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[イラストコラム]誰もが認めるナイスガイ――来日ツアーで見えたブラッドリー・ビールの人柄(西尾瑞穂)

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Bradley Beal in Japan

5月18~20の3日間にわたって東京で様々なイベントに登場したワシントン・ウィザーズのブラッドリー・ビール。彼のナイスガイっぷりに関しては、ネットやSNSで多数報告されたので皆さんご存知のことと思いますが、このコラムでは日本のファンを魅了した彼の人柄にさらに迫りたいと思います。


インタビュー対応がナイスガイ

ビールは5月17日の夕方に成田空港に到着し、翌18日の朝から夕方まで立て続けに複数のメディアによるインタビューを受けました。その間の休憩はランチタイムのみ。

一般的に、海外を訪れるNBA選手は数日の間に多くのイベントをこなさなくてはならないため、こういったハードなスケジュールになるのは仕方がないことなので、選手も「仕事」としてキッチリとインタビューに答えるのが常になっています。

とはいえ、長距離フライトからくる疲労や時差ボケの影響もあるので、NBA選手の誰もがいつも100%の笑顔で全てのインタビューを受けられるわけではありません。

しかし、ことビールに関しては、私を含めた全ての取材陣やスタッフが口を揃えて「彼は凄くナイスガイだ!」と言うぐらい、誰に対しても終始笑顔で接し、そして全ての質問に対して非常に丁寧に答えてくれました。

複数のメディアから別々にインタビューを受ける場合は、選手は似たような内容の質問に何度も答えないといけなくなるケースが多く、全ての質問に丁寧に答えるというのは意外と誰でもできることではないのですが、ビールは時には真剣に、そして時には心の底から大笑いしながらインタビューを盛り上げてくれました。

ビールと行動を共にしていたカメラマンの方が「私は全然NBAに詳しくないのですが、ビールは今後ずっと応援したいですし、彼の試合なら観たいと思いますよ!」と言っていたことからも、彼の人間性がどれだけ素晴らしかったかが伺えます。

ファンとの接し方がナイスガイ

18日はインタビューセッションの後に代々木公園の屋外バスケットボールコートを訪れ、19日はWOWOWの生放送に出演→錦糸町のスーパースポーツゼビオでトークショー&ファンと写真撮影会→大相撲観戦→NBAパブリックビューイングパーティー(恵比寿・アクトスクエア)にゲスト出演、20日は浅草でサムライ体験をした後に千葉県の市立船橋高校バスケットボール部でクリニックを行ない、その日の深夜に帰国……という過密スケジュールだったにもかかわらず、いつも笑顔で心の底からファンとの交流を楽しんでいた様子が印象的です。

どの会場でも、ビールは予定されていたスケジュールよりも長い時間ファンと触れ合い、写真やサインを求められれば快く応じ、共にバスケに汗を流し、時には真剣にアドバイスを送っていました。きっと、その場にいた全てのファンがとても良い時間を過ごせたはずです。

中でも、ビールの人柄が良く表れていたのは、小さな子供と接するときです。代々木公園で小さな子供と1 on1をしていたのは、NBA JAPANの動画などを見てご存知の方も多いと思いますが、ビールは小さな子供が相手だからといって単なる“ボール遊び”で終わらせず、ボールがコートから飛び出すほどの豪快なブロックショットやスティールを決めたり、さらにはアンクルブレイクで尻もちをつかせたりと、しっかりと「NBA選手の桁違いの凄さ」を子供の記憶に焼き付けていました。


もしビールが手を抜いて適当にボール遊びをして終わらせていたとしたら、あの子供には「NBA選手と遊んでもらった」という事実が残るだけですが、ビールのお陰で彼の体にはNBA選手の凄さが記憶として刻まれたはずです。それが彼の財産になるということも、ビールには分かっていたのでしょう。

また、市立船橋高校でのクリニックの際も、見学で訪れていた小さな女の子を見つけると「君も一緒にバスケをするかい?」と声をかけたりと、弱冠22歳とは思えないような優しい表情を見せていました。

インタビューでビールに「バスケ選手以外で尊敬する人物は?」と聞いたときに、彼は「自分の兄たちだ」と即答していました。きっと彼自身も年上の人間に面倒を見てもらい、後押ししてもらった経験があるので、それと同じことをファンの子供たちにもしてあげたいのでしょう。

チャレンジ精神がナイスガイ

もう一点、ビールを取材していて感心したのは、彼のチャレンジ精神です。

日本滞在の最終日に、ビールは着物を着てサムライの殺陣を体験しました。慣れない着物姿で、しかも初めて手に持つ刀に苦心しながらも、最終的には見事な殺陣を披露してくれたビールですが、そんな彼が最も苦心したのが最後に刀をサヤに納める「納刀」の部分。

何度やっても上手く刀が納まらなかったので、周りにいたスタッフが手を貸そうとしたのですが、ビールは「自分の力でやり遂げたい」と言って何度も何度も練習を重ね、見事にやり遂げました。

インタビューでも、ビールは「自分を信じて目標に向かって努力する」ということを何度も言っていましたが、そんな彼のモットーが垣間見えた場面でした。

そんなビールが今回の来日で唯一チャレンジを避けたものがあります。それは「寿司」。

私がインタビューで「食べてみたい日本食は?」と聞いたときに、彼は「みんなが勧めてくれるのでマグロを食べてみたいね。たぶん寿司で食べることになるかな?(Maybe SUSHI?)」と答えたのですが、そのときにビールは、笑いながら周りのスタッフに向かって何度も「Maybe SUSHI?」と言って爆笑を取っていました。

実は、彼は生魚を苦手(食わず嫌い?)としていたので、「本当は食べる気がないけれど」という意味を込めて「Maybe SUSHI?」と連呼していたのです。結局、今回の来日で彼が寿司を食べることはなかったそうですが、チャレンジ精神旺盛なビールには、次回の来日でぜひ本場の寿司に挑戦してもらいたいですね!

文・イラスト:西尾瑞穂
イラストレーター、CGデザイナー、バスケットボールライター。イラストやCGの制作、バスケットボール取材、コラムや漫画の執筆、写真撮影など幅広く活動。2013年から1年間NBA.com Japanでイラストコラムを連載した。現在もユタ・ジャズ関連を中心に毎シーズンNBA現地取材をしている。2011年にデロン・ウィリアムズとカイル・コーバー主催のチャリティ・ドッジボール大会のメイン・ビジュアルを手がけたほか、NBA選手たちのTwitter、Instagram、Facebookのアイコン用イラストを数多く描いている。 Twitter: @jashin_mizuho Instagram: jashinmizuho


[特集]ブラッドリー・ビール来日ツアー

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ