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渡嘉敷来夢、WNBA 1年目の経験を糧にさらなる飛躍を誓う

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Ramu Tokashiki

5月10日(日本時間11日)のチーム練習後、シアトル・ストームのヘッドコーチであるジェニー・ブーセックは、渡嘉敷来夢のジャンプシュートの練習に立ち会った。彼女は、フォロースルーの保持、スクリーンを介してエルボー(フリースローラインの両端とサークルが交わる地点の周辺)からのキャッチ・アンド・シュートに取り組んでいた。

昨シーズンのWNBAオール・ルーキーチームに選出された渡嘉敷は、最後のシュートをスウィッシュで沈めると、チームメイトのクリスタル・ラングホーンに向かい、笑顔で指を指した。

練習中、渡嘉敷の隣には、通訳のモリタ・ケイの姿があった。まだ英語が堪能ではない渡嘉敷には、練習と試合中は通訳が必要だ。しかし、渡嘉敷がストームファミリーの一員としてチームに馴染んでいく上では、大した問題ではない。

渡嘉敷について、ブーセックHCは、「彼女は、このチームにとても馴染んでいる。チームとコーチングスタッフは彼女にとても大きなリスペクトを抱いているわ」と、語る。

2015シーズン開幕前にストームと契約を結んだとき、渡嘉敷はWNBA史上3人目の日本人選手となった。日本国内リーグでは圧倒的な数字を残した渡嘉敷だったが、これまで日本からWNBAにやってきた選手は皆、アメリカでのプレイへの適応に苦しんだ。だが、渡嘉敷は違った。身長193センチの渡嘉敷は、先発フォワードの座を掴んだ活躍が認められ、ストームと複数年契約を結んだ。
渡嘉敷にとってWNBA 2年目のシーズンは、敵地で行なわれる5月15日(日本時間16日)のロサンゼルス・スパークス戦で開幕を迎える。渡嘉敷は、エメラルドシティ(シアトルの愛称)でプレイする機会を再び得られたことに、幸福を感じていると話す。

「最高の環境です。ここには多くの日本人がいて、ファンもとても素晴らしい。熱い声援を送ってくれるんです。私はそれが大好き。とてもワクワクしているし、今シーズンが楽しみです」。

日本の文化が浸透していることは大きな理由の1つだろうが、渡嘉敷はシアトルに居心地の良さを感じている。昨年シアトルに滞在した際には、地元の博物館を訪れ、MLBシアトル・マリナーズの試合を観戦した。現地に住んでいるファンならば、朝、スターバックスでお気に入りのコーヒーを楽しむ姿を目にすることだってあるかもしれない、と、本人は言う。

WNBAでの1年目、渡嘉敷は、新たな環境にすんなり適応したわけではなかった。デビュー戦からの7試合は約17分の出場で平均4得点という成績で、フィールドゴール成功率は僅か27.6%にとどまった。ミネソタ・リンクスに敗れた試合では、FG10本中1本の成功に終わったが、次の試合から先発に抜擢されると、それからの3試合で15.7得点をあげ、期待に応えた。

渡嘉敷は昨シーズン16試合で先発出場し、8.2得点、3.3リバウンド、0.9ブロックを記録。出場時間の多かった選手の中では、プラスマイナス(対象選手が出場している間の得失点差を示す値)でチーム最多となる+6.3をあげた。

WNBAのシーズンオフ中は、WJBL(バスケットボール女子日本リーグ機構)のJX-ENEOSでプレイし、他を圧倒するパフォーマンスを見せたものの、ストームのプレイオフ進出に貢献するため、技術に磨きをかけてきた。

「スピード向上と、1対1の強化に一生懸命取り組んでいます。チームで(フィジカルが)1番強いわけではないけれど、オフにはハードにトレーニングしてきました。ブーセックHCも、フィジカルの部分で私を評価してくれていると思うんです。今よりもっと上手くなって、チームに貢献したいです」。

WJBLのレベルはWNBAほど厳しいとは言えない。だが渡嘉敷は、日本でシーズンMVPを3度受賞し、優勝6回という輝かしい成績を収めている。2年連続でWJBL得点王に輝くと、昨季はリーグベストとなる1試合平均2.1ブロックをマークした。また、渡嘉敷を中心に据えた日本代表は、昨夏アジア選手権で優勝し、今夏ブラジルのリオデジャネイロで開催されるオリンピック出場権を獲得。渡嘉敷は、同大会MVPにも選出された。

これだけの成績を残したとはいえ、ブーセックHCは、渡嘉敷が今季どれほど活躍できるかは、未知数と言う。ストームは、2016年のドラフト全体1位でブレアナ・スチュワートを指名した。スチュワートは渡嘉敷と同タイプのフォワードで、プレシーズンゲーム開幕戦では先発に起用されている。ラングホーンとアビー・ビショップも、同ポジションで多くの出場時間を得るだろう。

現時点で役割は明確になっていないが、ストームは、2016年以降チームが成功を収める上で、渡嘉敷が欠かせない重要なピースになると見ている。

ブーセックHCは、渡嘉敷の姿勢を称賛し、次のように語った。

「彼女は、とても重要なスターになれる存在よ。海を渡ってここに来て、役割を果たしているわ。なんでも吸収することができる選手だもの」。

「まだいくつか身についていない技術もあるけれど、彼女の姿勢はまさにチームが必要としているもの。彼女がこれまで歩んでき輝かしいキャリアを考えると、これはとても素晴らしいことね」。

原文:Ramu Tokashiki Ready to Build on Impressive Rookie Season with Seattle Storm by Justin Lester/StormBasketball.com


[特集]渡嘉敷来夢 WNBA 2016シーズン


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ