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NBA 2K16開発者独占インタビュー「NBA 2K16は世界一のスポーツゲーム。上級者はもちろん、初心者にこそプレイしてもらいたい」

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10月29日、いよいよNBAゲームの最高峰『NBA 2K16』が日本で発売される。ファン待望の発売日を控えて、シニアプロデューサーのエリック・ベニッシュ氏が東京の2Kオフィスを訪れるということで、NBA Japanは早速NBA 2Kシリーズの大ファンでもあるイラストレーターの西尾瑞穂氏とともにベニッシュ氏を直撃。開発秘話、最新作に関する様々な疑問、本作の魅力などについて、大いに語ってもらった。


――まずはエリックさん自身のことをお聞かせください。あなたはNBAは好きですか? いつから、どのような形でNBAと関わってきましたか?

私はロサンゼルス育ちなので、80年代にマジック・ジョンソンやカリーム・アブドゥル・ジャバーがショータイム・バスケットで大活躍していた当時からのNBAファンだよ。NBAとの関わりは、NBA 2Kシリーズの2作目から開発に携わっているので、もう13年以上になるね。それだけの長い年月を経て、近作のようなもの凄いクオリティーのゲームを作ることができて感無量だよ。

――現在・過去を問わず、あなたがNBA選手ベスト5を組むとしたら誰を選ぶ?

歴代のベスト5だって!? それは難題だね(笑)。じゃあ先発の5人を考えてみるよ。まずポイントガードはマジック・ジョンソン。シューティングガードはマイケル・ジョーダン。スモールフォワードはレブロン・ジェームズ。パワーフォワードはラリー・バード。ティム・ダンカンやシャキール・オニール、ロバート・パリッシュやビル・ラッセルもいるから、センターを1人選ぶのは難しいけれど、私のベストセンターはウィルト・チェンバレンだね。コービー・ブライアントもこの中に入っていないほどだから、歴代のベスト5を選ぶのは本当に難しいね(笑)。

――前作NBA 2K15と比較して、最も大きく変わった点はどこですか?

同じ部分は何ひとつないと言えるよ。ゲームシステムも劇的に改善されたし、MyCAREERモードでは、あのスパイク・リーが映像を手がけてくれた。オンライン要素も大きく進化しているし、過去の名チームも多数収録され、MyTeamでは自分のチームを細かにカスタムできる。それから、なんと言ってもビジュアル面でNBA 2K15よりもさらに大きな進化を遂げていて、まるで実写のようなクオリティーになっているんだ。今までのNBA 2Kシリーズをプレイしてきた人たちが今作をプレイしたら、まるで新しい別のゲームをやっているような気分になると思うよ。

――NBA 2K16の開発期間はどのくらい? リリースのいつごろまで開発・改良していた?

NBA 2Kシリーズは毎年リリースしているので、開発期間は1年に満たない。アメリカでは毎年9月に発売されるので、9か月から10か月ぐらいで完成させないといけない。制作はソフトがパッケージされる1週間前まで続いていたけれど、発売後も修正パッチを随時オンライン配布しないといけないし、ロスターアップデートも毎日のようにリリースしないといけないので、私たちの開発や改良には決して終わりがないと言えるよ。

――次世代ゲーム機(PlayStation4, Xbox One)になって大きく変わった点は?

大きな違いは、ゲーム機がパワーアップしたおかげで、ゲームプレイ中でもリアルタイムに選手の肌や質感を忠実に表現できるようになったことだね。それに、ゲームの容量が増えたことで、以前よりも多くのモードや要素を追加できるようになった。次世代ゲーム機によって、私たちが作りたい物や映像のクオリティーを、とことんゲームに詰め込むことができるようになったんだ。今までPlayStation3やXboxでプレイしていた人たちにも、ぜひ次世代ゲーム機でNBA 2K16をプレイしてもらいたいね。

――今作では、ヘッドコーチが試合中に戦術をアジャストするそうですね。私はNBA 2Kシリーズを長年プレイしていて、主にピック&ロールを使ってオフェンスを組み立てているのですが、今作ではそういったワンパターンなオフェンスは通用しないのでしょうか?

NBA 2K16の人工知能は凄く進化したから、進行状況を見ながらヘッドコーチが柔軟に戦術を変えることが可能になったんだ。だから、もし何度も同じプレイを繰り返していたら、ダブルチーム等を駆使して即座に対応されてしまうよ。

――ゲームの難易度はかなり高くなったということでしょうか?

上級者でもかなりの手応えを感じられるような非常に高い難易度から、気楽にプレイしたい人や、バスケットボールのルールやNBAについて全く知らない初心者の人でも楽しめるような低い難易度まで、自由に設定可能だよ。ゲーム内には、バスケットの戦術や操作方法のチュートリアルも付いているし、アリウープパス等の高度なプレイも簡単なボタン操作でできるようになっている。NBA 2K16は、シリーズをずっとプレイしてきた人や上級者はもとより、これからバスケットボールゲームを始めようと考えている初心者の皆さんにこそ、是非プレイしてもらいたいゲームに仕上がっているよ。

――NBA 2K16にはあらゆるデータや戦術が組み込まれていますが、実際のNBAチームがNBA 2K16をスカウティングに利用することは有り得ると思いますか?

もちろんだ。すでにいくつかのチームがNBA 2Kをスカウティングに利用しているよ。コーチがゲーム画面を選手に見せて、相手チームの注意すべきプレイを説明したり、マッチアップする選手の癖やプレイの傾向を教えたりしているんだ。いわば、フライトシミュレーター(飛行機の操縦を仮想体験できるゲーム)のNBA版だね。

――開発中、最も苦労したことは何?

なんと言っても『時間』だね。なんせ、たったの9~10か月で、システムや選手のモデリングやテクスチャーを改良し、新しい映像を作らなければならないのだからね。他の大作ゲームのように2~3年も開発期間があれば、そこまで時間に追われる必要はないけれど、私たちは1年という発売サイクルの中で最大限の成果をNBA 2Kに詰め込むようにがんばっているよ。

――NBA 2Kシリーズの能力値はどのようにして決めていますか?

バスケットボールIQや身体能力など、選手の能力を計るためのあらゆるデータから能力値を決めているよ。それらのデータは、実際に試合を観たりスタッツを調べたりするだけではなく、スカウティングするスタッフを全てのチームに派遣したり、チーム関係者から話を聞いたりして情報収集しているんだ。当然ファンからは「なんで今シーズンのコービーの能力値が84なんだ!」とか「あの選手の数値が高い! あの選手の数値が低い!」なんて苦情がくるけれど、能力値を決める作業はいつも楽しいよ(笑)。

――NBA選手から能力値について苦情が来ることはありますか?

いつもだよ(笑)。例えば、マイアミ・ヒートのハッサン・ホワイトサイドは昨シーズン開始時点ではあまり能力値が高くなくて、彼はそれに関してNBA 2Kのロニーに苦情のメールを送っていたんだ。それからしばらくして、ホワイトサイドはシカゴ・ブルズ戦で14得点、13リバウンド、12ブロックのトリプルダブルを達成し、その試合後のインタビューで彼は「俺はただNBA 2Kの能力値を上げてもらいたかっただけだ」って答えたんだよ! それも全米中継のインタビューでね(笑)。彼はその後も1シーズンずっと「NBA 2Kの能力値を上げるためにがんばっている」と書かれたウォームアップTシャツを着て試合に臨んでいたよ(笑)。NBA 2Kをプレイして育った選手たちが、自分たちの顔や髪型の出来栄えや能力値を気にしてくれるということは、NBA 2Kがバスケットボール文化の一部になったことの表れだと思うよ。

――NBAでプレイしたことがないルーキーの能力値を決めるのは難しくありませんか?

とても難しいね。全ての大学バスケを観るのはもちろんのこと、海外の選手はYouTubeでチェックしたりと、インターネットも駆使してあらゆる手段で情報を集めて能力値を決めているよ。ただ、シーズンに入れば当然「この選手は予想より能力値が高い」とか「この選手は予想より能力値が低い」といったことが明らかになってくるので、そういった時は随時更新するロスターアップデートで能力値を調整しているよ。

――再現度では映画並みの圧倒的な質を誇るNBA 2Kシリーズですが、映画の影響を受けた部分はありますか?

もちろん映画の影響は受けているよ。試合中の映像演出に関しても、ハリウッド映画出身の映像スタッフが、TNTのNBA中継のワイプ映像やCMの入れ方を細かく研究してゲームに反映しているんだ。それに、なんと言っても、今作のMyCAREERモードはスパイク・リーが脚本・監督をしてくれているしね。彼は、NBA選手の苦悩や挫折、友達や家族や彼を利用しようとする人々といった「物語(Story)」をNBA 2K16にもたらしてくれた。映画の要素をゲームに取り入れることが今作の主題だったけれど、それはとても上手くいったと思っているよ。

――MyCAREERモード(※)には多数のストーリー分岐がありますが、スパイク・リーによる映像はどれだけゲーム中に登場するのでしょうか?

スパイク・リーが脚本・監督した映像は、MyCAREERモードの主人公(プレイヤー)が直面するキャリアの大きな分岐点に登場するんだ。成功も挫折もあるし、泣けるシーンもあれば、手を叩いて大笑いするシーンもあるので、ぜひ実際にプレイして体験してほしい。特にエンディングはとても素晴らしいので必見だよ。
※NBA 2K16には、一部プラットフォームに依存する機能があります。PlayStation4版とXbox One版、PC版の「MyCAREERモード」は、脚本・監督を有名映画監督であるスパイク・リーが担当。 MyCAREERモードは無制限で遊べます(スパイク・リー監督のストーリー約10時間を含む)。

――あなたが最も影響を受けた映画は?

80年代後半に上映された「メジャーリーグ」かな。それまでのスポーツ映画は選手の成功や苦悩が主題だったけれど、「メジャーリーグ」は初めて選手たちのオフコートの様子が語られたスポーツ映画だったんだ。「ある選手の恋人が、ほかの選手とデートしてる!」とかね(笑)。スポーツゲームの世界においても、オフコートまで描かれることは今までなかった。けれど、今回のNBA 2K16では、スパイク・リーの力によってオフコートにまで舞台が広がった。プレイヤーは、選手間のいざこざや競争、仲間との助け合い、お金目当てで近寄ってくる人々……といった、コート内外で起こる様々な出来事をゲーム内で体験することができる。かつてない経験になると思うよ。

――MyCAREERモードはNBA挑戦中に感じる挫折や苦悩も知ることができる非常に興味深い機能だと思いますが、NBA 2K15のユーザーの反響はいかがでしたか? 

MyCAREERモードはNBA 2Kシリーズにおける最も好評なモードのうちの1つなんだ。それだけにユーザーの反響はとても大きいし、ユーザーから送られてくる要望もとても多い。私たちは、そういったユーザーからの要望を反映させて、ユーザーの期待を超えるようなMyCAREERモードを毎年作り続けている。特に今作は、スパイク・リーのおかげで、ユーザーの期待を大きく超えることになるだろうね。

――e-sports(ゲームの競技大会)の人気が日本でも徐々に上がりつつあります。大きな会場にゲーマーを集めてワールドカップを開催するゲームもありますが、NBA 2Kでもワールドカップを開催するような予定はありますか?

NBA 2Kでもe-sportsは当然視野に入れていて、今作のPro-Amモードは競技大会も意識した作りになっているけれど、実際にいつワールドカップのような形で競技大会が開催できるかは未定だよ。例えばラスベガスのような華やかな都市にゲーマーを集めて大会を開催できたら光栄だし、もしユーザーからの強い要望があれば、私たちは全力で実現させるよ。

――今シーズンの優勝チームはどこになると予想しますか?

優勝した昨シーズンから戦力ダウンしていないゴールデンステイト・ウォリアーズが最有力だけれど、私はクリーブランド・キャバリアーズが優勝すると予想するよ。なぜなら、レブロン・ジェームズはマイアミ・ヒートに移籍した初年度にファイナルで敗北したけれど、次のシーズンはその雪辱を果たしてチャンピオンになった。彼はキャバリアーズでも同じことをするような気がするんだ。ウォリアーズは若くて才能に溢れた選手も監督も揃えているけれど、もしカイリー・アービングが健康であれば、キャバリアーズは優勝できるはずだ。NBAファイナルはキャバリアーズとウォリアーズの再戦になるんじゃないかな。

――NBA 2K16の自動シミュレーションでシーズンを戦ったとき、優勝する可能性が高いのはどのチームになるでしょうか?

実際に1500回ぐらいシミュレーションしてみたけれど、アービングが健康な場合はほとんどキャバリアーズが優勝したよ。アービングが怪我をした場合はウォリアーズだったね。選手の怪我やトレードの関係で結果が変わることはあったけれど、ほとんどの場合でキャバリアーズかウォリアーズが優勝したよ。

――最後にこのゲームのファン、日本のNBAファンに一言お願いいたします。

まず最初に、今回初めて日本を訪れて、日本の文化や人々の素晴らしさにとても感銘を受け、日本のことがとても好きになりました。NBA 2Kシリーズのファンの皆さん、いつも変わらぬ支持をありがとうございます。NBA 2K16には私たちの情熱の全てを注ぎ込みました。間違いなく、今までのどのNBA 2Kよりも素晴らしい出来栄えです。ゲームのあらゆる要素が格段に改良されているので、オフラインでシングルゲームやMyCAREERモードを楽しむ人も、オンラインで友達とのプレイやMyTEAMを楽しむ人も、全てのユーザーに満足してもらえるはずです。そして、日本のNBAファンの皆さん、NBA 2K16は世界一のスポーツゲームです。たとえバスケの技術や戦術を知らなくても、このゲームを通して学ぶことができるし、そういった知識を抜きにしても、純粋に楽しめるゲームになっています。ぜひNBA 2K16をプレイしてみてください。


NBA 2K16日本語公式サイトで最新情報をチェック!! >>> http://nba2k.jp/

取材:西尾瑞穂 (Twitter: @jashin_mizuho )、及川卓磨、長峯太平(NBA Japan/PERFORM)

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ