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ホーレス・グラント「私が現役時代のブルズと今のウォリアーズを比較するのは不公平」

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現役時代シカゴ・ブルズ、ロサンゼルス・レイカーズで優勝経験を持つホーレス・グラントが、海外メディアとのライブチャットを行ない、質問に答えた。


フィル・ジャクソンとの関係性を、どう形容する?

フィルとの関係性を説明するとすれば、彼は私にとって助言者であり、父のような存在であり、今まで師事した中でベストのコーチと言えるかな。良い関係性だよ。隔週のように連絡を取り合っている。彼は僕の生活や家族のことを気にしてくれている。彼とは、今ニューヨーク・ニックスのポイントガードとしてプレイしている甥のジェリアン・グラントについて話をしているよ。
私にとって、彼はバスケットボールの技術や精神面の度量を高める上で精神的に必要だった存在だ。シカゴ時代に、より良い選手になるためにね。レイカーズに移籍した時点で、私たちは知った間柄だったから、彼が自分に何を期待しているのかわかったし、彼も私がチームのために何ができるかを理解していた。我々は最高の組み合わせだったんだ。

フィルから助言や、薦められた本はあった?

彼は、選手の性格に合わせて授ける本を選ぶ。僕は人が好きで、人助けや、困っている人のために何かをするのが好きでね、彼からはJoshuaという本をもらった。スピリチュアル系の本だった。彼は私の性格を理解していたんだ。そういうところも上手な人さ。きっと、スコッティ(ピッペン)やマイケル(ジョーダン)には、エゴについてなどの本を渡したと思うよ(笑)。

トライアングルオフェンスの理念は、今も有用性があると信じている?

多くの人が有用性はないと言うが、私はあると思っている。この間ニックスとマジックの試合を見たら、トライアングルの名残があった。相手チームがたとえゾーンディフェンスを敷く場合でも、トライアングルにはどんな守備を当てたって構わない。トライアングルには多くのオプションがある。ボールを正しく動かせていれば、6つの選択肢がなくなったとしても、別に6つの選択肢が出てくる。全員がその考えを受け入れている。

過去ディフェンスについた選手で最もタフだったのは誰?

私が現役の時代には優秀なパワーフォワードが多かったからね。でも、もし1人を選ぶとすれば、当時“フランケンシュタイン”と呼んでいたケビン・マクヘイルだ。210cm以上あって、肩幅も広い。ポストでのフットワークも素晴らしかったし、ゴールから4.5~5mくらい離れた位置からもジャンプシュートを決められた。ポストを支配していたよ。だから、ケビン・マクヘイルかな。

NBA史上に残る偉大な2選手マイケル・ジョーダンとコービー・ブライアントと一緒にプレイした。彼らの共通点は?

マイケルとコービーが似ているところは、彼らは2人ともに競争心が強く、情熱的で、勝者であるということ。彼らはチームメイトを並外れたバスケットボール選手に変えた。2人の間に異なる点はあまりないように思える。彼らはシーズンオフ中もバスケットボールをしているほどだからね。本当に競争心が強くて、フレンドリーなゴルフや卓球でも負けることを嫌う。負けるのが好きではないんだ。そういう性分が彼らを偉大なリーダーにした。殿堂入り選手、そして未来の殿堂入り選手と一緒にプレイできて非常に幸せだった。

1994-95シーズンのプレイオフでは、当時所属したマジックがイースタン・カンファレンス準決勝でブルズに勝利した。マイケル・ジョーダンが1度目の復帰を果たしたときのチームに勝ったときの気分は?

マイケル・ジョーダン、ブルズ、元チームメイト、友人たちに勝てたことは、私のキャリアのハイライトの1つだ。マイケル・ジョーダンとブルズにプレイオフで勝てた時点で、すでに何かを達成したようなものだった。最高の気分だった。あのシーズンは、たしかマイケルが年間の半分か、4分の3ほどプレイしたのかな。それにしたって、フロアの上での彼は、マイケル・ジョーダンだった。

(ゴールデンステイト)ウォリアーズについて聞きたい。今のウォリアーズの強みは? 彼らはスリーピート(3連覇)した当時のブルズとの共通点はある?

ウォリアーズについての話になると、連帯感が出てくる。チーム全体で同じ目標を見ていること、エゴを抑えられていることが話題に上る。そういう面は、私がブルズとレイカーズでプレイしていたときにも見られた。
共通点? チーム内の自信だろうか。テレビで彼らの試合を見ていると、画面越しに選手たちが各々の役割を理解していて、必ず試合に勝つという気持ちが伝わってくる。私がブルズでプレイしていたときも、同じような精神状態だった。

現代のNBA選手で、ディフェンスで抑えるのが難しいパワーフォワードのトップ5をあげるなら、誰を選ぶ?

ルールも、選手も大分変ってしまった。それでも、もしレブロン・ジェームズがPFでプレイすれば、実際たまにプレイしているが、彼が最も大変かもしれない。あとはPFでプレイするカーメロ・アンソニー。ウェストのチームなら、ブレイク・グリフィン。素晴らしい選手だ。身体能力も高く、ゴールから5m以上離れた位置からシュートも決められる。そのほかでは、今の年齢であってもティム・ダンカンは入るだろう。ウェストの誰かは敢えて省いておく。今の私があげるとしたら、彼らになるかな。

NBA王者となって学んだことは? 優勝が人生を変えた?

MJ、ピッペン、コービー、シャック(シャキール・オニール)、ペニー・ハーダウェイらと一緒にプレイしたことで人生が変わった。優勝したときに変わったよ。私も優勝に貢献した。あとは、ゴーグルを着けてプレイしたことで、少しは目立ったかもしれない。

何故コンタクトレンズを着けなかった?

おかしな理由だけれど、コンタクトを試したことはあった。でも、私のように長くて太い指を目に入れるのが怖くてね。できなかったんだ。だから、処方箋をもらって作ったゴーグルを着けた。

どの時点でゴーグルは単に必要なもの以上の存在になった? どうやって選んだ?

あまり知られていないことだけれど、ゴーグルが出来上がった夜、当時はブルズに所属していて、ロッカーが隣であり、親友の1人だったスコッティに見せたんだ。ゴーグルが完成したから試合で着けると言ったら、「見せろ」と言うので見せた。そうしたら、彼は大声で笑っていたよ。「こんなものを着ける勇気がよくあるな」、と言われた。私は、着けないといけないんだと言ったさ。それが、ゴーグルが完成した日の夜のことだ。ゴーグルが完成した夜に唯一笑ったのは、スコッティだけだった。

お気に入りのチームメイトは? その理由は?

殿堂入りした選手、将来的に殿堂入りする可能性の高い多くの選手とプレイしてきた。スコッティも素晴らしい友人の1人で、未だに皆と連絡を取り合っているけれど、1人をあげるとすれば、ルーク・ウォルトン。彼は気楽にやる性格で、人生においても心配しない性格だ。自分よりも年齢が下の選手で、そういう性格の選手は尊敬したよ。

そのウォルトンが、指導者としても成功すると思った?

とても気楽に考える性格だとは思ったけれど、指導者としての力もあると思った。ただ、これだけの成功を、こんなに早い段階で達成するとは思わなかった。

ラテンアメリカ地域出身の若い選手をどう思っている?

ラテンアメリカでも過ごしたことがあるが、向こうの選手の情熱、プレイに対する意識は驚くほどのレベルにある。それを続けられれば、きっとラテンアメリカ地域の選手の数は増えるだろう。ハートと情熱、それにプレイに対する素晴らしい姿勢を持っている。

今季のウォリアーズは素晴らしいチームだが、過去に例のないチームだと思う?

素晴らしいチームだし、彼らの試合をソファに座って見るのが大好きだ。ステフ・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーン、アンドリュー・ボーガット、(ハリソン)バーンズを含めた全員のプレイをね。今のチームの試合を見るのは大好きなんだ。ただ、私が現役時代のブルズと比較するのは極めてアンフェア。彼らのプレイを楽しもうじゃないか。彼らがNBAとファンに何をもたらしてくれるかを楽しもう。

マイケル・ジョーダンとの時間で、最も素晴らしかったことは?

彼の元チームメイトの1人として言うのなら、試合での彼は誰もが見たことがあるだろうけれど、本当の彼を知りたいなら、練習だね。フィル・ジャクソンがハードに練習するよう言ったからではなく、本当にとてつもなく熱の入った練習をしていた。マイケル・ジョーダンが、それだけ競争心の強い選手で、練習から競い合えば、それが実戦のようになると彼はわかっていたんだ。それだけ激しい練習だったから、喧嘩もしたし、叱責し合った。お互いの両親についてまで口にしていたからね。

ブルズでプレイしていた当時と比べてルールが変更されたことに触れていた。今季のウォリアーズは、あなたの現役時代でも対戦相手を支配できただろうか?

さきほども言ったように、私はウォリアーズのプレイを見るのが大好きなんだ。彼らの時代では、非常にユニークだと思う。どんな時代であってもね。私が現役のことはハンドチェックが可能な時代で、たとえばクレイ・トンプソンやステフ・カリーが、ボーガットやドレイモンド・グリーンがセットするスクリーンからプレイを決めようとする場合、我々の時代ではセンターやパワーフォワードの選手がチェックしていたので、おそらく倒されるのではないかと思う。昔と比べてフィジカルプレイが変わったと感じている。彼らならやり方を見つけるだろうけれど、当時に22連勝や23連勝はできなかったと思う。

あなたのキャリア全盛期の時代から、NBAはインターナショナルプレイヤーを迎え入れ始めた。当時のスター選手は、その時点ですでに知られていた国際的な選手と比べて、海外出身の選手についてどう思っていた?

私の時代では、ダーク(ノビツキー)が若手として入ってきたばかりで、(アルビダス)サボニス、(サルナス)マーシャローニスらもいたし、亡くなったドラゼン・ペトロビッチもプレイしていた。私たちは、“Wow”という感じだった。海外出身選手の才能は感じていたけれど、どういう選手かは、それぞれの選手が各チームでプレイするまでわからなかった。私の時代の選手たちは、非常に感心させられた。NBA全体の意見としては言いたくないが、私は感心した。それからのインターナショナルプレイヤーについては、皆のほうが知っているだろう。きっと5~10年後には、(NBAの)30~40%がインターナショナルプレイヤーで構成されていると思う。

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ