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カイル・ラウリーとデマー・デローザンの友情、リーダーシップ、プロフェッショナリズム

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カイル・ラウリーとデマー・デローザンは、リーダーとしての背中を見せることで、トロント・ラプターズのトレーニングキャンプを引っ張るだろう。

昨シーズン球団史上最多となる56勝26敗に導いた2人の活躍により、チームはプレイオフでもイースタン・カンファレンス・ファイナルに勝ち進んだ。最終的に第6戦でクリーブランド・キャバリアーズに敗れたものの、オールスターデュオは、コート上でのプレイ、模範的な姿勢、集中力を示し、チームをリードした。

シーズンオフ、ラウリーとデローザンは、アメリカ代表の一員に加わり、リオデジャネイロ・オリンピックでの金メダル獲得に貢献。ラプターズではファーストオプションの2人だが、代表ではベンチスタートという役割に対応しなければいけなかった。それでもラウリーとデローザンは、上手く順応してみせた。代表でのチームメイトと流れるようなプレイを見せた両選手は、リオに向かう1か月前にラスベガスで行なわれたトレーニングキャンプ時期から、代表コーチングスタッフに称賛される存在だったのだ。

ラスベガスでのキャンプを打ち上げた後、代表アシスタントコーチを務めたトム・シボドーは、「彼らは、試合に勝つためにプレイしていることを自覚している」と、語った。

「彼らはチームの一員としてプレイしてくれている。それが何よりも重要なんだ。とても素晴らしいし、チームUSAにも良い形でフィットしている。振る舞い、集中してミーティングに臨む姿勢、練習での姿勢、役割を共有しチームに尽くそうとする姿勢こそ、彼らの素晴らしさを表している」。

今季からヘッドコーチとしてミネソタ・ティンバーウルブズの指揮を執るシボドーだが、シカゴ・ブルズのHC時代にも、5年間ラウリーとデローザンを現場で見続けた。デローザンが2014年に開催されたFIBAバスケットボール・ワールドカップで金メダルを獲得したときにもコーチとして代表に参加したシボドーは、キャリアを重ねるごとに、デローザンが選手として成長する姿を見てきた。

「彼は、毎シーズン成長するタイプの選手だ。彼とカイルのバックコートは、NBAでのキャリアを送るごとに良くなっている。2人共に素晴らしい競技者だ。スマートで、タフで、チームメイトをレベルアップさせている。デマーも、本当に成長した。今では得点のバリエーションも豊富だ。相手にも相当なプレッシャーをかけられる。素晴らしいアスリートで、堂々としている。プレイを乱されることもない。昨シーズンのプレイを何度となく見たが、彼は信じられないくらい素晴らしいシーズンを送ったと思う」。

模範的なプレイでチームを引っ張るデローザンだが、シボドーは、チームUSAではスポットライトを浴びるポジションから一歩退き、与えられた役割をこなす姿勢を称えている。

「彼の振る舞いと姿勢は素晴らしい。取り組み方も素晴らしい」。

「リーダーシップにもいくつか種類はあるが、彼のように、模範的な姿を見せて引っ張るリーダーシップがベストだ。日々、正しい姿を見せ、適切な行動を取っている。だからこそ、これまでのようなキャリアを送れてきたのだろう。そして、彼は決して満足しない。ハードワークを怠らない。チームメイトを気にかけ、チームを勝たせたいと思っている。だからこそ成功できる」。

「仕事に対する彼の姿勢こそ、成長し続けられている理由だ。間違いない」。

シボドーは続ける。

「彼が才能に恵まれているのは当然。これまでに成し遂げたことの大半は、彼に備わっている才能のおかげだ。しかし、打ち込む姿勢と、知性があったからこそだとも思う。毎シーズンのように成長し続けている理由だ。どれだけ話しても、彼のプレイについて語るには不十分。全ての要素がレベルアップしている。トランジション、ハーフコート、ドライブ、キャッチ&シュート、ポジション取り、カッティング、試合を通じて相手ディフェンスにプレッシャーをかけるには、油断を見せず、意識し続けないといけない」。

シボドーの称賛は、デローザンとラウリーにだけ向けられているわけではない。ウルブズのHCに就任する前から昨季のラプターズの試合を見た上で、チーム全体が成長し続けていることに感心していると話す。

「ドウェイン(ケイシー)が、マサイ(ウジリ)と共に素晴らしい仕事をしている」。

「チーム内部のリーダーシップも上手く機能している。デマーとカイルを見れば、彼らが毎シーズン成長していることがわかる。彼らのようなリーダーシップのあるチームは、指導しがいがある。それが楽しみにもなる。勝利は楽しいことだからね。それが何よりも大事なんだ。何度も言うように、だからこそ彼らはシーズンごとにレベルアップできている」。

アメリカ代表コーチとして2人を間近で観察し、絶賛しているのはシボドーだけではない。アメリカ代表セレクトチームでコーチを務めたジェイ・ライトには、ラプターズに関心を持つ理由があるからだ。ビラノバ大でラウリーを指導したライトは、NBA入りから9年経った今も、ラウリーに近い友人関係を築いたままだ。そんなライトは、ラウリーとデローザンの関係性こそ、ラプターズの試合を見て何よりも際立つことと主張する。たしかに2人は、バスケットボールの範疇を遥かに超えた絆を紡いでいる。その関係性こそ、コート上でのプレイに直接的な影響を与えていると、ライトは見ている。

「(カイルは)デマーへのリスペクトや、馬が合うことは話しても、2人の関係性について話すことはあまりない。私は、常に彼らの関係性に注目している。インタビューもチェックしているよ。ときにジョークを交えて答えるインタビューでは、デマーは冗談も言うし、カイルへの反応を見ると、本当の兄のように慕っているのがわかる。私も彼を見習うよ」。

ライトは、ラウリーが結婚して夫になり、父親になる姿を見てきた。人生の転換期に起こる大きな出来事を通じて、ラウリーが、若手時代に欠けていた安定感と成熟性を養ったと考えている。

シボドーは、厳しい時期を乗り越えて今のキャリアを築いたラウリーを、こう称えた。

「誰でも、経験から学ぶもの。彼がリーグでやってきたことを見れば、精神的にどれだけタフな選手かがわかる。彼はホームと呼べる場所を見つけた。彼らによるバックコートこそ、ラプターズ成功の大きな要因だ。ファンも、彼らの功績に感謝しているのがわかる。私が思うに、それ以上に大事なのは、彼らがチームについて考える選手だということ。どうすれば試合に勝てるかを理解し、チームとしてプレイしていることをわかっている。本当に、それが一番大事なことなんだ」。

ライトは、昨プレイオフのファーストラウンドとカンファレンス・セミファイナルを通じ、ラウリーとデローザンの強固な関係性がプレイから見られたと考えている。インディアナ・ペイサーズとのファーストラウンド、マイアミ・ヒートとのセミファイナルは共に第7戦までもつれたが、最終的にラプターズが勝ち進んだ。オールスターに選出されるほどのシーズンを送ったラウリーとデローザンだったが、プレイオフでは思うようにいかず苦戦した。チームを取り巻く状況が厳しくなっていても不思議ではなかった時期に、ライトは、ラプターズが誇る二大エースの深い結びつきを実感したと語った。

「チームが厳しい状況に追い込まれたとき、コート上で彼らのケミストリーが見られたと思う。苦戦を強いられるロードでの試合で、彼ら2人は心を一つにして戦った。2人の関係を壊せるものなど何もない。彼らのような関係は、プロスポーツの世界では稀。それこそ、トロントが持つ特別なものなんだ」。

原文:Lowry, DeRozan Make Their Mark With Leadership, Professionalism & Friendship by Holly MacKenzie/Raptors.com


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ