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クリッパーズに浸透するボールムーブメント

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ディアンドレ・ジョーダンは、11月14日(日本時間15日)にステイプルズ・センターで行なわれたブルックリン・ネッツ戦で、ペリメーター内でオープンだったクリス・ポールを見つけたにもかかわらず、パスを出さなかったプレイを詫びた。ポールは気にするなとばかりにジョーダンの首を掴み、額と額を軽く合わせようとしたが、思いのほか勢いがつき、頭突きのような形になってしまったが――。

これこそ、ネッツ戦でクリッパーズが唯一プラン通りにいかなかった瞬間だった。

ボールムーブメントに関して言えば、継続して適切なタイミングで、適切な位置に運ばれ、ネッツが思い描いたプレイより二手も三手も先を行っていた。その結果、クリッパーズは127-95で完勝。今季球団最多となる1試合32アシストをマークしたほか、5選手が4アシスト以上という数字を残した。

ドック・リバース・ヘッドコーチは、ボールムーブメントについて、「チーム内に浸透している。本当に浸透している」と言う。

これだけのボールムーブメントに加えて、こちらも好調なディフェンスが合わさり、クリッパーズは試合開始から主導権を握った。彼らが連勝を7に伸ばし、リーグベストとなる10勝1敗の戦績を残すことは、わずか1クォーターを見れば明らかだった。

前半終了までに今季球団最多となる18アシストを記録する前の時点、もっと言えば試合が始まる前から、リバースHCは以前よりチームがオフェンス面で信頼し合っていることを実感していたという。流れが停滞し始めたとき、選手たちはその原因に気づいた。そして、ポールの指揮にも助けられ、これまで機能していたプレイに戻すことができたのだ。

オフェンスを引っ張ったポールは、得点(21)とアシスト(9)でチーム最多を記録。ポール自身も、自らが大部分を担っているボールムーブメントの質が上がったことを実感している。

「これまでも言ってきたように、僕たちは何年も一緒にプレイしているし、いろいろと経験してきた。だから、これまでよりも時間をかけずに修正できるし、学ぶこともできるんだ」。

クリッパーズはシーズン開幕から攻守が機能している。リーグ最少の失点を誇る鉄壁の守備のほか、攻撃も同様に爆発力を増してきている。

開幕から5試合目まではチームアシストの数は22以下にとどまり、そのうち4試合ではフィールドゴール成功率も41%を下回った。その原因は頻繁にボールが止まっていたことにあった。それが直近6試合を見てみると、そのうち5試合でFG成功率45%、24アシスト以上を記録し、全6試合で110得点以上をあげている。

その結果は言うまでもない。クリッパーズは守備だけではなく、攻守共にNBAトップ5にランクインしている唯一のチームとなった。なおかつ、ここ6試合では攻守両面でリーグ最高の数字を残している。

リバースHCは、「素晴らしいケミストリーが起こっている」と好調の理由を語った。

「これまでとは異なる感覚だ。このチームは今までと異なる。もちろんまだまだ先は長い。しかし、今のプレイは非常に良い」。

ネッツ戦では、第3Qが終了するまでに勝負を決め、先発全員を休養させた。その直前、ドライブを仕掛けたJ.J.・レディックがオープンになっているブレイク・グリフィンを見つけてパス。これを掴んだグリフィンが雷のようなダンクを叩き込んだ。その直後には、ポールがレーンを突破し、ネッツのジャスティン・ハミルトンを引き付けてゴール下のジョーダンにパス。ジョーダンのダンクにハミルトンは成す術なく棒立ち状態になった。

グリフィンも、「今はボールムーブメントが凄く良い」と話す。

「カッティングも素晴らしいレベルにあるね。それもトレーニングキャンプの序盤から取り組んできたことなんだ。ポストプレイの際も、お互いの動きを理解し合っているし、皆がチームのオフェンスを理解し合っているよ」。

ネッツ戦では、ポール、グリフィン、レディックだけで合計19アシストをマークしたが、ボールムーブメントの意識は先発陣だけに限られているわけではない。オースティン・リバースはセカンドユニット最多の6アシスト、ジャマール・クロフォードも17得点以外に5アシストを記録した。

リバースHCは、「ジャマールはレイアップを打てる状況だったのにパスを出した。オースティンも2本はレイアップを打てる場面があったのに、(味方の)3ポイントショットのためにパスを優先した」と、2人のチームプレイを称えた。

リバースHCが言うように、ボールムーブメントの浸透により、今は守備、それから勝利もチームに浸透し始めている。そして、何よりもリバースHCが注目しているのは、チームに確固たる意識が根付いていることだ。リバースHCは、チーム内に広がる病的なまでの“浸透”に心から満足している。

「たとえ病気であっても、良い病だ」。

原文:Ball Movement Becoming Contagious As Clippers Trounce Nets by Rowan Kavner/Clippers.com


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ