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大逆転優勝で負の歴史を塗り替えたキャブズ

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たった1試合で、全てが正しい方向に転化した。

ジョン・エルウェイ(元NFLデンバー・ブロンコス所属)に決められた99ヤードのドライブ、ホセ・メサ(元MLBクリーブランド・インディアンス所属)の9回セーブ失敗、アーネスト・バイナー(元NFLクリーブランド・ブラウンズ所属)のファンブルなどにより、50年以上優勝を経験していなかったクリーブランドを本拠地とするプロスポーツチームの負の歴史が塗り替えられた。

2010年、地元のスターだったレブロン・ジェームズは、故郷にタイトルをもたらす前にマイアミ・ヒートへの移籍を決意。クリーブランドから離れていた間、ジェームズはヒートで2度優勝した。だが、その時期に受けた批判も、大注目を集めた2016 NBAファイナルシリーズで歴史的な1勝を収めたことで、どこかに消えてしまった。

優勝までの過程の中、ファイナルMVPに輝いたジェームズを中心にまとまったキャブズは、オラクル・アリーナで行なわれた第7戦に93-89で勝利し、NBAファイナル史上初となる1勝3敗からの大逆転劇を締めくくった。

今季最後の試合は、今シリーズ中のどの試合とも異なり、感情が揺さぶられる瞬間が多かった。第4クォーター残り4分39秒にクレイ・トンプソンのレイアップが決まり、89-89の同点となってから、残り53秒にカイリー・アービングが相手と接触しながら放った厳しい3ポイントシュートを成功させるまでの間、両チームの均衡状態が続いた。

試合後、米ネットワークABCのインタビューを受けたジェームズは、「誰もが、僕たちが負けると思っていた」と、語った。

「僕は、この瞬間のために戻って来たんだ……でも今は、とても現実とは思えない」。

両チームともに、それぞれの勝利の方程式を用いることができなかった。もがき、苦しみ、ようやく点を取る、という展開だった。

ウォリアーズが誇る2人のスコアリングスター、クレイ・トンプソンとステフィン・カリーは、まるで別人のような不調に陥り、2人合計31得点(カリー17得点、トンプソン14得点)と苦しんだ。リーダーとしてキャブズを引っ張ったジェームズも、チームがあげた18得点中11得点を決める大活躍を見せた第4Qまでは、リズムに乗りきれなかった。

2014年にキャブズ復帰を決断したジェームズは、クリーブランドの無冠の歴史に終止符を打つ特別な存在として、相当な重圧を受けているという意見を否定し続け、第7戦前日の会見でも、こう語っていた。

「復帰したのには理由がある。優勝をクリーブランドに持ち帰るために戻ってきたんだ。ノースイーストオハイオ、オハイオ州全土、世界中のキャバリアーズファンに優勝を届けるため、戻ってきたんだ。それが僕の目標の1つだけれど、余計なプレッシャーは感じていない」。

だが、試合終了のブザーが鳴った直後、ジェームズの胸の内にあった感情が露になった。キャブズが崖っ淵に追い詰められてからの1週間、どれだけの重圧を背負ってきたたかが白日の下に晒された瞬間だった。

今季最終戦は、第1Qから激闘となる兆しが見て取れた。試合開始後、いつものようにオラクル・アリーナに詰めかけたウォリアーズファンの大声援が響く中、キャブズの粘り強いディフェンスの前に、ウォリアーズは攻め込むスペースを見出せなかった。ハリソン・バーンズ、先発に起用されたフェスタス・エジーリの不調も重なり、第1Qはフィールドゴール20本中8本成功にとどまった。それでも3Pを11本中5本成功させたところは流石だったが、それ以上のインパクトは残せなかった。

しかし、苦しんだのはキャブズとて同じだった。ドレイモンド・グリーンが出場停止処分を受けた第5戦、アンドリュー・ボーガットが負傷離脱した第6戦とは異なり、ウォリアーズのディフェンスに活力が戻っていることを、キャブズも感じ取っていた。第1QはFG21本中9本、3Pに至っては4本中0本に抑えられ、第2Qの残り7分3秒にイマン・シャンパートがショーン・リビングストンからのファウルを受けながらも決めるまで、キャブズは1本も3Pを成功させられなかった。前半終了までに14本中僅か1本しか3Pを決められなかったのだ。

そんな中、ウォリアーズのグリーンにとっては、全てが正しい方向に進んでいた。第2Q残り3分47秒、トップ・オブ・ザ・キーから右ウィングに移動したカリーのシュートを警戒したキャブズは、グリーンのマークに付いていたジェームズを含む3選手でシュートコースを塞いだ。だが、カリーはグリーンへのパスを選択。周囲およそ2.4mに誰もいない状況というリスペクトを欠いたディフェンスに対し、グリーンは容易く3Pを成功させた。グリーンは、試合開始から5本連続の3P成功を含む22得点、6リバウンド、5アシストを前半だけで記録する大活躍だった。

それでも前半は、13度のリードチェンジ(第6戦では試合開始から終了までキャブズがリードを死守したためリードチェンジは0回)、7度の同点という、競った展開に発展した。第2Q残り2分8秒にリアンドロ・バルボサが3Pを決めて47-40とウォリアーズが7点をリードするまでは、常に4点差以内の攻防が続き、王者が49-42で7点差をキープしたまま、前半を折り返した。

追うキャブズは、第3Qに違いを生み出す。それも、ジェームズに頼るのではなく、J.R.・スミスの2本連続3P成功、ファストブレイクからアービングがねじ込んだ2本のレイアップを含め、第3Q開始からFG11本中9本を決めて60-59と逆転に成功。その後もウォリアーズのディフェンスにプレッシャーをかけ続けたキャブズは、第3Qだけで9回もフリースローラインに立つ機会を獲得し、王者から落ち着きを奪った。

第3Q中にリードを最大7点(70-63)に広げたキャブズに対し、ウォリアーズは同Q終盤に13-5のランを決め、1点リード(76-75)で最終Qを迎えた。

第3Qが終了した時点で、両チームの選手たちは疲弊しきっていたように見えた。

そして、試合終盤にアービングのミラクルショットで神経が磨り減る展開を打破したキャブズは、苦しみながらも、その名を歴史に刻んだ。

原文:Cavaliers erase Cleveland's hurt with surreal NBA Finals championship comeback by Sean Deveney/Sporting News


[特集]2016 NBAファイナル: ウォリアーズ vs キャブズ


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