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[インタビュー] 富樫勇樹: 小さいからこそ得点を取ることが凄く重要 (鈴木栄一)

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――まず、ここまでDリーグでのプレーについてどんな感想を?

富樫:チームに遅れて加入したことも影響し、その分、出だしは自分のプレーができず、出場時間もかなり少なかったです。練習でも最初はコミュニケーションがよく取れていなかったこともあり、ちょっと自分のプレーができませんでした。

――ここまでのDリーグでのプレーを通して、自身が思い描いていたNBAまでの距離について、当初の考えと変化は出てきましたか?

富樫:サマーリーグに出たことで凄く自信がついたので、Dリーグに入って、この点についてどうこう、という変化はないです。ただ、正直に言って、去年(夏の渡米以降について)、こんなにうまく行くとは思っていませんでした。今はDリーグでまだ多くの出場時間をもらえてはいませんが、当初Dリーグですら入るのは難しいといろいろな人に言われていました。まずは、そこをクリアできています。ここからはチーム内の競争に勝って、出場時間を増やしていくのが大事になっていくと思います。

――今後、レジェンズで出場時間を増やすためには何が大事になってくると思いますか?

富樫:ずっと言っていますが、積極性だと思います。最初ベンチスタートで(コートに入るときに)身体は冷えていて感触も良くはないので、あまり積極的にシュートを打ちませんでした。それではスタッツに何も残りません。ならば、外してもいいからシュートを打とう、と思い始めてから気持ちが変わり、プレーも変わってきました。

コーチからは『もっとシュートも狙え』、言い方は悪いかもしれませんが、『もっとセルフィッシュ(我がまま)になってもいいんじゃないか』と言われます。アピールすることも大事なので、無理にとは言わないですが、いつも以上にアグレッシブに行ければと思います。

――背が小さいからこそ点を取らなければいけない、とツイッターで発言されていました。やはり得点はかなり意識していますか?

富樫:これは秋田時代からずっと言われていることです。ディフェンスでは、(小さいので)マイナスなことがほとんど。オフェンス面で状況によってはアシストもありますが、まずは得点を取る。どうほかの人が思うのかは分かりませんが、自分は小さいからこそ得点を取ることが凄く重要と思っています。

――今の自分が目指すべきプレースタイルと思うNBA選手はいますか?

富樫:アイザイア・トーマス選手(ボストン・セルティックス)は身長が同じくらいなのでプレーの参考にはしますが、身体つきが違いすぎます。ドライブしたあと、相手に当たってシュートを打ちにいったりしますが、自分はそういうスタイルではありません。ステファン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)みたいに、まずは外からの攻めが重要。外のシュートが入るからと相手のディフェンスが前に出て来たとき、ドライブする感じになれればと思います。もっと外の位置からのシュートの確率を上げ、ディフェンスにどんな位置からのピック&ロールでもオーバーで行かせるくらいのシュート力を持てば、ドライブも活きてくると思います。

――これから目標とする役割はどんなものですか? 例えば同じ小兵で得点力のある選手であるダラス・マーベリックスのJ.J.・バレアなどは参考になりますか?

富樫:そうですね、バレアの試合を見れば分かると思いますが、オフェンスで積極的にゴールに向かって行きます。小さくて、ただゲームをコントロールしていくのでは意味がないと思います。ディフェンス面では絶対にやられるところが出てくる。ほかの人と同じ形でやられていても、どうしても周りからは小さいから、と見られる部分も出てきます。そこはもう致し方ないので、オフェンスでどう取り返せるかが大事かな、と思います。

――得点に関する意識は、いつから強くなりましたか?

モントロス高校時代、全く点数は取っていないですし、コーチからも(取るように)言われていません。秋田に入ってからです、得点に対する意識がすごく強くなったのは。

――日本では基本的に試合は週末のみでした。Dリーグになってからの日程の変更に慣れるのは大変でしたか?

富樫:試合が多い面というより、移動への慣れが大変でした。長い時間、飛行機に乗ってその日に試合することもありました。そこで試合に集中するのは当初は難しいことでした。足も重いですし、どうアップしても少し感覚が違う中、自分のベストのパフォーマンスをするのは大変でした。

――技術的な面で、アメリカでプレーすることで日本時代と変えている点はありますか?

富樫:日本で通用していることは、アメリカでも通用していると思います。身体の当たりは正直、日本でも弱い方、狙われる部分でした。でもシュート、そしてピックからの攻めという部分では、日本でもできていることはアメリカでもできていると思います。

――これまでのDリーグでのプレーで、印象に残っている試合はありますか?

富樫:印象に残っているのは、最初に活躍できた12月29日(現地時間。エリー・ベイホークス戦)の試合です。この試合の前、3試合連続で得点が0、しかもシュート試投数が、1本、2本くらいで、それではいけないと、開き直ってシュートを打ち始めたら、結果が出ました。

――チームメイトには、NBA経験豊富なマイク・ジェイムズがいます。彼と一緒にプレーすることで得るものはありますか?

富樫:マイク・ジェイムズは、本物のプロだと思います。試合前、練習前にやっていることなど、取り組み方についてはとても勉強になります。

――bjリーグ、Dリーグのレベルの違いをどう感じていますか?

富樫:bj、Dリーグでアメリカ人選手のレベルはほとんど一緒だと思います。Dリーグで活躍できるかは分からないですが、bjリーグに所属している多くのアメリカ人選手は、Dリーグのチームに簡単に入れます。彼らはDリーグでプレーできる実力はありますが、給料の面などの理由で海外に出て行くのだと思います。外国人自体のレベルは変わりませんが、bjリーグで自分はアメリカ人とはマッチアップしていません。アメリカ人とマッチアップできる環境があるのは、自分にとってDリーグの一番の部分です。

――今後、シーズン終盤に向けての意気込みをお願いします。

富樫:まずはローテーションに入って1試合平均で15分、20分の出場機会を得たいです。日によって出たり、出なかったりではなく、毎試合、安定して出られるようにしていきたいです。(出場機会を得て)それなりの数字を後半戦にしっかり残すことで、状況は変わってくる。結果を残したあとで、次が見えてくる。まずは試合に出られる努力、アピールをしっかりしていきたいと思います。

文:鈴木栄一 Twitter: @duckssuzuki
取材:2015年2月14日 東京

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