『ウォール・ストリート・ジャーナル』が日本に住むサンダーファンの主婦を紹介

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インスタグラムやツイッターにラッセル・ウェストブルックとオクラホマシティ・サンダーのイラストをアップしている専業主婦の活動がNBA内外で話題となっている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』のベン・コーヘン記者が東京を訪れ、話題のイラストを投稿し続けているナナエさん(7Aさん)を取材した模様が掲載された。

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2012年、東京郊外在住の43歳の専業主婦であるナナエさんは、たまたまテレビをつけるとそこに映し出されたのはプレイオフを戦うサンアントニオ・スパーズとオクラホマシティ・サンダーだった。NBAに興味があったわけではない。むしろNBAのことはほとんど何も知らず、結果的に興味を惹きつけられたのは他の誰よりも突出していたある選手だった。そしてそれは、ラッセル・ウェストブルックだったのだ。

彼女は通訳を通して「初めてウェストブルックがプレイしているのを見て、変な人って思ったんです」と話したのちに、英語で「彼変ですよね? すごく変!」と付け加えた。

ウェストブルックの異様さが彼女を惹きつけ、それ以来彼のことばかり考えるようになっていた。気づけば完全にサンダーに取りつかれていた。

それだけバスケットボールという世界は縮んでいるのだ。このオクラホマシティ・サンダーファンは、応援するチームから何千キロも離れた場所に住んでいる。オクラホマシティに行ったこともない。アメリカにもない。日本国外にも出たことがない。「パスポートすら持っていません」と彼女は話した。

しかしNBAリーグパス、ツイッター、インスタグラムがあるのだ。

ウェストブルックはNBAの最優秀選手にまで成長し、彼女も自身のアートを通してそれを記録し続けた。サンダーのシーズン中は、勝ち試合はカラー、負け試合は白黒という形で毎試合イラストを投稿していた。そして次に起きたことは、誰もやっていないことをやっているアーティストだからこそ経験できることだった。

世界が彼女を見つけたのだ。彼女のイラストを気にかける人が増えていき、そのなかにはサンダーの選手も含まれていた。

サンダーのセンター、スティーブン・アダムズは彼女のイラストを面白いと感じ、ロッカールーム内で共有し始めた。アダムズは「仲間に送ったんだよ」と話す。

「彼女がやっていることはとてもユニークだね」。

そう感じているのはアダムズだけではない。ドマンタス・サボニス(現インディアナ・ペイサーズ)も以前に、彼がウェストブルックと手をつないでいるイラストをツイッターに投稿している。それもあって、彼がトレードされてしまったことに対して彼女は「サボニスがいなくなって寂しい」と語っている。しかしバスケットボールファンとしては、サンダーがロスターを補強する必要性も理解していた。サンダーのサム・プレスティGMのオフシーズン中の活躍に感心して、彼のイラストも描き上げているほどだ。

彼女が日本に住んでいることを知らなかったアダムズは、その事実を知ると「いや、それはすげええええ」と大喜びだった。

ある土曜の夜(または日本時間的には日曜の朝)、ナナエさんの感情をかき回すような試合が行なわれていた。それでも彼女は東京で観戦会を企画してくれた。そして『Ball Tongue』というバスケットボールカフェに多くのNBAファンが集まり、サンダー対ウォリアーズを観戦した。

そこはラシード・ウォレスとラトレル・スプリーウェルのポスターが天井に貼られ、ウェストブルックのジャージーが窓にかけられ、デンバー・ナゲッツのマスコットであるロッキーのペナント、等身大のペニー・ハーダウェイの看板、ドリームチームのジャケットなどが飾られている、バスケットボールファンにとっては夢のような場所だった。メニューには「ザ・グリーク・フリーク(ウーゾ:ギリシャの蒸留酒)」や「トラスト・ザ・プロセス(ウォッカ)」などのオリジナルカクテルが並んでいる。

試合はサンダーが32点差で負けるという、ナナエさんにとって残念な結果となってしまったが、ここからが彼女がピカソに変身する時間だった。

iPadをキャンバス代わりに、Apple Pencilでスラスラと描き上げていった。浮かない顔をしたウェストブルックと腕に顔をうずめたポール・ジョージが並んで座っている絵が、20分ほどで出来上がっていた。スニーカーのデザインまでバッチリだ。

絵につけられる無数の「イイネ」は、彼女にとっていまだに非現実的だという。サンダー選手どころか、他の誰かが自分の存在を認識していることに驚きを感じているのだ。「田舎育ちで、ずっと私って変な人だったんです。自分がいられるコミュニティがなくて」と彼女は説明した。

そして彼女はネット上で他のNBAファンに出会った。

「自分みたいな変な人ばっかりだって感じたんです、いて良いんだって」。

原文:The Oklahoma City Thunder’s Biggest Fan Lives in Japan by Ben Cohen/The Wall Street Journal(抄訳)
抄訳:大西玲央 Twitter:  @BullsFiJ 


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ