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『NBA 2K18』プロデューサーが語る最新作の魅力 - 後編「Nintendo Switchを持ち寄り、面と向かってNBA 2K18をプレイできる」(西尾瑞穂)

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――操作方法に関して、NBA 2K18では新たなモーションシステムとショットメーターが導入されました。それらの要素によって、あらゆるムーブやショットをユーザー自身の手で操作できるようになり、NBA 2K18では今まで以上にユーザーの技量が問われるようになったと思います。NBA 2Kのe-sportsトーナメントでも熱い戦いが繰り広げられそうですね。

それは間違いないね。NBA 2K18ではe-sportsをより強く意識し、全ての動きがユーザーの操作に委ねられるようにした。前作まではユーザーが1つの動きを入力したら一連のアニメーション(シグネチャームーブやシュートなど)が自動で発生したけれど、今作ではユーザーは一つひとつの動きを全て自分の手で作り出すことができる。これにより、ユーザーはゲーム内のキャラクターの動き全てに責任を持つことになったんだ。

一方で、操作方法は今まで以上にシンプルになっている。これは前作のときにユーザーから要望が強かった点だ。操作方法をよりシンプルにすることで、ヘビーユーザーからライトユーザーまで全てのユーザーが同じようにゲームを楽しめるはずだ。e-sportsゲーマーだけでなく全てのユーザー、そして全てのバスケットボールファンにNBA 2Kシリーズを楽しんでもらうことが私たちの目標なんだ。

――今作の「ALL TIME TEAM」には、各チームごとに過去から現在に至るまでのベストメンバーが15人ずつ登録されています。登録する選手の選考に関して、NBA 2K18の制作チームの間でもかなり議論が交わされたのではないですか?

その通り。選手選びには多くの議論が交わされたよ。NBAは各チームごとに違う歴史があって、「このチームは伝統的に良いガードの選手が多い」といった個別の傾向がある。各ポジションはだいたい1チーム3人ずつになるから、歴史が長くて良い選手が多いチームほど議論はヒートアップしたよ。いくつかのチームは、「この選手とこの選手とこの選手で……うん、いいんじゃない?」って感じだったけどね(笑)。とにかく、ALL TIME TEAMの選手を選ぶのはとても楽しい作業だったよ。

――どのALL TIME TEAMの選手選びが最も難航しましたか?

いくつかのチームが挙げられるけれど、代表的なのはシカゴ・ブルズだね。「ブルズはマイケル・ジョーダンとスコッティ・ピッペンがいるから簡単だ」と思うかもしれないけれど、「では、他のポジションはどうする?」となると途端に難しくなってくるんだ。ポイントガードだけをとっても、それは明らかだ。すぐに思い付くだけでもブルズにはデリック・ローズ、ジョン・パクソン、スティーブ・カー、BJ・アームストロングと、すでに4人のPGがいる。この中から3人だけ選ぶのはとても難しいことだったよ。制作チームにいるブルズファンのスタッフたちはかなり熱のこもった意見をぶつけてきたね(笑)。

――NBA 2K18ではNBA 2Kシリーズで初めてNintendo Switch版もリリースされます。Nintendo Switch版に特有の機能はありますか?

多くのスポーツゲームは携帯ゲーム機向けにグラフィックや機能をグレードダウンしたバージョンを発売しているが、私たちはNBA 2K18のNintendo Switch版で絶対にそういったことをやりたくなかった。だから、私たちはたくさんの時間と労力を費やし、PlayStation 4版と全く変わらないクオリティーのNintendo Switch版を作り上げたんだ。Nintendo Switch版もPS4版と同等のグラフィックを実現しているし、もちろんネイバーフッドをはじめとした全ての機能を楽しめるよ。

また、Nintendo Switch版に特有の機能としては「LOCAL PLAY」がある。例えば、屋外や旅先でユーザー同士がお互いのNintendo Switchを持ち寄り、実際に面と向かってNBA 2K18をプレイできる。これは据え置き型のゲーム機ではできないNintendo Switch版ならではの機能だよ。

――前作NBA 2K17のグラフィックも素晴らしかったのですが、NBA 2K18ではさらにグラフィックが強化されました。また、MyPlayerの見た目も詳細にカスタムできて、よりリアルなグラフィックを作ることが可能になりました。NBA 2K18のグラフィックがNBA 2K17からどれだけ進化したか教えてください。

当時は私もNBA 2K17のグラフィックは最高だと思っていたよ(笑)。でも、NBA 2K17とNBA 2K18のグラフィックを並べて比較したら「NBA 2K17のグラフィックはなんて酷いんだ!」と誰もが思うはずだ。それぐらいNBA 2K18のグラフィックはリアルで美しいんだ。

グラフィックが向上した理由は3つあって、まずは高画質のフェイススキャン技術が向上したこと、2つ目は質感の処理技術を改善して汗や環境光の反射具合などをよりリアルに表現できるようになったこと、そして3つ目は最新のレーザースキャン技術でナイキ製の新しいユニフォームを詳細にスキャンしたことだ。私たちは「これはあくまでゲームだから」という妥協は一切しない。また、スター選手ばかりではなく、有名ではない選手も含めた全てのNBA選手を徹底してリアルに再現することを常に心がけているんだ。

NBA 2K18 Gordon Hayward

――NBA 2K18の大きな特徴の1つに、ケビン・ガーネットとコービー・ブライアントの2人によるオーディオコメンタリー機能があります。2人のオーディオ収録現場の様子はどうでしたか? 収録現場の秘話はありますか?

彼らはリラックスして準備万端の状態で収録現場に現れたよ。そして、NBAに関するとても深い話をたくさん披露してくれた。それはプレイの技術的な内容ではなく、もっとNBA選手の内面に迫った内容だ。「俺はこの選手と対戦したことがあるよ。彼は試合中にいつもこんなことをするんだ。」といった具合にね。他のオーディオコメンタリーはプレイの内容を話すことがほとんどだから、ガーネットとコービーのコメンタリーはとても新鮮だった。2人共つい最近まで現役でプレイしていたから話のネタ自体も新鮮だしね。そして何より、NBAで20年近くプレイして優勝も経験した彼らの話はとても興味深いものだった。きっとユーザーの皆さんにとっても、今まで聞いたことがないようなオーディオコメンタリーになっているはずだよ。

――現役時代のガーネットとコービーは2人とも情熱的でトラッシュトーカーでした。彼らはオーディオコメンタリーでもトラッシュトークを繰り広げましたか?

特に現役時代のガーネットは凄いトラッシュトーカーだったね(笑)。ガーネットもコービーも闘争心が強く、とにかく負けず嫌いだったから現役時代はトラッシュトークをしていたけれど、引退した今は現役選手達に敬意を払ったコメントをしていたよ。

――選手のレーティングに関して、NBAのチームはデータ分析とスカウティングに『SYNERGY』というツールを使っています。そのツールを使えば世界中のバスケットボールチームのデータが入手でき、NBA 2K18の選手データに出てくるような「ホットスポット」を表示したり、MyGMモードの「Analystic Tool」と同じようなスタッツ画面を表示することができます。NBA 2Kの制作チームもSYNERGYを導入していますか? それとも選手のデータを分析するのに独自のツールを使っているのでしょうか?

SYNERGYのことはもちろん知っている。NBAのオフィシャル分析ツールだしね。たしかにSYNERGYは非常に優れたツールだけれど、検討した結果「私たちにはもっと柔軟なデータ分析が必要だ」という理由で導入しなかった。そもそもSYNERGYはバスケットボールチームのスカウティングや選手育成のためのデータ分析ツールだしね。

その代わりに、私たちは『STATS Inc.」という会社と契約していて、彼らが私たちにあらゆるデータを提供してくれている。例えば「選手がどういうシュートを打つ傾向があるか調べているので、リングから150cm離れたコーナーからのシュートのデータが欲しい」と頼むと、すぐにデータを送ってくれるんだ。彼らと契約していることで、我々はSYNERGYでは得られないデータも得ることができているよ。

――あるNBAコーチにインタビューした際、「昨今のNBAではデータ分析が非常に重要だ。しかし、データはあくまで数字しか示さない。数字はバスケットボールの1つの要素でしかない。だからNBAコーチは独自の視点を持って選手を評価しないといけない」と言っていました。たしかに、平均ブロックショット数が多い選手だけでなく、数字には残らなくてもきっちりクローズアウトして相手のシュートを落とさせる選手も高く評価すべきです。NBA 2Kでは、何か独自の選手評価基準はあるのでしょうか?

私たちは選手の性質を約70項目に細分化して、それぞれの項目に関する選手の能力を評価して総合評価(レーティング)を決めている。その評価方法はポジションによっても変わってくるし、プレイスタイルによっても変わってくるけれど、19年という長い歴史の中で何度も選手のレーティングを繰り返してきたNBA 2K制作チームの経験こそが私たち独自の評価基準になっていると思うよ。

NBA 2K18 Screen Shot

――先日、アービングやポール・ジョージにNBA 2K18における自分たちのレーティングを予想させ、その後に実際のレーティングを伝えて彼らの反応を見るという動画がYouTubeに投稿されました。登場したNBA選手は全員、自分の予想よりもNBA 2K18のレーティングが低いことにショックを受けていましたが、それと同時にその評価をモチベーションに変えていました。彼らのレーティングに対する反応をどう感じましたか?

彼らの反応を見るのは大好きだよ(笑)。NBA選手がそれ程までにNBA 2Kシリーズのレーティングを気にするのは、NBA 2KシリーズがNBAのオフィシャルゲームとしての地位を確立していることの表れだからね。それに、今では多くのNBA選手がNBA 2Kシリーズにおける自分のレーティングを上げることを意識してプレイしてくれている。それはとても光栄なことだし、彼らのそういった姿を見るのは嬉しいことだよ。

――最後に、NBA 2K18の魅力と、日本のNBA 2Kファンに向けたメッセージをお願いします。

日本のNBA 2Kファンの皆様のいつも変わらぬサポートに大変感謝しています。また、毎年日本を訪れて皆様に新作をご紹介できることを光栄に思っています。最新作NBA 2K18は、とても素晴らしいゲームです。カリフォルニアの2K本社にいる約150人の制作スタッフ全員が100%の力と熱い情熱を持ってこのゲームに全てを注ぎました。バスケットボールゲームの中だけではなく、スポーツゲームの中だけでもなく、全てのビデオゲームの中で一番のゲームを作ることを毎年の目標とし、私たちが1年かけて作り上げたこのゲームは他の追随を許しません。新要素のネイバーフッドやグラフィックの大幅な強化など、あらゆる面でこのNBA 2K18は進化しました。この素晴らしいゲームをぜひ実際にプレイして楽しんでください。

文:西尾瑞穂 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho
写真:及川卓磨(NBA Japan編集長) Twitter: @oitaku
協力:テイクツー・インタラクティブ・ジャパン 『NBA 2K18』公式サイト http://nba2k.jp/

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