[イラストコラム]NBAオールスターを通じて感じられたドノバン・ミッチェルの感謝の心(西尾瑞穂)

Donovan Mitchell Jazz

昨年のNBAドラフト全体13位で指名されたドノバン・ミッチェルは、昨夏のサマーリーグで皆の予想を上回る活躍を見せた。その勢いは2017-18シーズンに入っても止まるところを知らず、今やベン・シモンズ(フィラデルフィア・76ers)と並んで今シーズンの新人王候補の筆頭に挙げられるほどの大ブレイクを見せている。

チームもオールスター休暇前に怒涛の11連勝を記録するなど好調を維持しており、その中心選手であるミッチェルがオールスターウィークエンドに開催される『MTN DEW Kickstartライジングスターズ』に招待されるのは当然のことだった。また、彼はその翌日の『Taco Bellスキルズチャレンジ』にも出場することが決まっていた。しかし、オールスターウィークエンド直前になって負傷欠場することが決まったアーロン・ゴードン(オーランド・マジック)に代わり、ミッチェルが『Verizonスラムダンク』に出場することになった(※スキルズチャレンジへの出場は辞退)。

この決定を聞いて、我々ジャズファンの脳裏によぎったのは、「ダンクコンテストには出場しないほうがイイんじゃないか?」という思いだ。

近年で最低の盛り上がりと言われた昨年のダンクコンテストを思い出せば、その理由は明白だ。筆者も現場で取材をしていて、ドローンを使ったダンクを何度も失敗するゴードンの姿を見て、いたたまれない気持ちになったのを今でも覚えている。

プロ入りからここまで上り調子できたミッチェルが全世界の注目を集めるイベントで大失敗をするのは、彼自身にとってもチームにとっても大きな痛手だ。しかしミッチェルは、「小さい頃からテレビで見て憧れていた」というダンクコンテストへの出場を決断した。

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急きょ出場が決まったため約2週間しか準備期間がなかったが、ミッチェルはダンク専門の外部コーチであるチャック・ミラン氏に相談し、準備を始めた。だが、プレイオフ進出を狙うチームが連勝を続けていたため、ダンクコンテストの練習をしている時間はほとんどなかったはずだ。筆者がオールスター・ウィークエンド直前の現地2月14日のジャズ対フェニックス・サンズ戦を取材した際も、ミッチェルは試合前のウォームアップ中のダンクをたびたび失敗していた。その試合で、彼は試合を決定づけるクラッチ・スリーを決めるなど大活躍を見せたが、ダンクコンテストに向けては不安が募るばかりだった。

しかし蓋を開けてみれば、今年のダンクコンテストは近年屈指の素晴らしいイベントとなった。何より、ミッチェルは予選と決勝の4本全てのダンクを成功させ、見事に今年のダンクチャンピオンに輝いた。彼は、ジャズのシティ・エディションのジャージーを着てユタへの感謝を表し、妹にダンクのサポートをしてもらうことで家族への感謝を表し、ルイビル大学の大先輩であると同時にジャズの大先輩でもあるダレル・グリフィスやダンク・レジェンドのビンス・カーターのジャージーを着ることで憧れの選手への敬意を表した。

Donovan Mitchell Jazz
Illustrated by Mizuho Nishio

昨年11月のインタビュー記事を読んでいただいても分かる通り、彼はファンやチームメイトをはじめとする周りの人々全てに感謝し、チームのことを最優先にプレイする選手だ。今回のダンクコンテストも、今まで支えてくれた全ての人々に捧げるという気持ちがあったからこそ優勝することができたのかもしれない。

イベント後のプレスカンファレンスでも、ミッチェルは「学生時代からトップアスリートとしてプレイしてきた僕のために、妹は今まで多くのことを我慢してきただろうし、彼女にはたくさんの面倒をかけてきた。僕が試合後のファンサービスをしている間、彼女は車で待ち続けてくれた。彼女には感謝してもしきれない。だから、2本目のダンクで彼女にコートに上がってもらいたかったんだ」と言って言葉を詰まらせた。

ラリー・ナンスJr.(クリーブランド・キャバリアーズ)も父親ナンスSr.へのトリビュート・ダンクやバックボードに2度バウンドさせて決めるダブルタップダンクを成功させたし、デニス・スミスJr.も今回のダンクコンテストで最高と言われる強烈な1本を決めた。ミッチェルがコンテストを制したのは、ほんのわずかな感謝の気持ちの差だったのかもしれない。

せわしないオールスターウィークエンドを過ごしたミッチェルは、再びチームに戻ってプレイオフ進出へ向けて最後の追い込みをかける。ルーキーながら1試合平均19.6得点を記録してきたミッチェルには『新人王争い』の話題が付きまとうだろうが、彼の目標はあくまでチームのプレイオフ進出だ。チームを第一に考える男が、プロ入り1年目でジャズをどこまで連れて行けるのか、しっかりと見届けたい。

文:西尾瑞穂 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho

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