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[三尾圭フォトリポート第6回]“NBAの顔”はレブロン? それともカリー?

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2年連続でゴールデンステイト・ウォリアーズ対クリーブランド・キャバリアーズの対決となった今年のNBAファイナルは、ウォリアーズが2連覇を成し遂げるのか、キャブズが昨年のリベンジを果たすかに注目が集まっている。ただ、個人的には、ステフィン・カリーとレブロン・ジェームズの「現役最強選手」対決にも注目したい。

クリーブランド郊外にあるアクロン・ジェネラル・メディカル・センターという同じ病院で生まれたジェームズとカリーは、過去8年間で2人合わせて6回もMVPに選ばれたリーグを代表するスーパースターである。

20年間の現役生活に別れを告げたコービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)がいなくなる来季からは、レブロンかカリーのどちらかがリーグの顔となるだろう。

実績ではNBA13年目を迎えるレブロンが、7年目のカリーを圧倒している。だが、ここ2年間に限れば、カリーが連続でMVPに選ばれていることが示すように、カリーの勢いに分があると言える。

「選手をランク付けしたり、どちらのほうが優れた選手なのかを議論したりするのは、僕の仕事ではない」とカリーは言うが、「大切なのは『勝利』だ。僕たちは昨年の優勝を勝ち取っている」と、昨ファイナルの大舞台でレブロン率いるキャブズを倒した事実を付け加えることは忘れない。

一方でレブロンは、「この素晴らしいリーグの一員でいることを誇りに思う。僕がこのリーグを牽引しているのではなく、選手全員が力を合わせてリーグを支えている」と、謙遜する。

また、レブロンは、2年連続してファイナルでカリーと対戦して、2人をライバル視する声がファンの間から高まっていることに対して、「ゲームを盛り上げる意味では素晴らしい」と、語っている。

「最高の選手と戦うのは、僕の闘争心を掻き立てるしね。これまでに(ティム)ダンカン、KG(ケビン・ガーネット)やレイ・アレン、(デトロイト)ピストンズの面々、ダーク(ノビツキー)、KD(ケビン・デュラント)やラス(ラッセル・ウエストブルック)といった、僕たちの時代を代表するような最高の選手たちと戦ってきた。そして今はステフとウォリアーズと戦えるのだから、僕はとてもラッキーだと思っている」。

そう語るレブロンは、カリーをライバルと認めているようだ。

「ライバルはメディアやファンが作り上げるものだが、スポーツの発展には必要だ」。

対するカリーは、「レブロンと比べられると、正直ウザくなる」と言いい、ライバル関係を煽るメディアを牽制して、勝利だけを見つめている。

「僕はNBAの『顔』になるためでも、レブロンから冠を奪いとるためにプレイしているわけでもなく、優勝リングを得るためだけにプレイしているんだ」。

当事者の2人はリーグの「顔」になりたいわけではないと口を揃えるが、チームメイトの見方は少し違うようだ。

カリーのチームメイトであるクレイ・トンプソンは、「リーグを代表する選手として真っ先に思い浮かべるのは?」との質問を投げかけられると、「とても難しい質問だね」と、頭をひねった。

「地域的にはステフがレブロンを抜いたけど、全米規模だとどうだろう。(西海岸と時差が3時間ある)東海岸のファンは時差の問題でステフのプレイを見る機会が少ないかもしれない。それにレブロンは13年もリーグの先頭に立って突走ってきたからね」。

「ただ、普通のファンにとってはステフのほうが身近に感じるだろう。カジュアルなファンは身長203cm、体重118kgの恵まれた身体を持ちながらコート内の誰よりも速く動ける選手にはなれないけど、ステフのように最上級の身体能力を備えていない選手には共感できると思う。ステフは誰よりも高く飛び、速く走れるスーパーアスリートではなく、技術と気持ちでリーグ最高の選手に上り詰めた。ま、最終的には個人の好みなんだけどね」。

誰がNBAの顔なのか、に対する答えを出すのは選手ではなく、ファンに委ねられている。これまでずっとユニフォームの売上数でトップの座に君臨していたレブロンだが、昨夏にカリーがその座を奪い取っている。過去2年間のオールスターファン投票でもカリーがレブロンを上回ったように、ファンはカリーを支持している。

しかし、MVP受賞回数ではレブロンの4回に対して、カリーは2回と実績ではまだ差がある。今年のファイナルで、カリー率いるウォリアーズが連覇を成し遂げ、優勝回数でレブロンに肩を並べれば、名実共にカリーがリーグの顔となる時代が訪れるだろう。逆にレブロンとキャブズが昨年のリベンジに成功すれば、カリーに傾きつつある流れを取り戻して、再びレブロンこそがリーグの顔だとアピールできる。

タイプの全く異なるジェームズとカリーのどちらが『リーグの顔』に相応しいのか? そんな熱い議論を楽しみながら、今年のファイナルを観戦するのも面白そうだ。

文・写真: 三尾圭

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[特集]2016 NBAファイナル: ウォリアーズ vs キャブズ


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ