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[インタビュー] ダミアン・リラード 「自信もなくて、失敗するのを怖がっているようなら、クラッチを決めるチャンスもない」

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シュートを外すのを恐れてはいけない

 

――今季はホームで良い戦績を残せている。プレーオフ1回戦でホームコート・アドバンテージを得るのは重要? 昨季は敵地であっても勝てることを証明したが、チームの自信になっている?

「今季はホームで良い成績を残せているね。たしかにプレーオフ1回戦をホームで始めるのは、チームの目標の1つでもある。それに、昨シーズンにやってのけたように、僕らは、仮に敵地で1回戦を始めることになっても勝つ自信がある」

――ここ2シーズンのプレーオフで最も大事な教訓としていることは?

「何よりも大事なのは、集中を切らさないこと。昨季は敵地で2勝0敗とリードした。そこで気を抜きがちだけれど、僕らは集中を保った。優勝するのにベストな可能性が何なのかを見出すつもりだ。最高の教訓になったのは、サンアントニオ・スパーズとのシリーズだね。どういうバスケットボールをすれば優勝できるかを見せてもらった。手痛い経験になったけれどね」

――勝負所でプレーを決める“クラッチ”能力は、数少ない選手にしか備わっていない。あなた自身は、そういう能力をどうやって身につけたと思う?

「自信を持つこと。そして恐れないこと。シュートを外すのを恐れてはいけない。それが鍵だと思う。自分の力を信じないといけない。重要な局面で必ずプレーを決められる選手だと思わないといけない。自信もなくて、失敗するのを怖がっているようなら、クラッチを決めるチャンスもない」

――間もなく始まる今季のプレーオフに関して聞きたい。今季もウェスタン・カンファレンスの争いは激戦で、第7戦までのシリーズでは、1位から8位の全チームに勝つチャンスがあるように見える。どのチームと対戦しても厳しい戦いになるだろうが、1回戦で対戦したいと思うチームはある? 得意なマッチアップはある?

「質問にもあったように、ウェストの争いはタフ。どのチームとのシリーズになっても良いように準備しないといけない。ウェストの場合、すべてのチームが異なるタイプだから、どこと対戦しても試練には変わりはない。激しい戦いになるし、それはチームも理解して、受け入れているよ。特にどのチームと対戦したいとかはないね。どのチームと対戦することになっても、僕は構わない」

――現代のNBAではポイントガードの選手層が厚い。(ステファン)カリー、(ラッセル)ウェストブルック、(デリック)ローズと素晴らしい選手が揃っている。これからはサイズの小さいポイントガード(PG)にスポットライトが当たり、センター重視という流れは後退すると思う?

「誰かだけに光が当たって、誰かが注目されないとは思わないよ。素晴らしい選手は偉大な選手になる。今のリーグでは、PGの層が最も厚いだろうね。黄金期だと思う。どのチームにも優れたPGがいる。話題から遠ざかるポジションがあるとは思わないけれど、現代のリーグではPGの争いが激しいと誰もが理解しているよ」

 

劣勢から逆転する力は、リーグのどのチームよりもある

 

――今季のブレイザーズは、どのチームよりも二桁得点差から逆転勝利を収めている。この特徴は、定められたフォーマットでホームと敵地とで戦うプレーオフ戦をプレーする上で、チームが気負わなくて済む要因になると思う?

「そうだね。劣勢から逆転する力は、リーグのどのチームよりもあると思う。どういう状況だろうと、試合を作れる自信もある。それに勝てるという自信も当然ある。プレーオフを目前に控えた今、この力はチームの武器だよ」

――近い将来、アルバムを制作する予定はある?

「今年のオフにミックステープを制作する予定で、ひょっとしたら将来にアルバムを作るかもしれない。でも、何も決まった話ではないんだ。音楽は僕が情熱を傾けているものだけれど、第一はバスケットボールさ。プレーオフも始まるし、そこに集中している」

――今のチームの状態に満足している? そして自分のプレースタイルを考えた場合、今のチームスタイルに満足できている?

「今のチームスタイルには満足しているよ。5連敗したこともあって、状態が悪くなる可能性もあったけれど、問題点を把握できた。守備の方法を変えて、攻撃も以前よりタイトに変えた。今は4連勝中だし、レギュラーシーズンを終えるには理想的な形だと思う。プレーオフに向けて、今の状態に満足しているよ」

――守備について聞きたい。ここ数週間前まで守備に問題があったように見受けられた。特にウェス(ウェスリー・マシューズ)が(ダラス)マーベリックス戦で怪我をして抜けた影響は大きかったと思う。ウェスが抜けた穴をどうやって埋めた? 彼抜きでこれから戦わないといけないことについて、どう感じている?

「チームにとっては非常に大きな痛手。彼は攻守でチームの中心を担っていたからね。でも、アーロン・アフラロとアロンゾ・ジーをトレードで獲得できたのは大きい。ウェス・マシューズに代わる選手はいないけれど、チーム状況を改善させられる選手がいるのは助けになる。アフラロとジーは、そういう類の選手。すぐチームに馴染んだからね。僕らにはまだトップチームの力があると思うし、今シーズン良い結果を残せるとも思っている。この試練を受け入れてもいるし、自信を持ってプレーできているよ」

――もしボクシングファンなら、フロイド・メイウェザーJr.対マニー・パッキャオの対戦でどちらが勝つか予想してもらえる?

「ボクシングは好きだよ。パッキャオのことは尊敬しているけれど、僕はメイウェザーのファンなんだ。彼が無敗で、史上最強のパウンド・フォー・パウンド(階級を超越した最強の選手)だからではなくて、彼のボクシングに対する姿勢が好きでね。よく彼のトラッシュトークや、派手な見かけについていろいろと耳にするけれど、彼ほどの姿勢でハードに打ち込んだら、成功できると思う。彼の姿勢を心からリスペクトしているから、今回の試合でも彼が勝つと思う」

 

デリック・ローズと、スティーブ・ナッシュの大ファンだった

 

――テリー・ストッツHCは、NBAで通算250勝をあげた。彼から学んだことで最も大きなことは何?

「コーチの下でプレーするようになって、今の自分がある。時には選手を火中に入れるのも大事ということを学んだよ。初日からコートに出て、ミスをしてもプレーを続けるよう言われて、そこから成長できた。成長したい場合、ありのままを受け入れないといけないときもある。まずは痛い目にあうことも大事。それが僕にとっての1年目だった。苦しかったけれど、2年目に生きた。そして3年目も良い成績を残せた。そういうことをコーチから学んだ」

――先ほどクラッチについて話してくれた。あなた以外に、3人、クラッチショットを決められる選手をあげるとしたら、誰になる?

「ステフ・カリー、ジェイムズ・ハーデン、ケビン・デュラント。彼ら3人は、皆、自信を持って試合を決めるショットを成功させているからね」

――1年目に新人王を取って、2年目、そして今季もオールスターに選出された。モチベーションを保つのは難しいのでは?

「優れたチームメイトがいて、トップレベルで、最高のPGという評価を手にするには、日々の努力と結果が欠かせない。自分のレベルを高めて、チームの勝利のために力を尽くす。そうすることでエリートチームの仲間入りを果たせる。モチベーションを高めるのは簡単だよ。まだ優勝を経験していないし、達成していないことだって多い。まだまだキャリアの序盤時期だし、これから成長できるところは多い」

――ラマーカス・オルドリッジが手術時期を延期し、ロビン・ロペスが負傷から復帰したことは、プレーオフを戦う上でどのくらい重要?

「とても大きいよ。2人ともに先発ビッグマンだからね。LA(オルドリッジの愛称)はチームのベストプレーヤーで、無心にチームのためにプレーする。ロロ(ロペスの愛称)はチームを1つにしてくれている。攻守ともに、彼の存在は大きい。あまり評価されていないけれど、彼がチームのためにしてくれていることに感謝しているんだ。彼ら2人がいてくれるおかげで、チームは本当に助かっている」

――特に成長した点として、リバウンドがあげられると思う。重点を置いて取り組んできたのだろうか? それともNBAで揉まれて自然と成長したのだろうか?

「僕らはリーグでもディフェンシブリバウンドに優れたチームで、それはガードもリバウンドに力を入れているからだ。オフェンシブリバウンドを奪われるとビッグマンだけがリムを守るケースが多い。今季のチームはガード、それにほかのフロントコートの選手がすぐに戻って守ることを徹底しているから、良い結果を残せている」

――昨年アメリカ代表から落選したのは屈辱だった? もし再び候補に選出されたら、アメリカ代表としてプレーすることに関心はある?

「わからない。もし本当に僕の力が必要だと思ってくれていたら、去年の夏に選ばれていたはずだからね。今後についても、わからない」

――現時点ではロサンゼルス・クリッパーズとプレーオフ1回戦で対戦する可能性がある。彼らの強みはなんだと思う? また、それにどう対応するつもり?

「彼らのチームには優秀な選手が多い。クリス・ポール、ブレイク・グリフィン、デアンドレ・ジョーダン、ジャマール・クロフォード、J.J.・レディック、マット・バーンズを含め、ほかにも良い選手が多いから強いチームだね。攻撃以外では、ピック&ロールに対する守備が脅威。僕、ラマーカス、ロビンを中心に、僕らはピック&ロールを多用している。彼らの守り方はトラップに近くて、その罠をかいくぐるのは至難の業だよ」

――NBAで対戦している選手のなかで、昔は憧れの対象だったPGはいる?

「デリック・ローズと、スティーブ・ナッシュの大ファンだった。質問の答えをあげるとしたら、スティーブ・ナッシュになるね。ベイエリアで育った人間からすれば、サンタクララ大のスティーブ・ナッシュは超有名人さ。彼と対戦できたのは、クレイジーな経験だった」

――adidasの広告塔となって、先日は自身初のシグネチャーモデルを発表した。自身のモデルが完成したこと、そのときの感動について聞かせてくれる? 市場で手頃な価格に設定できたことは重要だった?

「とても特別なこと。シグネチャーモデルは誰もが持てるものではないからね。価格も大事だった。これまではクレージー・ライト・ブーストという素晴らしいシューズを履いていたけれど、もしこのシューズの機能を僕のモデルに投入するとなると、価格も高くなってしまう。皆が買いやすい価格にしたかったんだ。ブーストを加えなかったことで価格を抑えられたし、多くの人に手に取ってもらえて満足しているよ」

――クラッチの瞬間、あるいはプレッシャーがかかる瞬間、何を考えている?

「正直に言って、何も考えていない。たいていの場合、その瞬間に集中していて、外すという不安も、決められるかという不安もない。ただプレーして、決めるのみ。それだけさ。シュートを決めても、外しても、その瞬間を受け入れる。僕が自信を持てているのは、勝負のかかる大事な場面で恐れずシュートを打てるからだと思う」

翻訳:菅野貴之(Bond) Twitter: @10bond

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