ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーは、シーズンMVPに初めて輝いた2014-15シーズンの個人スタッツを上回り、2015-16シーズンには満場一致で2年連続のシーズンMVPに選出された。昨季レギュラーシーズンは、すべてがカリーのためにあったといっても過言ではない。健康体を維持し、シュートはあまりにも正確無比。カリーの負担を軽減させてくれる2人のオールスターにも恵まれ、ウォリアーズはNBAの年間最多勝利記録を20年ぶりに更新した。
だが今季、前年のスタッツを遥かに上回るのはカリーではない。ケビン・デュラントがウォリアーズに移籍したことで、確実にカリーの数字は昨季を下回るだろう。デュラントが去ったことで恩恵を受ける人物とは、オクラホマシティ・サンダーでデュラントの影に隠れていたラッセル・ウェストブルックにほかならない。
今季のポイントガードのパフォーマンスを予想する上で、これは重要なファクターになる。デュラントがチームを離れ、名実共にサンダーがウェストブルックのチームになったという事実こそ、『Sporting News』の今季PGランキングトップ15で、ウェストブルックがカリーを上回って堂々の1位に選出された理由の一つだ。
両者に大きな差はない。ただ、キャリアを通じて1試合平均19.1本のシュートを放つデュラントがウォリアーズに加わったことで、カリー(同20.2本)、クレイ・トンプソン(17.3本)、ドレイモンド・グリーン(10.1本)がプレイスタイルを再調整しなければいけないのは明らかだ。表面上は昨季平均9.6本のシュートを放ったハリソン・バーンズの代役だが、ある選手がコートにいる際、同選手を中心とするチームプレイが生まれた割合を示す「Usage Percentage」を見ると、デュラントを中心とするサンダーのチームプレイの割合は昨季30.6%だった。カリー中心のチームプレイは32.6%にも上ったが、この2人が同じチームでプレイする以上、今季の両者の割合は確実に減少する。
逆にデュラントを失ったサンダーの中心となるのは、ウェストブルック以外にいない。過去デュラントが欠場した49試合で、ウェストブルックは平均29.9得点、8.9アシスト、7.4リバウンドという圧倒的なスタッツを残している。
これだけの数字を残していても、プレイの効率性に関する批判がウェストブルックに付いて回った。デュラント抜きの試合でフィールドゴール成功率42.6%、3ポイントシュート成功率もキャリア平均に近い29.6%を記録したが、極めて効率的なプレイをするデュラントと一緒にコートに立ったときもボールを独占し、疑問が残るシュートセレクションも多く見られ、デュラントにボールを回さないことを批判され続けた。
だが、その“相棒”はチームを去った。今季からサンダーは、完全にウェストブルックのチームとなったのだ。
サンダーはウェストブルックを中心とするピック&ロールで対戦相手を攻略するだろう。デュラントとの最後のシーズンとなった昨季でさえ、ウェストブルックはボールハンドラーの中ではリーグ5位に入るポゼッション数を記録した。今季はエネス・カンターとスティーブン・アダムズが効果的なロールマンとして機能すると考えられるだけに、チームのプレイも改善されるはずだ。
ウェストブルックがカリーを上回るPGになれるかどうかは、再構築が求められるチームプレイが機能するかどうか次第だろう。新たな相棒となるコンボガードのビクター・オラディポは、ハンドリングでウェストブルックの負担を軽減することのできる存在だ。だが、ウェストブルックと共にチームを引っ張るためには、1年目から上昇を続ける3P成功率をさらに高めなくてはならない(昨季は34.8%)。
また、先発パワーフォワードでの起用が濃厚なカンターの安定したパフォーマンスも不可欠だ。デュラントが抜けた穴をカイル・シングラーとアンドレ・ロバーソンで埋めるのは大幅な戦力ダウンだが、ウェストブルックがキャリアを通じて初めて自分中心のチームを手にしたことが、昨季との一番の違いとなる。
ウェストブルックが平均トリプルダブルを達成可能なことは、昨季のパフォーマンスで証明された。デュラントが退団した今、プレイの効率性を上げる努力を続け、チームの若手を引っ張る立場に立ったウェストブルックが、リーグ最高のPGになることはもはや確実と言えるのではないだろうか。
原文:Russell Westbrook is going to steal Stephen Curry's title as NBA's best point guard by Sean Deveney/Sporting News