落とし試合として対戦カードを組むのですが、今年のこけら落としは、昨シーズンに続いて1位指名のカール=アンソニー・タウンズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)対2位指名ディアンジェロ・ラッセル(ロサンゼルス・レイカーズ)が実現しました。

昨年のサマーリーグでは、ドラフト1位のアンドリュー・ウィギンズ(ウルブズ)対2位のジャバリ・パーカー(ミルウォーキー・バックス)が行なわれ、サブコート的なトーマス&マックセンターの会場に予想を遥かに上回る観客が来て入場制限になったため、今回の試合は席数に余裕のあるコックスパビリオンにて行なわれましたが、それでも観客席は十分ではありませんでした。

ラスベガスまで車で約4時間と、気軽にアクセスできる場所に位置するロサンゼルスから、レイカーズファンが注目のルーキーを一目見ようと集結し、駐車場のほとんどがカリフォルニアナンバーの車。試合直前になっても紫や黄色のレイカーズシャツに身を包んだファンがなだれ込むように押し寄せ、会場スタッフが大慌てで急きょ3階席を開放していました。試合ではレイカーズのホームゲームかのような大歓声とブーイングが沸き起こり、ラスベガスの砂漠気候より熱い熱気が会場を包み込んでいました。

今後を担う若手選手に注目をするのはもちろんですが、個人的には1980~90年代のNBAを支えた選手たちが、コーチ陣としてベンチ入りしていたり、GMや球団社長などのチームスタッフとしてコート脇に立っているので、どうしてもそっちに目が行ってしまいます。

女性初となるサマーリーグHCしてチームを優勝に導いたサンアントニオ・スパーズのベッキー・ハモンHCのベンチ裏でコーチングに注目していましたが、落ち着いて選手に指示を出したり、レフェリーとジャッジについてやりとりしている姿はとても初采配とは思えない落ち着きぶりで、優勝するのも納得でした。

そのほかには、NBAファイナルで毎試合来場していたステファン・カリーの父デルや、ゴールデンステイト・ウォリアーズのスティーブ・カーHCをはじめ、ボストン・セルティックスのダニー・エインジGM、サクラメント・キングスのブラデ・ディバッツ(バスケットボール&フランチャイズ・バイスプレジデント)、ペジャ・ストヤコビッチなどの有名な元選手達はもちろんのこと、現役当時から存在感の薄かったカルビン・ブースや、ワシントン・ウィザーズでマイケル・ジョーダンとプレーしたコートニー・アレキサンダー、そしてレフェリーのジョーイ・クロフォードらの姿も。彼らを目の当たりにしたときには、より熱くなってしまう自分がいました。

そんな中でも印象に残っているのはセルティックスなどで活躍した元ダンク王ディー・ブラウンと、デンバー・ナゲッツなどで活躍したロバート・パックです。

ブラウンの横に立ってみると身長も大きくなく、現役当時のほうがより細かったのだろうと思うと、代理人の立場から見ても、日本人でもNBAの舞台でやれるのではないかという気持ちが沸いてきました。一方、現役を引退してもなおポロシャツがはち切れんばかりの鍛え上げられた身体をしているパックを見ると、NBAでやるには今の日本人選手にはない強靭なパワーをつけなければいけないと感じたりもしました。

代理人として「チーム関係者とのコネクション作り」は非常に大切なことです。NBAサマーリーグはGMやコーチ陣にも時間的な余裕があり、アシスタントコーチ、インターナショナルスカウトやアシスタントGMなどと話すことができる最高の場所でもあります。

前述のパックは、今シーズンからニューオリンズ・ペリカンズのアシスタントコーチに就任し、彼とは昨年のサマーリーグ以来1年ぶりの再開でした。現役時代の気の強いバスケットスタイルとは一転、非常に言葉使いが丁寧なジェントルマンです。サイズの小さな選手としてNBAでプレーしていたこともあり、日本にも友好的でいろいろな話をすることができました。

また、長年NBL三菱電機で選手及びコーチとして指揮を執っていたアントニオ・ラングとは、3月のレギュラーシーズン中からいろいろと情報交換をさせてもらっており、そのときはロッカールームでの立ち話でしたが、今回はじっくり話を聞くことができました。サマーリーグに選手をプレゼンする時期や、NBAの各チームへのアプローチのタイミング、誰にアプローチをするのが最善なのか、NBAのチームがどういうスケジュールでサマーリーグのロスターをピックアップしているか、などを事細かに教えてもらいました。

情報というものは、人と人の繋がりから自ら足を稼いで得られるものであることを改めて実感した次第です。

今年のサマーリーグには残念ながら日本人選手がコートに立つことはありませんでしたが、来年は日本人選手が再びプレーできるようにしっかりと準備を進めたいと思います。わずか1週間程度の滞在でしたが、これまで以上に収穫のあったラスベガスのNBAサマーリーグ。来年はユタとラスベガスのNBAサマーリーグの会場に足を運ぶつもりです。

文:鴨志田聡(NBA公認代理人/World Service Sports)
NBAテレビ解説者・スポーツライター・プロバスケのチーム運営などの経験を活かして、日本人初のNBA公認代理人資格を取得。富樫勇樹の代理人として、NBAサマーリーグ出場、およびテキサス・レジェンズとの契約締結をサポート。日本人NBAプレーヤーの輩出を目指す。Twitter: @wssports 

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