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[杉浦大介コラム第48回]2015-16 序盤戦アウォード

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Stephen Curry vs LeBron James

2015-16シーズンも約1/3を終えた今回は、序盤戦を振り返り、MVP、新人王、最優秀守備選手、MIP(最優秀躍進選手賞)を選んでいきたい。すでに様々なドラマが生まれているシーズン序盤戦の中で、最も輝いたのは誰だったのか?※文中の成績は現地1月3日時点。

MVP

ステフィン・カリー
所属:ゴールデンステイト・ウォリアーズ
今季成績:平均29.7得点(FG 50.9%、3P 44.2%、FT 90.2%)、6.4アシスト、5.5リバウンド

序盤戦の話題を独占したベストチームのベストプレイヤー。連覇を狙うウォリアーズの大黒柱としてNBAを席巻するカリーは、人気・実力の両面で今やリーグ最高級のスーパースターとなった。

初のMVPを受賞した昨季は、実はジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)のほうがMVPに相応しいのではないかという声もあった。しかし、今季ここまでに関しては、カリーが“リーグで最も価値のある選手”であることに異論のあるファン、関係者はほとんどいないだろう。

FG、スリーともに成功率を昨季より向上させ、特にジャンプシューターでありながらFG成功率が50%を超えているのは見事。平均得点を去年より6点近くもアップさせていることから、MVPだけでなく、MIP候補にまで名前が挙がっている。何より、そのクリエイティブなプレイで全米のファンを沸かせ、各地のアリーナを満員にする立役者となってきたことは特筆されて良い。

「僕たちのオフェンスはステフを中心に盛り上がっていくんだ」。

同じくMVP候補の一人に挙げられるドレイモンド・グリーンの言葉を聞くまでもなく、カリーのチーム内の重要度は計り知れない。

開幕24連勝と突っ走ってきたウォリアーズだが、スティーブ・カー・ヘッドコーチは依然として腰痛の療養中で、主力のハリソン・バーンズとアンドリュー・ボーガットが連勝中の24戦中、合計14戦を欠場するなど、誤算も少なくなかった。そんなウォリアーズがブルズの持つシーズン72勝の最多勝記録を破った場合……少々気が早いが、絶対的なエースとして君臨するカリーが、NBA史上初の満場一致(=全1位票を獲得)でMVPに選ばれても不思議はない。

新人王

カール・アンソニー・タウンズ
所属:ミネソタ・ティンバーウルブズ
今季成績:平均16.1得点(FG 52.8%、3P 35.7%、FT 84.5%)、1.1アシスト、9.4リバウンド

2015年ドラフトの上位指名組は高レベルと評判である。全体1~4位の選手は現時点で全員平均11得点以上をマーク。特にタウンズ(全体1位指名)、クリスタプス・ポルジンギス(ニューヨーク・ニックス/全体4位指名)、ジャリル・オカフォー(フィラデルフィア76ers/全体3位指名)という3人のフォワードは、それぞれ早くも所属チームで主力と認められるようになった。

中でもウルブズのインサイドの要として立場を確立したタウンズは、全ルーキーの中で1位の平均リバウンドをマーク。12月26日までの6戦中4戦で20得点以上をマークするなど、オフェンス面でも安定感を発揮している。その完成度の高さは評判通り、いや評判以上で、序盤戦の新人王に相応しい。

生み出したインパクトの大きさでは、そのタウンズをもしのぐポルジンギスは、平均ブロックではルーキー1位(2.00)。ポテンシャルの大きさは誰の目にも明らかで、ダーク・ノビツキー(ダラス・マーベリックス)と比較する声も日増しに大きくなっている。

「インサイド、アウトサイドの両面でNBAに準備ができているという意味で、現時点ではタウンズがポルジンギスより上。特にインサイドでのプレイには差がある。ただ、将来的な伸びしろの大きさではポルジンギスが上回るかもしれない」。

12月16日のニックス対ウルブズ戦の際、あるスカウトは筆者にそう語ってくれた。ポジションの被るこの2人が、今後にライバル関係を構築していく可能性は十分あるだろう。

また、チームは泥沼の低迷を続け、自身もコート外で多くのトラブルに見舞われてきたとはいえ、オカフォーの得点力(平均17.3得点はルーキー1位)は魅力たっぷり。巧みなパスワークでファンを魅了するディアンジェロ・ラッセル(ロサンゼルス・レイカーズ/全体2位指名)の将来も楽しみだ。

この4人がさらにNBAの水に馴染んでいけば、今季の新人王争いは近年有数の高水準なものになっていくかもしれない。

最優秀守備選手

カワイ・レナード
所属:サンアントニオ・スパーズ
今季成績:平均20.8得点(FG 51.3%、3P 49.6%、FT 88.4%)、2.8アシスト、7.2リバウンド、2.0スティール、0.8ブロック

ウォリアーズの陰に隠れている感はあるものの、実はスパーズも素晴らしいスタートを切っている。特にディフェンスは上質で、100ポゼッションあたり92.9失点という数字はリーグ1位(2位ウォリアーズは97.8失点)。この堅守の中心となっているのが、昨季ディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたレナードだ。

カリーとマッチアップできる敏捷性、ケビン・デュラント(オクラホマシティ・サンダー)やレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)をガードできるサイズ、ウィングスパン、強さを兼ね備えた選手は、レナード、アンドレ・イグダーラ(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ポール・ジョージ(インディアナ・ペイサーズ)など、リーグ内にごくわずかだ。その一人であるレナードに関しては、普段は辛口のグレッグ・ポポビッチHCも称賛を惜しまない。

“スコッティ・ピッペン以来最高のペリメーター・ディフェンダー”――。一部からそう呼ばれるようになったレナードが、今季もディフェンダーの最高殊勲賞を勝ち取る可能性はかなり高そうだ。

また今季はオフェンス面でも向上し、平均得点は初めて20の大台を突破している。ティム・ダンカン、トニー・パーカー、ラマーカス・オルドリッジ、マヌ・ジノビリとスター揃いのスパーズでも、今ではレナードこそが最も必要不可欠な選手といっても大げさではあるまい。

MIP

アンドレ・ドラモンド
所属:デトロイト・ピストンズ
今季成績:平均18.1得点(FG 51.8%)、0.9アシスト、16.1リバウンド、1.8スティール、1.5ブロック

平均得点を昨季の6.8から今季の21.0まで大きく引き上げたC.J.・マッカラム(ポートランド・トレイルブレイザーズ)もMIP有力候補ではあるものの、ただ、その働きがチームの躍進に大きく影響している点を買って、ここでは4年目にして怪物的な平均リバウンドを叩き出しているドラモンドを選びたい。

12月26日のボストン・セルティックス戦で22得点、22リバウンドをマークし、すでに今季5度目の“20-20”を達成。老舗『スポーツ・イラストレイテッド』誌に特集が掲載されるなど、22歳のビッグマンは徐々に全国区になりつつある。

このままいけば、ピストンズの選手としては2009年のアレン・アイバーソン以来となるオールスター選出も有望だ。平均16リバウンド以上をシーズンを通じて保てば、1997年のデニス・ロッドマン以来の快挙にもなる。

まだフリースロー(今季36.7%)という大きな弱点もあるが、そのスケールの大きさは魅力。昨オフにフリーエージェントとなりミルウォーキー・バックスへ移籍したグレッグ・モンローを引き留めず、ドラモンドに屋台骨を託したピストンズの選択は正解だったのだろう。

その他、上記のマッカラム、スイス出身の若武者クリント・カペラ(ヒューストン・ロケッツ)、あるいはカリーをMIP候補に挙げる声もある。後半戦でもさらに多くのフレッシュな選手が飛び出し、MIP争いをより興味深いものにしてくれることを望みたいところだ。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

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杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。