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L・オルドリッジ加入のスパーズに求められる変化

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サンアントニオ・スパーズは、今オフにフリーエージェントとなったラマーカス・オルドリッジ(フォワード/センター)と4年契約を結び、大型補強に成功した。リーグ屈指の才能を持つビッグマンとして高く評価されているオルドリッジの加入により、チーム内の世代交代が円滑に進むほか、選手の能力を最大限に引き出すことで知られるスパーズが、オルドリッジの力をさらに開花させる可能性もある。

理論上、スパーズのチーム力が増すのは確実と見られているが、実際にコートでプレーする場合には、改善しなければいけない問題も存在する。単刀直入に言えば、オルドリッジのオフェンス技術と、スパーズの現オフェンスシステムは完璧にはマッチしないだろう。

ここ数年のスパーズは、オープンショットが打てる選手が現れるまで絶え間なくボールを動かし続けるスタイルで、好成績を残した。それは、NBAのSportVUプレーヤートラッキングによる昨季の統計を見ても明らかだ。スパーズは、パスを出すまでの平均秒数でリーグ4位に入っている(下図を参照)。

リーグ屈指の素早いパス回しを基本とするスパーズで、1人の選手がボールを長く持つことは珍しい。ここで注目したいのは、昨季のオルドリッジが、パスを受けてからボールを持っていた平均秒数だ。

同統計データによれば、オルドリッジは、パスを受けてから平均1.9秒ボールを保持していたことがわかる(下図参照)。昨季スパーズに所属していたビッグマンの誰よりも長くボールを保持したオルドリッジの同平均秒数は、昨季のリーグ内のセンターの平均値よりも0.5秒長い。大したことではないと思われるかもしれないが、ショットクロックが24秒に制限されたルールで、スパーズのようにボールを動かし、守備を重視するチームにとっては問題になり得る要素だ。

そして、 セス・パートナウ記者によるTrue Usage statistics のような興味深いデータもある。ボールを保持した選手がチームメイトへのパスではなく、シュートの試投、シューティングファウル、ターンオーバーで結果的にポゼッションを終えた割合を表すデータを見ると、オルドリッジがボールを保持したケースの約60%でポゼッションが終わっていることがわかる(下図参照)。スパーズを退団したアーロン・ベインズの割合も約50%に到達しているが、ベインズは昨季1試合平均で20回程度しかボールに触っていない。そのほかのスパーズの選手の数字を見ると、全員40%以下、つまり、繋ぐ意識が高いことがわかる。

パスを回し続けて得点機会を作るスパーズのオフェンスシステムにおいて、特定の選手がボールを保持し続ける例は数少ない。だが、新加入オルドリッジの武器は、中間距離からのシュート能力だ。現役選手の中で数少ない生粋のポストスコアラーと言えるオルドリッジは、ポートランド・トレイルブレイザーズ時代、ボールの回し手ではなく、受け手としてオフェンスの中心を担った。

これらのデータから、オルドリッジほどの才能を持つ選手と、ここ20年成功を収めてきたスパーズとのケミストリーが失敗すると言いたいわけではない。しかし、オルドリッジがこれまでのスパーズのシステムに合わせてプレーすれば良いという単純な話でもないことも、わかってもらえるだろう。

スパーズがオルドリッジの得点能力を最大限に生かすには、オルドリッジの周辺にスペースを作る方法を見出さなければならない。オルドリッジを軸に攻撃を組み立て、周囲のスコアラーも生かす新たなシステムの構築が不可欠になる。

オルドリッジの加入により、スパーズの力は間違いなく上がった。あとは、新チームの完成度が高まるまで、しばし待つのみだ。

原文: LaMarcus Aldridge means Spurs have to redesign their offense by Ian Levy /Sportingnews.com (抄訳)

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