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[コラム]NBAオールスター2017で実施した新たな試み(西尾瑞穂)

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今回のNBAオールスター取材の間、NBA Japan取材班はツイッターの『Periscope』とフェイスブックの『Facebook Live』というライブストリーミング配信を行なったが、お楽しみいただけただろうか?

メディア・アベイラビリティー(記者会見場)の様子や、公開練習の前に選手がリラックスして談笑している様子や、試合前の練習風景、会場の通路を移動中にファンと触れ合う選手の様子など、実際にNBAオールスターの開催地に来てもなかなか見ることのできない光景を配信したので、リアルタイムでご覧いただけなかった皆さんも、NBA Japanのツイッターとフェイスブックのタイムラインで是非チェックしていただきたい。

この配信では、主に現地取材班ならではの場所や視点からの映像を配信したが、ソーシャルメディアのライブストリーミングにはほかにも様々な可能性がある。

まず第一に、取材メディアや関係者だけでなく、会場にいる全ての人がソーシャルメディアの発信局となれることで、世界中のファンがまるで現地にいるかのような目線でNBAオールスターを楽しむことができる。

もちろん一般の観客は試合の映像を撮影してストリーミング配信することはできないが、客席から見た試合前の会場の雰囲気や、オールスターウィークエンドに催されるRoad Show(以前のNBA Jam SessionやNBA Houseのようなイベント会場)やスポーツメーカーのポップアップストアなどのイベントをライブ配信することができる。それこそ、既存のメディアではあまり見ることができなかった映像と言えるだろう。

また、ライジングスターズ・チャレンジやサタデーナイト、オールスターの試合中に関しては、NBAやオフィシャルのテレビ放送局が、コートや客席の各所にストリーミング配信できるカメラを配置することにより、ファンは自分好みの位置で自分なりのNBAオールスターを楽しむことができるだろう。

例えば、オールスターゲームの間、ずっとバックボードの上からリングを見下ろす視点で試合を観る……といったマニアックな楽しみ方もできるはずだ。

しかし、この配信を通して新たなコンテンツの可能性と手応えを感じた一方で、日本とアメリカとでは時差があるためリアルタイム視聴が難しいことや、インターネット接続が不安定だったことによる映像の乱れや遅延・切断・画質の低下といった課題が見つかったことも事実だ。

インターネット接続の件は容易に改善可能だとしても、時差の問題にどのように対処して、いかに「リアルタイムのコンテンツ」として成立させるかについては、今後大いに試行錯誤する余地がありそうだ。

インターネットで試合チケットや航空券やホテルの予約ができるようになり、日本人にとってレギュラーシーズンにおけるNBAの現地観戦は以前よりも身近になった。しかし、ことNBAオールスターの現地観戦に関しては、チケットの確保が困難なことや高額なホテル料金がネックとなり、依然として敷居が高いのが現状だ。おそらく、それは日本だけでなくアメリカとカナダを含む世界中のNBAファンにも当てはまるだろう。

NBAもそういった現状を配慮して、ダンクコンテストやオールスターゲームのMVPの選出にソーシャルメディアを使ったリアルタイム投票を採用するなど、できるだけ多くのファンと繋がる工夫をしていると見受けられる。

Anthony Davis Mizuho Nishio

インターネットやハイテク技術の発達により、あらゆるエンタテーインメントにおいて“ファンと繋がる”という新しい要素が生まれ、その重要性が高まっている。そういった意味でNBAも、テレビやインターネット放送で試合映像を楽しみ、新聞や雑誌やインターネットの記事でリポートや写真を楽しみ、ソーシャルメディアを通してNBAを身近に感じ、イベントに参加する、といったファンの多様なニーズに対応した「複合型エンターテインメント」として今後もさらなる進化を続けるだろう。

今回NBA Japan取材班はソーシャルメディアのライブストリーミング配信に挑戦し、NBAはサタデーナイトとオールスターのVR(バーチャルリアリティ)配信を実施し、ダンクコンテストではアーロン・ゴードンがドローンを飛ばした(残念ながらダンクは失敗したが……)。

NBAオールスターには、まだまだいろいろな楽しみ方の可能性が秘められていそうだ。

文:西尾瑞穂 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho

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