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[宮地陽子コラム第40回] NBAデビューを果たしたジョン・ストックトンの息子デイビッド

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David Stockton Kings

2月21日(現地)、ステイプルズ・センターで、とある選手がNBAデビューを果たした。デイビッド・ストックトン、殿堂入りした名選手、ジョン・ストックトンの三男だ。去年、父と同じゴンザガ大を卒業。今シーズンは開幕からNBAの下部組織、Dリーグのレノ・ビッグホーンズでプレーしていたところ、2月20日にサクラメント・キングスにコールアップされ、10日間契約を交わしていた。

ロサンゼルス・クリッパーズに30点以上リードされた第4クォーター半ば、正確には第4Q残り6分42秒にストックトンの出番が回ってきた。勝敗が決まった後の、俗に言う“ガーベッジタイム”での出場だ。子供の頃から父の試合を何百試合と会場で見てきたのだから、慣れた雰囲気のはずだったが、それでも緊張し、同時に興奮もしたという。

「すばらしい気分だった。伝説的なアリーナのステイプルズ・センターで、とても興奮した。アドレナリンが出っ放しだった」とストックトン。スタンドから試合を見るのと、実際に自分が出るのはまったく違うようだ。

結局、試合終了までの6分42秒出場し、1点、1アシスト(父の記録まであと1万5805本!)、2リバウンド、2ターンオーバーに終わった。2つのターンオーバーは、偶然マッチアップすることになった同じ二世選手、オースティン・リバースに奪われた。

デビュー戦の自身の出来を聞くと、「(全体としては)悪くなかったと思うけれど、最後のほうに少しレイジーなプレーをして2本のターンオーバーをしてしまった。相手(リバース)が30点を取ろうとしていたのに気づかなくてはいけなかった」と反省した。

最後のコメントは、残り30秒を切った後に、この試合自己最多の28点を記録したリバースに2回続けてスティールされ、得点されたことをさしている。大人しそうに見えるけれど、このコメントだけでも、かなりの負けず嫌いなことが伺える。

実は、ストックトンとキングスとの10日間契約はきょう(現地3月2日)で切れる。報道によるとキングスは2回目の10日間契約をオファーする予定はないという。結局、キングスにいた10日間でストックトンが出たのは、クリッパーズ戦1試合、6分42秒だけだった。

ところで、試合ではストックトンから2本のスティールを奪い、プロの厳しさを見せつけたオースティン・リバースだが、ストックトンには二世選手として仲間意識を持っているようだ。クリッパーズ対キングスの試合後、ストックトンについて聞かれたリバースは、こう言っている。

「少し緊張し、プレーを躊躇しているのがわかった。それは誰でも経験することだ」。

「きょうは彼とは話すことはできなかったけれど、僕も彼と同じことを経験してきた。ルーキーのとき、他の選手たちから嫌われたりもした。僕らの育ちや、僕らがここまで到達したことが嫌なんだ」。

「でも、実際には彼らよりも僕らのほうが少数だ。今のNBAに父親がNBAでプレーしていた選手が何人いるかわからないけれど、生まれて、最初からすべて与えられるという環境で、その中で満足してしまうか、それとも自分自身で成し遂げようと思うかなんだ。だから、僕はここにいる彼に敬意を持っている。すばらしい選手だとういことはわかる。この先も努力し、自分の道を見つけることだ。これが彼にとっては最初の試合だったのだから、人が言うことは気にせず、プレーし続ければ、うまくいくはずだ」。

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宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

スポーツライター/バスケットボールライター