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[杉浦大介コラム第51回]NBAオールスター2016に“選ばれるべきだった選手”

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Damian Lillard-Dirk Nowitzki

2016年のNBAオールスターゲームは、2月14日(日本時間15日)にトロント(カナダ)で行なわれる。アメリカ国外では初開催であり、引退を表明したコービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)にとっては最後になる“夢の球宴”。この晴れの舞台に、今年も豪華なメンバーが集まった。

ただその一方で、出場ロスターはすべてが満場一致の選出だったわけではない。例年のことながら、“選ばれるべきだった選手”が、多くのファン、関係者の間で挙げられている。今回はここで2016年最大の「Snub」を選出し、落選に至った理由、事情を分析してみたい。

デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)
平均24.0得点/7.3アシスト/4.4リバウンド

「今後にロスター枠が拡大されるなら、その枠は“デイミアン・リラード・スナブ・スポット”とでも呼ばれるべきだ。彼より落選が得意な選手はいない」。

ESPN.comのイスラエル・グティエレス記者がそう記す通り、リラードは2年連続でこのコラムにも登場することになった。

昨季はMVP候補にすらあげられるほどの成績を残しながら、当初の発表では意外にもオールスターに選出されなかった。代わりに平均得点で約4点も下回っていたクリス・ポール(ロサンゼルス・クリッパーズ)、故障離脱ゆえに出場試合数が14戦も少なかったラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー)が選ばれたことで話題沸騰。結局はコービーの故障による出場辞退によって繰り上げ出場することとなったが、その過程で、アダム・シルバー・コミッショナーが出場枠拡大に言及する事態にまでなったのは記憶に新しい。

あれから1年――。今季のリラードはキャリアハイの平均得点、アシストをマークし、下馬評の低かったブレイザーズをプレイオフが争える位置に導いてきた。それにもかかわらず、またもオールスターに選ばれなかったのだから、“落選の常連”という形容も大げさには感じられない。

もっとも、今季は仕方ない部分もある。まず所属するブレイザーズは前述通りに健闘しているとはいえ、リーグ有数の強豪だった1年前とは違い、プレイオフ争いでも当落線上にいる中堅チームにすぎない。

ファン投票のフロントコート部門で衰えの激しいコービーが選ばれたがゆえに全体の枠が足りなくなった感もあるが、たとえ成績では劣っていても、引退間近のコービーを球宴で見たいというファンの気持ちは理解できる。また、ガード部門でリザーブとして選ばれたポール、ジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)、クレイ・トンプソン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)はそれぞれ所属チームを上位に導いており、資格は十分にあるようにも思える。

そういった背景から、様々な形で物議を醸した昨季ほどの騒ぎにはなっていない。ただ、たとえそうだとしても、オールスターに関してリラードは不運に見舞われ続けている印象は拭えないのも事実ではある。

近年は出場枠拡大の噂は消えず、シルバー・コミッショナーが遠くない将来に実施してももう不思議はなさそうではある。そうなっても、さすがに“リラード枠”などと名付けられはしないだろう。あるとすれば、コービーのような選手に適応される“レジェンド枠”だろうか。

しかし、改革が本当に実施されるとすれば、一部のポジションにスター選手が集中し、影響を受け続けたリラードの例がそのきっかけとして語り継がれることになるのではないか。

ダーク・ノビツキー(ダラス・マーベリックス)
平均17.6得点/6.6リバウンド/1.7リバウンド

リラードの項で言及した通り、オールスター選出に所属するチームの成績が密接に影響してくるのは周知の事実である。だとすれば、開幕前の評判は低かったにもかかわらず、ウェスタン・カンファレンスで現在6位につけているマブスから誰も選出されていないのを寂しく思うNBAファンは多いはずだ(プレイオフ圏内で出場なしはマブスとメンフィス・グリズリーズのみ)。

特にマブスの大黒柱のノビツキーは、18年目の今季も衰えを感じさせないプレイを続けている。リザーブに選ばれたラマーカス・オルドリッジ(サンアントニオ・スパーズ)よりも、ノビツキーのほうがインパクトは上だろう。

振り返れば1年前、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)のパスを受けたノビツキーがアリウープを決めたシーンは、昨季オールスター屈指の名場面だった。彼のような役者は、やはり大舞台に不可欠。長くリーグを引っ張ってきたノビツキーとコービーの球宴での競演を、もう一度見てみたいと感じていたファンは多いはずだ。

ただ、チーム成績に話を戻せば、カンファレンス2位の勝ち星に貢献してきたオルドリッジのほうが選出に値するという意見ももっともである。また、現実問題として、37歳のノビツキーには1週間のオールスターブレイクは貴重な休みになる。今後のプレイオフ争いを考えて、実はエースの落選にそれほど文句のないマブスファンは意外に多いのかもしれない。

パウ・ガソル(シカゴ・ブルズ)
平均16.9得点/10.9リバウンド/3.3アシスト/2.0ブロック

イースタン・カンファレンスはほぼ順当な顔ぶれが揃ったが、1つだけサプライズだったのは、ブルズを支えてきたガソルが外れたことだった。

イーストのフォワード部門でカーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス)にわずか360票及ばず、2年連続先発出場はならず、その時点でも選出自体は確実と思われたが、意外にもリザーブとしても選ばれなかった。

今季、平均16得点、10リバウンド、3アシストをクリアしているのは、デマーカス・カズンズ(サクラメント・キングス)とガソルだけだ。ブルズ内ではジミー・バトラー、デリック・ローズの陰にやや隠れているとはいえ、総合的な貢献度は見逃せない。その評価の高さはクリス・ボッシュ(マイアミ・ヒート/平均19.1得点、7.4リバウンド、2.4アシスト)と同等かそれ以上だ。それでも落選したのは、一般的にクリーブランド・キャバリアーズを追う存在とみなされながら、ブルズがここまでやや期待外れの成績に終わってきたことが響いたのだろう。

しかし、2月9日(同10日)になって、意外な形でガソルはオールスターのメンバーに付け加えられた。ブルズの同僚バトラーが5日のデンバー・ナゲッツ戦で左ひざを負傷。復帰まで3~4週間と診断され、オールスターへの出場も辞退を余儀なくされた。シルバー・コミッショナーは代役にガソルを指名し、スペイン人ビッグマンにとって6度目(ブルズでは2度目)の球宴出場が決まったのである。

ほかにもケビン・ラブ(キャブズ)、アル・ホーフォード(アトランタ・ホークス)、ケンバ・ウォーカー(シャーロット・ホーネッツ)といったスナブ候補は存在するが、“イースタン最大のスナブ”と目されたガソルが選ばれたことに異論のあるファンは少ないはずだ。結果として、今季のイーストは多くの人が納得できるメンバー構成になったと言っていい。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

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著者
杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。