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[コラム] NBA最高の3ポイントシューターは誰だ!? (マササ・イトウ)

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前回コラム「NBA最高のプルアップシューターは誰だ!?」が大好評だったマササ・イトウ氏が、再び NBA.com Japan に登場!! 今回は、放った状況を考慮した3ポイントシュートについて詳しく考察する。タイトに守られたときでも長距離砲をねじ込んでくる3Pのスペシャリストはいったい誰なのか?

3ポイントラインがNBAで導入された1979年から現在に至るまで、3ポイントシュートの数は大きく増加してきた。リーグの3P平均試投数は1979-80シーズンには2.8本だったが、今シーズンは21.9本とフィールドゴール全体の26%を占める。つまり、リーグにおける3Pの重要性は年々上昇しているのだ。

そんな3Pのスペシャリストであるシューターを評価する指標は、長年「3P成功率」しか存在しなかった。しかし、前回紹介したプルアップシュートと同様に、昨シーズンから導入された6台のカメラが選手とボールの位置を記録するシステム「SportVU」( 参考記事 )により、状況が変化してきている。シューターの打った位置やパス、ドリブルの状況、相手選手との距離など、シュートそのものを評価するデータが取得可能になってきたのだ。

今回は、その中の一つ、相手選手との距離のデータを使って、3Pのスペシャリストをさらに細かく見ていきたい。

まず、従来の3P成功率で確認すると以下の選手が上位となっており、トップはコートニー・リー(メンフィス・グリズリーズ)だ。

■3P成功率ランキング(規定数到達者)

Rk. 選手(所属) 成功率
1. コートニー・リー(グリズリーズ) 54.5%
2. カイル・コーバー(ホークス) 53.9%
3. ラスール・バトラー(ウィザーズ) 51.3%
4. ルーク・バビット(ペリカンズ) 50.9%
5. ケビン・マーティン(ウルブズ) 48.1%
6. パトリック・パターソン(ラプターズ) 46.9%
7. ロバート・コビントン(76ers) 46.3%
8. ブラッドリー・ビール(ウィザーズ) 45.5%
9. アーロン・ブルックス(ブルズ) 44.6%
10. クレイ・トンプソン(ウォリアーズ) 43.9%

※日本時間2014年12月22日時点。最新の3P成功率ランキングは こちら で確認可能。

しかし、一方で、NBA.comの定義で「タイト」とされている相手選手が4フィート以内にいるシュートだけを見てみると、リーの成功率は25%に落ちる。また、そのようなシュートをリーは66本中4本しか打っていない。例えば、リーは相手にタイトに守られた場合にシュート成功率が落ちることをわかっており、そのようなシュートを滅多に打たない、いわゆる「ショットセレクションの良い選手」と考えられる。

下の図はそれを3P成功率の上位20名で確認したものだ。

ここからいくつかの面白いことが見えてくる。


■タイトな3Pの割合

ニック・ヤング(ロサンゼルス・レイカーズ)だけが、タイトに付かれたときのシュート割合が5割を超えている(55%)。彼自身の自由なプレースタイルや、苦しいときに決めてくれるレイカーズの得点源となっていることが想像できる。

次点は今シーズン復活を果たしたラスール・バトラーで、序盤戦に故障者に苦しめられたウィザーズの中で、タイトに守られながらも3Pを打ち続けてきた姿が眼に浮かぶ。

一方で、先ほどのリーや、パトリック・パターソンなどは不得手なシュートを極力打たずに良いシュートを選ぶ賢い選手と言えるかもしれない。


■タイトな3P成功率

成功率で54.5%とトップを走るのはカイル・コーバーだ。特筆すべきは、タイトに守られていない場合(53.6%)よりも成功率が少し高いことだろう。タイトに守られていてもその隙を突いて決める、正に「シュートの達人」と言ったところか。

また、注目すべきは二番手に位置するチェニング・フライ(オーランド・マジック)だ。彼の高いリリースポイントから放たれるシュートは、タイトに守られていても関係なく決められることが示されている。上図で近い位置にいるショーン・ウィリアムズ(マイアミ・ヒート)にも共通する強みなのかもしれない。

一方で、アーロン・ブルックス(シカゴ・ブルズ)はタイトに守られているにもかかわらず多投しており、プレー傾向が気になるところだ。


いかがだろうか。従来の評価方法に、こういった新たな評価軸を加えてみると、選手の違った良さが見えてくるのではないだろうか。NBA.com/statsでは、そのほかにも、打った位置、距離、プルアップスリーポイント、マークマンが誰だったか、といった詳細な情報とともに全シュートを確認することが可能なので、ぜひ独自の選手評価を行なってみてほしい。

■タイトな3P成功率ランキング

Rk. 選手(所属) 成功率
1. カイル・コーバー(ホークス) 54.5%
2. チェニング・フライ(マジック) 46.2%
3. パトリック・ビバリー(ロケッツ) 44.4%
-. アイザイア・カナーン(ロケッツ) 44.4%
5. ショーン・ウィリアムズ(ヒート) 42.9%

※2014年12月22日時点。

文&グラフ: マササ・イトウ Twitter: @ma_sa_san

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