NBA

C・ボッシュの“ボイス・オブ・ザ・ファイナル”

Sporting News Logo

最終回:山あり谷あり

昨夜の試合を見て、いろいろな記憶が頭を過った。良いことも、悪いことも。僕は、ファイナルで良い面も悪い面も経験している。

2011年のファイナルでマブスに負けたとき、あまりにも多くのことを考えた。まず始めに、自分たちが負けたことはフェアではないと思った。チームとして乗り越えてきたこと、僕個人が乗り越えてきたことを考えたら、腹が立った。それでも、当時2歳だった娘に「悲しまないで」と言われたから、シャワーを浴びて気持ちを切り替えないといけなかった。自宅に戻ってからは、朝日が昇るまでベランダに座りながら考え込んだ。頭の中ですべてを繰り返しリプレーする必要があったんだ。

何が起こったのか? 何故負けたのか? もっと違うことができたんじゃないか?
ロックアウトになる可能性もあったから、次のシーズンがあるかも定かではなかったのでね! ダラスは僕のホームタウンだから、余計に辛かった。ダラスで勝って2勝1敗になったとき、優勝できると思った。でも、そんなことを考えてはいけないんだ。あまりにも痛い形で、僕はそのことを学ばなければならなかった。

幸運にも、僕は婚約をしていたから、その年のオフに結婚式を挙げる予定を立てていた。次の月には式を挙げる予定だったから、ほかに集中しないといけないことがあったんだ。妻にとっても、僕にとっても、イライラして、家の中を行ったり来たりするのは不条理だ。式の後で新婚旅行に出かけて、家に戻ったとき、次のシーズンで必ず(優勝を)やり遂げると固く誓った。

実際に優勝を経験したときの高揚感といったら、現実のものとは思えないくらいだった。試合時間がゼロになった瞬間、この上ない安堵感と満足感を得た。長いシーズンがやっと終わって、山の頂に辿りつけ、自分の夢が叶ったという満足感を得るんだ。

それから1時間はアドレナリンが出続けているような感じになる。過酷なマラソンのようなシーズンが終わったと認識する。キャリアの中で最も難しい試合を乗り越えたと実感する。チームメイト、コーチと抱き合って、彼らと特別な瞬間を共有し始める。本当に信じられない瞬間だよ!

トロフィーを抱えて、(優勝記念の)帽子を被ってステージに上がり、ロッカールームでは甘美なシャンパンを味わう。生涯忘れない思い出だけれど、一瞬にして過ぎ去ってしまうんだ。それから疲労感が出てきて、少し休息を取りたいと思うようになるのさ!


第10回:追い詰められたときに何をすべきか

(第5戦は)とても厳しい戦いだった。それでもクリーブランドは決して諦めないだろう。第6戦は、彼らにとって今季最も厳しい試合になる。

ホームに戻って、ファンから力をもらえる環境は助けになる。だが、ロールプレイヤーの安定したプレーも必要になる。シリーズを通して数人の選手は活躍を見せてはいるが、ゴールデンステイトの方は、ここ何戦かでチームとしてまとまってきた。第5戦でJ.R.・スミスは14得点を記録したが、フィールドゴール15本(3ポイントシュート14本)を打って残した数字だ。これではクリーブランドにとって厳しい。重要な試合でゾーンから外れないことが大事なんだ。長いシリーズ中に敵地で戦い、ホームで優勝を決められる可能性を期待するのなら、いかにゾーンから外れないようにするという経験が違いを生み出す。シリーズ終盤では、チームがまとまることが重要になるからだ。

2013年のファイナル(スパーズが3勝2敗で迎えた第6戦)では、僕らは自信を持ってホームでの試合に臨んだ。誰もがシーズンを通してホームコートアドバンテージを得るために戦う。皆、ホームでの試合はアドバンテージになると口を揃えて言う。仮に自分たちが思い描いていた形とは違ったとしても、ホームの恩恵を受ける。もし、ホームであと2勝あげれば優勝できると言われたら、確実にそのチャンスを生かすだろう。前のシーズンで優勝を経験していたこともあり、僕らはシリーズ中のアップダウンに悪影響を受けずに済んだ。すべてを出し尽くして、“何がなんでも勝つ”というメンタリティと共に最高の形でシリーズを締めくくれた。

ここまで来たら、諦めるわけにはいかないと気がつくはずだ。

ゴールデンステイトは、決して気を緩めてはいけない。すべてが終わったと考えるときではないんだ。特にクリーブランドに戻っての試合なわけだからね。(優勝までは)まだ1勝が必要なわけで、毎日の準備の中で緊張に打ち勝ち、成すべきことを成さなければならないのだから。


第9回:スモールに切り替えるか、それとも家に帰ることになるか

最初にウォリアーズがスモールラインアップで試合に臨んだのを見た瞬間、心配になった。僕は戦術、そしてメンバーを変えない方を好むからだ。ただし、変更したことで彼らはペースを上げた。成功するか、失敗するかは別にして、ボールを速く出す。彼らはミスマッチから2、3本イージーなトランジションダンクを決めていた。きっと、「守って、それからボールを前にプッシュして、どうなるかやってみよう」とでも話していたのではないだろうか。

ウォリアーズは、どんな状況でも自分たちの試合をするというアイディアを持っていた。スモールラインアップに順応するには、シーズンを通して慣れる必要がある。それだけ時間がかかることだ。対話、映像分析によって、何をすれば良いかがわかる。個人的な意見だけれど、僕は自分の役割をこなせているかを知りたいタイプで、可能な限り役割をシンプルにしたい。昨夜のように第4戦での勝利が絶対に必要な状況では、頭の中を明確にしておきたいと思うもの。仮に自分の役割がブロックとリバウンドなら、それを実行する。(アンドリュー)ボーガットが先発を外れたことで、ステフが動けるスペースが増えて、(マシュー)デラベドバの守備に対応するコツを掴んだ。(ドレイモンド)グリーンと(アンドレ)イグダーラも思いきって得点を決めていた。(ティモフェイ)モズゴフがイグダーラとの距離を空けてしまった場面もあり、シュートを決められ始めた。これによってカリーが動くスペースを得た。

ゴールデンステイトのスタイルは、ボールを回すことで構成されている。ドリブルを多用するのではなく、ボールを速く回す。絶えず、素早い決断を下していく。試合中、何度かのポゼッションで見られたことだが、「自分が打てないならボールを回そう」という意識が感じられた。3回、4回もボールをコートの端から端まで回されたら、防ぐのは難しい。


第8回:デリーの伝説

目下、素晴らしいことが起こっている。こんなストーリーは、毎年のファイナルで起こるわけではない。第1戦ではわずか9分の出場に終わった男は、カイリーのバックアップを務めるだけではなかった。気がつけばどうなっていたと思う? 今度はシーズンMVPを抑えなければならないだって?

彼は周囲からの期待以上のプレーをしているだけではない。その活躍から、今ではゴールデンステイト(ウォリアーズ)もしっかりと対策を練らなければならない存在になった。ひょっとしたら、ウォリアーズはオフェンスの流れを壊さず、しかもステファン・カリーへの執拗な守備を少しでも軽減させる方法を見つけるため、対策を練る時間を取っているかもしれない。オフェンスでも、彼は非常に良いプレーをしている。ばかげたことのように聞こえるかもしれないが、彼は、自分のショットがどの地点から決まるかを把握し始めている。チームが勝利を収めるために、何をしなければならないかを理解している。それこそが、クリーブランドを危険な存在にしているのだ。

優勝するチームには、(マシュー)デラベドバのような選手がいる。もしシェーン・バティエーがポイントガードだったら、デリーのような選手だっただろう。デリーもシェーンのような存在だ。シェーンはドリブルに優れた選手でも、多くの役割をこなした選手でもなかった。それでも、コートに入った瞬間から、彼は守備を徹底する。リバウンドを奪い、シュートを決める。自分の能力を生かす選手だ。だからこそ彼は脅威。自分の役割をしっかりとこなし、自分にやれないことの境界線を越えたりしない。ただ、彼にやれることに関しては、非常に優秀な選手だ。

デリーのケースの場合、彼は自分の能力を理解している。フロアに出て、相手をかき回し、リズムを狂わすことに長けていると理解している。ファイナルのような試合では、こういうタイプの選手が必要になる。彼、(ティモフェイ)モズゴフ、トリスタン・トンプソンが試合のテンポ、プレーの加減、実践すべきプレースタイルを決めている。もし明日の試合でウォリアーズがキャブズよりも先にルーズボールを奪いに飛び込めなければ、問題が生じるだろう。いったい誰が真っ先に飛び込むのか? もしデリーが再びコートで相手を打ち負かすようなら、ウォリアーズにとっては長い夜になるはずだ。


第7回:燃え上がるキャブズ

今のクリーブランド(キャバリアーズ)から感じられるものは、旺盛なエネルギー、そして熱だ。

今はキャブズのほうが情熱で勝っている。仮にゴールデンステイト(ウォリアーズ)が試合中リードを奪ったとしても(第3戦では見られなかったことだが)、遅れを取り戻そうとしているように感じられてしまうだろう。キャブズはボールに食らいつき、ブロックで相手のショットを叩き落とし、リバウンドも奪い、ウォリアーズに対抗している。

その気合の入り方は、彼らのハドルを見ても明らかだ。彼らは会話を通じ、答えを見出そうとしている。今こそチーム全員で話をしなければならない時期なんだ。ときには、声を荒げることを避ける選手もいる。でも、レブロンは躊躇わずに選手に声を荒げている。彼が気にするのは優勝を勝ち取ることだけ。そのためならチームメイト、もしくはコーチにも声を荒げる。そうしなければならないときは、たとえチームメイトであっても、強い言葉をかけなくてはならない。今のところ、ウォリアーズから同じような姿は見られていない。彼らには今の状況を挽回する力はある。ただ、困難を乗り越えるには、キャブズが実践しているような、小さなことが肝心なんだ。


第6回:ショットがうまくいかないときに立ちはだかるもの

ショットが不調なのは実にフラストレーションが溜まるものだ。普段シュートが得意ならなおさらね。ステファン・カリーはワイドオープンのショットを決めていたが、大事なところで外してしまった。これは本当に不満の残る結果だったことだろう。とはいえ、これはバランスの問題だ。3ポイントシュートを40%決める選手ならば、10本連続で決めることもあれば、14本連続で外すことだってある。精神的に自信を持ち、自分らしくあることが重要だ。時にはうまくいかないこともあるだろう。ただ、カリーのような偉大なシューターは、おのずと良いシュートが戻ってくるものだ。

自分の場合、チームメイトに僕のプレーを作ってもらうようにしている。ノーマークのショットを打ちたいと思うだろうけど、それはファイナルのような舞台では難しい。だから、自ら良い位置を見つけ出し、自信を持ってシュートを放つしかないんだ。時には、しばらく時間を置くべきかもしれないし、一度ドリブルを突いてからプルアップシュートを打つことで、リズムを取り戻すことができるかもしれない。シュートが入らないときは、とにかく良い感覚を取り戻すことが大切なんだ。このシリーズではほとんどのショットが相手のマークを受けながら放つことになるだろう。だからこそ、チーム一丸となってプレーすることが特に重要なんだ。シュートを失敗することは試合中いつでも起こりえる。ゴールデンステイトとしては、第3戦でその点を再確認する必要がある。

僕もシュートがうまくいかないことがこれまで何度もあった。2013年にインディアナと対戦したときは、全然ダメだった。たしか平均8得点くらいしかあげられなかった。何をやってもダメだった。それで第7戦の前にオフの日が1日あったんだけど、僕はみんなにこう言ったよ。「みんな、僕はジムに行ってシュートの練習をしてくるよ」とね。

それが僕が知っている唯一の方法だ。ジムに行って、リズムを取り戻す方法を探すんだ。もちろん精神的に自信を取り戻すことも大事だけど、僕は結果を求めるタイプの人間だから、とにかくリムにボールを放ち、リズムを見つけ出すようにする。そのおかげで、第7戦ではうまくシュートを打つことができて、不満を過去のものにすることができた。

ファンの前でシュートスランプから抜け出すのは大変なことだ。人々はシュートスランプに陥っていることをすでに知っているからね。プレッシャーもかかるだろう。僕も悪いゲームをしたときは、自分が人からそう見られていると思い込んでしまう。けれども、第3戦に臨むにあたって、カリーとゴールデンステイトは、自分たちがここまで辿り着いたという事実を信じなければならない。リバウンドが強い選手が3人もいるチームが相手だと、シュートを打つとき、それは無駄なシュートではなく、良いシュートである必要があるんだ。


第5回:なんという試合

第1戦ではクリーブランド(キャバリアーズ)の問題だったことが、第2戦ではゴールデンステイトに起こった。今回アイソレーションを多用していたのがウォリアーズだったからだ。彼らは、オフェンスのリズムを取り戻す方法を見つけないといけない。これは、対戦するチームだけに集中できるプレーオフでは難しいことなんだ。ウォリアーズに必要なのは、キャブズのマークを分析して、見極めること。キャブズのマークは非常に良かった。トリスタン・トンプソンの動きは素晴らしく、ガードへの守備も非常に良かった。キャブズにとって頼りになるスウィッチを、ウォリアーズが攻略できるかが鍵になるだろうね。

これがレギュラーシーズンの試合なら、古典的な方法でマークを外せる。ボールを回して、3ポイントシュートを決めれば良い。でも、対戦相手を徹底的に分析できるファイナルでは異なる。相手の傾向を見極め、ベストプレーをさせないようにもできる。それに、今のウォリアーズはベストプレーを実行できていない。(ステファン)カリーは、普段なら決めるショットを何本も外していたからね。それでも、ウォリアーズには敵地で勝てる力がある。経験豊富なスティーブ・カーHCは、これまでに達成してきたこと以上に敵地で勝利を収めることが難しいと、選手に伝えるだろう。いずれにしても、ウォリアーズが優勝するには、敵地で勝利をあげないといけない。そして、彼らもそのことを理解している。


第4回:キャブズが挽回するには

2013年のファイナルで(サンアントニオ)スパーズと対戦したとき、第1戦を落として0-1になった僕らは、お互いを信じて、試合以外のことで影響を受けないようにした。

幸運にも、その前の年に優勝できたので、どういう気持ちで試合に入れば良いかはわかっていた。その経験を生かして、そして辛いシーズンを乗り越えてファイナルにたどり着いたことで、気持ちを保てた。常に劣勢を強いられた僕らにできたことは、集中して毎試合に臨むことだった。次の試合に勝てなければ、もう終わりという気持ちで臨んだ。そういう状況を繰り返し経験していたので、目先の試合を考えることしかできなかった。

レブロン(ジェイムズ)は、早い段階からチームメイトを攻撃に参加させるはず。第1戦の映像を何度も見直して、ウォリアーズの守備の穴を見つけたはずだ。彼もアグレッシブにプレーして、得点をあげないといけないけれど、カイリー(アービング)が離脱した以上、ほかのチームメイトもペリメーターにアタックする必要がある。ウォリアーズからすれば、レブロンがアシストではなく、得点をあげるのは問題ないと考えているようだからね。

第1戦のポイントにもあげたけれど、キャブズが成功を収めるには、レブロンが10アシスト以上を記録すること。その方法を見出すことが、何よりも重要になる。


第3回:負傷

カイリーの心情を察する。

今回のような怪我の悪化は、バスケットボール云々でも、優勝云々でもなく、その選手のキャリアに関わることだ。

とにかく休まなくてはならない。コートに戻るには、健康な状態に戻さなくていけない。彼にとっても大きな出来事だろう。やっとの思いでここまでたどり着いたのに、パフォーマンスレベルの低下ではなく、怪我で今季を不意にしてしまったのだから。

今の状況を考えると、とても辛い結果だけれど、できることは何もない。どれだけ難しくても、怪我のことは頭から離さなければならない。1人のチームメイト、そして1人の友人として、皆が彼の近くにいてあげないといけない。選手にとっては、まだシリーズは終わっていないんだ。コーチングスタッフはゲームプランを変更し、選手も気持ちを切り替えないといけない。全員が一丸となって先に進まないといけない。(マシュー)デラベドバは、「俺が先発だ」という気持ちで前に立たないといけない。今まではセカンドユニットとして起用されていただろうけれど、これからは相手の戦力分析を徹底的にやる役割を担わなければいけない。そして、ステファン・カリー、クレイ・トンプソンの傾向を掴んで、抑えないといけない立場に立つ。

チームメイトの立場を考えるなら、カイリーのためにやれることは何もない。言葉で勇気づけることはできるかもしれないけれど、それだけだ。ここまでたどり着いたのに、膝蓋骨の骨折という重症を負ってしまったのだから、彼自身も相当なショックを受けるだろう。でも、これが現実なんだ。個人的には、最悪の出来事だと思う。自分が彼の立場に立ったとしたら、誰かに励まされても怒りを覚えるかもしれない。それでもチームメイトは彼を勇気づけるべきだ。チームにとって必要な存在だと伝えるべきだ。チームメイトを励ます存在として、コート上で彼が必要になる。

僕も病気(肺血栓)を患ったとき、すべてを諦めかけた。もうダメだと思った僕を立ち直らせてくれたのは、妻だった。病気がわかったとき、希望はないと思ったし、もし健康な状態に戻れたとしても、チームの助けになれるか、そしてプレーオフに進出できるかもわからなかった。

僕にできたことは、明日のことを考え、気持ちを取り戻すことだった。そして復帰するという意欲を持って、リハビリを続けることだった。


第2回:力を発揮する方法

ここ数週間もの間、ファイナル前にどれだけオフを挟んだかがチームに影響すると言い続けてきた。そして、第1戦の開始から6分は、予想した通りの展開になった。

クリーブランド・キャバリアーズとゴールデンステイト・ウォリアーズともに、序盤からリズムに乗れていたとは思う。特にレブロンとステフは。ただ、試合開始からの数分間で、勢いと緊張がどれだけ試合に影響するかも証明された。

試合と試合の間隔が空いてからコートに立つと、それまでとは勝手が違う。あれだけ速いペースで試合が進めば、なおさらだ。両チームともに練習からハードに取り組んで、コンディションも整えて、気持ちも高めてきたと思うけれど、優勝を決めるシリーズの想定はできない。それは、時間とともに体験できることだから。実際に、第1クォーターにクイックショット、それに何本ものミスショットが見られた。

それが敵地なら、さらに難しくなる。慣れた環境ではないし、シーズンを通して数回しかプレーしていないアリーナだからね。だから感情をコントロールして、圧倒されないようにするものだけれど、自分に嘘はつけない。ファイナルを戦っていることを知っているのは、誰よりも自分自身なわけで、周りも同じことを言う。すべてが異なり、メディアの対応も違う。これは大きなショーなんだ。そういう雰囲気に慣れる必要がある。身体を動かして、疲れを感じて、それで緊張が解れるものなんだ。

そうすることで、ようやく、「OK。これはバスケットボールの試合」と気づけるようになる。リラックスできるようになれば、もう大丈夫だ。

ホームでプレーすることも、これまでの試合とは別物になる。3ポイントシュートを決めれば全員が立ち上がって応援してくれるし、ランを決めれば、すべての観客が後押ししてくれる。どんな方法でだってファンに影響を与えられる。それは素晴らしいことだよ。

でも、敵地になると、勝利を収めるのはさらに難しくなる。良いプレーをしても観客は無反応。自分を奮い立たせる力になるものを自分で見出さないといけない。仮に敵地の観客を黙らせることができたとしても、自分の力の源になるものは、自分で見つけないといけない。観客から得られないのだから、どんなに些細なことでも、力に代えられるものを見つけないといけないんだ。チームメイトから力をもらう、あるいは自分自身で何とかできなければ、絶対に得られない。

僕の中では、ウォリアーズが第3Q終盤にランを決めて観客の声援を味方につけた瞬間、あれが試合のターニングポイントだったように思える。


第1回:第1戦の雰囲気は特別

今日は、おかしな1日に感じる。NBAファイナルに出場していないのは5年ぶりのことで、少しばかり腹も立っているけれど、家族と時間を過ごせるのも良いものだね。昨日ツイートしたように、この期間を幸せなこととして受け止めているよ。僕の健康状態にとっても感謝すべきことだから、今は試合から離れるほうが良いのかもしれない。

練習が再開できるようになって嬉しい。自分のプレーを成長させられるから、興奮してもいる。バスケットボールで成功を収めると、長いシーズンを戦い抜いて、短期の休暇を楽しんで、また仕事に戻るというスケジュールになる。試験の前に詰め込んで勉強するような感じで、またすぐにプレーできる状態に戻さないといけないんだ。そういう意味では、僕はしばらくぶりに自分のプレーを成長させられる時間を得たと思っている。

ここ何年かで経験したファイナル第1戦については、思い出さずにはいられない。

選手は神経質になってしまうもので、集中力、興奮、緊張、とにかくファイナルは別物なんだ。多くのメディアからも注目される。たとえホームアリーナであっても、まるで違う場所にいるかのような錯覚を起こしてしまう。ただの1試合であることに変わりはないけれど、メディアデイがあって、あらゆるところで称賛される。勝手を知っている場所でさえ、わからなくなることもある。それだけの雰囲気になるんだ。

ファイナル期間中にテレビを見ようものなら、その喧噪ぶりを知ってしまう。周りの騒ぎに注意を向けないようにしつつ、やるべきことに集中して取り組まないといけない。それで試合をプレーして、1日を終える。

明日もファイナルにまつわる話をさせてもらうよ。現時点での僕の予想は、ゴールデンステイト・ウォリアーズが4勝3敗で優勝! その理由については、NBA公式LINEの投稿でチェックしてもらいたい。

文:クリス・ボッシュ

***

2度のNBA優勝経験を誇るボッシュの“ボイス・オブ・ザ・ファイナル”に関する詳細は、LINEアプリをダウンロード( line.me/download )後、NBA公式アカウントをフォローしてチェックしよう!

著者