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ファイナル前日に人種差別的被害を受けたレブロン・ジェームズ「この問題が進展するきっかけになって、家族が無事ならそれで構わない」

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NBAファイナル2017開幕を前日に控える5月31日(日本時間6月1日)、ゴールデンステイト・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズの選手、ヘッドコーチが練習後の会見に出席した。

キャブズのレブロン・ジェームズは、自身にとって7年連続となるファイナルのこと以外にも、同日起きた、所有しているロサンゼルスの別宅のゲートに人種差別用語の落書きをされた事件についても、自身の考えを述べた。

――常々、社会問題について率直に話してきたと思う。今回はあなた自身に関係することが起こった。ロサンゼルスでの住居で起こったことについて何かコメントは?

スポーツ界最大規模のイベントを前日に控え、人種に関することが起こってしまい、自分は、自分自身と家族を代表してここに座っている。ただ、僕は今回の件について、こう考えている。もし今回の件をきっかけに、今後この問題に関する議論が続いて、光が当たるのなら、それで構わない。幸い、自分の家族は無事だからね。家族の無事が何よりも大切なことなんだ。

ただ、人種問題というのは、常に世界の問題であって、アメリカが抱えている問題の一つでもある。アメリカでは、アフリカ系アメリカ人に対する嫌悪感は日常茶飯事。普段は目に見えないことのほうが多い。自分の素性を明かさず、何かを言ってくる人もいる。それでも、そういう人たちと顔を合わせれば、彼らは笑顔だ。それが日常だと思う。

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今回のことがあって最初に頭に浮かんだのは、エメット・ティル(1950年代、白人女性に口笛を吹いたことで殺害されたアフリカ系アメリカ人の少年)の母親についてだった。彼女が、棺の蓋を開けたまま葬儀を行なったのは、彼女の息子の身に何が起こったかを示すためだった。人種間の対立による犯罪被害を受け、アメリカで黒人として生まれたために起こったことをね。

つまり、いくら大金を稼ごうとも、どれだけ有名になろうとも、どれだけの人間から尊敬されようとも、アメリカで黒人として生きていくのは大変なことなんだ。我々アフリカ系アメリカ人がアメリカで平等と感じられるようになるまで、長い道のりを必要とした。ただ、自分の家族は安全。それが何よりも重要なことなんだ。

――力強い声明だと思う。では、話題をバスケットボールに戻したい。現実社会の問題について話をしてくれたが、今回の件が起こった上で、明日の試合にどうやって気持ちを切り替える?

最終的には明日の試合に集中できると思う。チームのゲームプランに意識を集中させる。でも、今は自分にとって最優先すべきことは決まっている。バスケットボールは、家族の次に来るもの。実際には、若い世代にとって模範的な行動を取ること、自分の財団に関する仕事の次に来るものだ。ただ、明日はバスケットボールに集中する。それでも、今回のようなことが起こると、自分にとって何がより大切かを再認識させられる。自分の人生において、バスケットボールは最も重要なことというわけではないんだ。

――これまでファイナルに何度も出場し、あらゆるタイプの質問を受け、それらに答えてきたと思う。ファイナルに関する経験など、まだメディアに答えたことがない話を聞かせてもらえる?

そう言われても、思いつかないね。この状況にいられて感謝しているし、名誉なことと思っている。NBAではオールスターウィークエンドとファイナルが1年で最も大きなイベントだ。ドラフトは3番目だね。また球団の一員としてこの場所に辿りつけて、世界各国で試合が放送されるNBAファイナルの一部になれた。この競技において最高の2チームにスポットライトが当たる場所に立てている。そのことを誇らしく思う。今言えることは、それくらいだね。

――ケビン・デュラントとの関係は? これまでオフシーズン中に一緒に練習していたのは知っている。2011年には(オハイオ州)アクロンで一緒に練習したこともあった。今も彼とは良い関係を保てている?

僕たちの関係性は非常に良い。もし何か困ったことがあれば、お互いに連絡を取り合う関係だね。その必要がなくても、関係性には何の問題もない。僕たちは、お互いに尊敬し合っていて、互いに競技者でもある。自分は、彼よりも早くNBAでプレイするようになった。彼のことはNBAでプレイする前から知っていて、もし何か必要なら連絡をくれるように言っていた。自分も同じようにドラフトで指名されて、フランチャイズプレイヤーになることを期待されていたからね。

それで彼がシアトル(スーパーソニックス/現オクラホマシティ・サンダー)から指名されたときも、いつでも自分を頼りにしてもらいたかった。彼もキャリアを通じていろいろと経験していると思う。ただ、KDに関しては、自分はいつだって彼を受け入れるつもりだよ。僕たちの関係性は、こういう感じだね。

LeBron James

――今日の一件についてもう一つ聞きたい。今回の件を子供たちにどう説明するつもり?

残念なのは、今すぐ家に帰って息子たちに会えないことだ。娘はまだ幼いので、今回の件を理解できていない。今は息子たちのそばにいてやれないし、来週まで家には帰れない。今はそれが非常につらい。でも、妻は素晴らしい人間で、僕の母、義理の母や家族が、学校から帰ってきた子供たちにしっかり説明してくれるだろう。今はAppleの技術も素晴らしくて、子供たちとFaceTimeで会話もできる。ただ、今回のような件については、直接顔を合わせて子供たちに説明したい。

以前も話したとは思うけれど、2人の息子たちは素晴らしい心を持っている。人生に関して、愛情のある人生に関してオープンな考え方を持っている。自分は親として、息子たちに人生が与えてくれることのさわりの部分を伝えてあげられればと思っているけれど、最終的には彼らが自分たちの道を見つけて歩んでいくんだ。飛び立つ準備が整うまでに、息子たちに人生を乗り越える上で必要なスキルを与えたいし、伝えたい。息子たちなら、自分の道を歩いていけるはずだ。

――キャリアを通じて厳しい時期を乗り越えてきた。今回も同様に厳しい状況に見えるけど、今も周りに力を証明しなければいけないと感じている?

いや、もうその状況にはいないよ。それは20代の頃だ。周りに実力を証明するとか、批判をかき消すためとか、そういう状況ではない。30代に入って、そういう類のことからは抜け出した。自分がやってきたこと、何のためにプレイしているかは理解している。自分にとって唯一のモチベーションは、毎シーズン優勝のために競い合うということだ。またこの場所に辿りつけて感謝している。自分も、チームメイトも努力してきた結果、ここに来られたわけだからね。周り云々というのは、自分には関係ないかな。

――今回の件が精神的な部分に与えている影響は?

お気づきの通り、今は普段とは異なる精神状態にいる。時間が解決してくれるだろう。問題ないよ。対処する方法を見つけるさ。今は子供たちのことを考えている。今は子供たちのそばにいてあげられないけれど、妻がいる。先ほど妻とは話した。彼女は我が家にとっての活力なんだ。妻は何の問題もないと言っていた。彼女の存在のおかげで気が楽になるよ。

きっと時間が解決してくれる。最終的には、先ほども話したように、今日、自分と家族に起こった今回の件で議論が続けば良いし、この問題が後退するのではなく、進展するのなら、それで構わない。同じようなことが自分に再び降りかかってきたとしても、この問題が進展するのなら、構わない。家族が無事なら、それで良い。

――これまでに所属した2チームでファイナル進出、7年連続ファイナル進出など、自身の歴史を把握している印象がある。特に今回のファイナルは、自身の功績を残す上で壁になると見ている?

自分の功績云々について語るつもりはない。この瞬間を生きているだけだし、もし何かを成し遂げられたとしても、自然に追加されていくものだろうからね。こういうスタンスさ。

たしか自分が1950年代、もしくは60年代のビル・ラッセルら以降としては初めての7年連続のファイナル進出だったと思うけれど、それ以外にも2チームを4回ずつファイナルに導いた史上初の選手とか、そういうスタッツや歴史は、引退してから振り返りたい。周りにも、勝敗とか、自分が異なる歴史を作ったとか、何を成し遂げたとか、自分が完全に引退してから振り返ってもらえる。自分は、そういう立場にいると思っている。

――以前クリーブランドを離れて(マイアミ・ヒートで)優勝し、復帰した昨季、チームに優勝をもたらした。昨年の結果については、どれくらい満足している?

(キャブズでの優勝は)自分の目標だった。満足云々の話については、自分は満足しすぎることが好きではないんだ。そうなったら独りよがりになってしまう。ただ、去年の優勝は、目標を設定した上で、チームの皆と達成できたこと。だから良い気分だったよ。

でも、自分は満足しない性分なんだ。昨年優勝できて、数日はお祝いしたけれど、すぐ仕事に戻った。心身ともに準備を整えたんだ。自分自身、チームメイト、球団がまた優勝できるように、その機会を得られるようにしたかったからね。

NBAファイナル2017 ベーシックガイド


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NBA Japan Photo

NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ