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[杉浦大介コラム第36回] 混迷のイースト、プレーオフ8位シードを得るのはどこだ!?

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イースタン・カンファレンスのプレーオフ下位シード争いは、今季も勝率5割以下のチームがひしめく低レベルのレースになっている。

現地3月23日時点で、6位以下はすべて負け越し成績。いわゆる“借金”10前後のチームですらプレーオフ進出の可能性を残しており、“脱落するほうが難しい”と揶揄される事態になった。ただ、多くのチームにチャンスがあるだけに、シーズン最終週まで目の離せない戦いが続きそうではある。

■イースト のプレーオフ争い(成績は3月23日の試合終了時点)
6位 バックス/34勝36敗/ゲーム差なし/残り12戦
7位 ヒート/32勝37敗/1.5ゲーム差/残り13戦
8位 セルティックス/31勝39敗/1.5ゲーム差/残り12戦
9位 ホーネッツ/30勝39敗/0.5ゲーム差/残り13戦
10位 ペイサーズ/30勝40敗/0.5ゲーム差/残り12戦
11位 ネッツ/29勝40敗/0.5ゲーム差/残り13戦

6位のバックス、7位のヒートが、圏外に転落することも考えられなくはない。特にバックスは過去10戦2勝8敗と、中盤までの勢いを失なってしまった。ただ、残り12戦のうち8戦をホームでプレーできるバックス、さらには経験豊富な選手が揃ったヒートは、終盤の大崩れは何とか避けられるのではないか。

だとすれば、プレーオフ進出最後の椅子である8位を争うのは、セルティックス、ホーネッツ、ペイサーズ、ネッツとなる。2ゲーム差内にひしめく4チームの中で、8番目のイスを確保するのはどこか。それぞれの状況を掘り下げながら、レースの行方を占っていきたい。

■ボストン・セルティックス

昨年12月にラジョン・ロンドをダラス・マーベリックスに、今年1月にジェフ・グリーンをメンフィス・グリズリーズにトレードした時点では、完全な再建体制に入るかと思われた。しかし、その後もしぶとくサバイブを続け、特にトレード期限直後の2月23日以降から11勝6敗でプレーオフ圏内に浮上した。マーカス・スマート、ケリー・オリニク、ジェイ・クラウダーといった若手を巧みに使いこなしてきた38歳のブラッド・スティーブンズHCを賞讃する声は多い。

「すべてはブラッドから始まった。彼のおかげでみんなが一丸となり、互いを信じられるようになった。このチームはまるで家族のように結束が固く、そのまとまりがコート上のプレーに影響しているんだと思う」。

エイブリー・ブラッドリーがそう語る通りのケミストリーで、セルティックスは8位以内を死守できるかどうか。トレード期限直前の移籍加入以降は平均21.4得点をマークしていたアイザイア・トーマス(腰痛で離脱中)が得点源として復帰すれば、あとは若いがゆえのスタミナで最後までのりきれるかもしれない。

ただ、4月中にもクリーブランド・キャバリアーズ、トロント・ラプターズと2戦ずつを残すなど、終盤のスケジュールは決して容易とは言えない。プレッシャーも増す厳しい戦いの中で、復活を目指す名門のケミストリーが再び試されることになる。

■シャーロット・ホーネッツ

昨季43勝をあげたチームがオフにはフリーエージェントでランス・スティーブンソンを獲得し、その時点では多くの関係者からダークホースに挙げられた。しかし、ケンバ・ウォーカー、アル・ジェファーソン、スティーブンソンというシャーロット版の“ビッグスリー”は機能せぬまま。現時点でプレーオフが危ぶまれる位置にいることは期待外れの結果に違いない。

とはいえ、終盤に向けて好材料も少なからずある。シーズン中に獲得したモー・ウィリアムズが、3月は平均18得点、7.5アシストと好調。ひざのケガから復帰したウォーカーも過去4戦すべてで15得点以上を挙げている。このガードデュオが上手く噛み合えば、低レベルの争いの中で8位に食い込んでも不思議はない。

2年連続プレーオフ進出となれば、2004年にシャーロットにチームが復活して以降では初めてのこと。とかく存在感の薄さが指摘されるチームにとって、勝利の実績を重ねる意味は大きい。ここで挙げた4チームの中では、ホーネッツは高齢軍団のネッツと並び、どうしてもプレーオフに出ておきたいチームのはずである。

■インディアナ・ペイサーズ

開幕前にランス・スティーブンソンがホーネッツに移籍し、ポール・ジョージが右足骨折で戦線離脱した時点で、今季の上位進出は絶望の空気が漂った。実際に1月23日まで15勝30敗と低迷した際には、ドラフトロッタリー行きは間違いないかと思われた。

しかし、自慢のディフェンスと司令塔ジョージ・ヒルの統率力を支えに、3月12日までの15戦で13勝。ここにきて6連敗と再び失速したが、ジョージが予想以上に早く回復し、今週中にも復帰の可能性があるのは心強い。

ジョージの帰還で勢いを取り戻せば、8位に滑り込むことは十分に可能だろう。守備力は健在だけに、経験豊富なペイサーズが上がってくれば、プレーオフではアトランタ・ホークスやキャブズにとっても厄介な存在になりそうである。

ただ、ジョージがカムバック後すぐにかつてのように貢献できる保証はないのも事実だ。エースがどのタイミングで戻るか、そして復帰後にどんなプレーができるかが、今後のペイサーズにとってのポイントとなる。

■ブルックリン・ネッツ

シーズン最後の13戦中9戦はホームで行なわれることを考えれば、まだ十分にチャンスがあるようにも思える。しかし、今季のネッツは地元アリーナで12勝20敗と不振。しかも4月3日以降にラプターズ、ホークス、ポートランド・トレイルブレイザーズ、ホークス、ワシントン・ウィザーズと強豪ばかりと対戦する5試合(ホークスとの1戦目以外はすべてホーム戦)が待ち受けているだけに、楽観はできない。

「地元で勝てないことに落胆している。理由についてはいくつかセオリーがあって、私自身にも考えはある。ただ、それを明かすつもりはないよ」。

23日のセルティックス戦に敗れた後、ライオネル・ホリンズHCが言及した“ホームで弱い原因”とは何なのか。

まだ移転4年目のブルックリンのファンは必ずしも熱狂的とは言えず、試合中は静まり返っていることも多い。相手チームにとってやり難い場所ではないことも一因だろう。それにしても負け過ぎで、プレーオフ進出には地元で勝率を上げることが必須条件となる。

セルティックス戦まで3試合連続で25得点以上と、主砲ブルック・ロペスはここに来て復調しつつある。このロペスを中心に、終盤戦ではブルックリンのファンを少なからず沸かせるゲームができるかどうか。

文:杉浦大介  Twitter: @daisukesugiura

著者
杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。