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悲しみを抱きながら出場を決意したアイザイア・トーマス

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シカゴ・ブルズとのNBAプレイオフ2017 ファーストラウンド開幕前日の4月15日(日本時間16日)、ボストン・セルティックスのアイザイア・トーマスは、交通事故により愛する妹を亡くした。16日(同17日)、TDガーデンに集まったセルティックスファンは、心に傷を負ったままプレイすることを決めたエースを、割れんばかりの大歓声で出迎えた。『AP通信』のカイル・ハイタワー記者が伝えている。

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試合前には、亡くなったトーマスの妹チャイナ・トーマスさんに黙とうが捧げられた。故郷ワシントン州シアトルの高速道路で起こった単独事故により、チャイナさんは22歳の若さで帰らぬ人となった。

トーマスは試合前日のチーム練習終了後にチャイナさんの死亡を伝えられたという。試合会場にこそ姿を見せたトーマスだったが、ブルズとの第1戦に出場するかはわからなかった。トーマスの精神状態は、試合前のシュート練習時にベンチで涙を流し、チームメイトのエイブリー・ブラッドリーに慰められている様子を収めた『TNT』の映像を見れば明らかだった。だが、出場を決断したトーマスは、試合前のウォームアップに向かうチームを率いてコートに登場。試合開始直前には顔を上げ、集中している様子だった。

トーマスがブルズとの第1戦で着用したシューズには、手書きで『Chyna』、『I love you』と書かれていた。

isaiah Thomas shoes

トーマスの妹の死を受け、NBAコミッショナーのアダム・シルバー、他チームの選手、友人たちは次々に哀悼の声明を発表。セルティックスのブラッド・スティーブンズ・ヘッドコーチは、試合前の取材に応じた際「彼は苦しんでいる」と語っている。

「痛ましいことで、彼とご遺族は辛い時期にいる。我々は何よりもご遺族のことを考えている。昨夜も、そして今日も話をしたが、もし彼が(出場を)望まないのなら、彼の希望を叶えるつもりだ」。

試合前のセルティックスのロッカールームでも、チームメイトたちが感傷的になっていた。昨夏セルティックスに移籍した理由の一つにトーマスとのプレイをあげたセンターのアル・ホーフォードは、チーム全員がトーマスに時間を与えようとしていると語った。また、ブルズとの第1戦についても「当然、全員にとって感傷的な試合になる」と話していた。

「アイザイアはとても強い人間で、彼は今、僕たちには想像できないような苦しみの中にいる。今こうして会場にいるだけでも称賛に値する。難しいときだけれど、僕たちは彼を支えるためにいる。そして、全力で戦う」。

フォワードのタイラー・ゼラーは、チーム全体でトーマスの負担を軽くすることを考えていると言う。

「今こうしてこの場にいられるのは、彼のおかげ。信じられないくらいのシーズンを送った選手だし、彼がチームのナンバー1。僕たちは彼をコートで助ける」。

ファーストラウンドでセルティックスと対戦するブルズは、NBAの他チームに先がけ、トーマス家に対し哀悼の意を表した。ブルズのフレッド・ホイバーグ・ヘッドコーチは、普段からファンの熱気に包まれる同会場の雰囲気が、第1戦ではさらに感傷的なものになると予想した。

ホイバーグHCはトーマス家を襲った悲劇について「酷いことだ」と語っている。

「アイザイアは素晴らしい青年で、リーグを代表する選手の一人だ。そんな彼に今回のようなことが降りかかるなんて、不憫でならない」。

ゴールデンステイト・ウォリアーズのケビン・デュラントは、事故が起こった15日(同16日)に行なわれたポートランド・トレイルブレイザーズとのファーストラウンド第1戦に121-109で勝利後、トーマスに次の言葉を送っている。

「僕たち全員が彼に祈りを捧げている。NBAファミリー全員で彼を支える」。


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ