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[宮地陽子コラム第31回] 1勝が成否を分ける“歴史的な激戦”がまもなく開幕

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先週、ステイプルズ・センターで行なわれたポートランド・トレイルブレイザーズロサンゼルス・クリッパーズのプレシーズン試合の取材に行ったときのこと。試合前のビジター・ロッカールームに一歩踏み入れて、その明るさに驚いた。ふだんのロッカールームも決して暗いわけではないのだけれど、その数倍明るかったのだ。よく見ると部屋の隅に50cm四方ぐらいのフラットライトが3つ置かれていて、部屋を煌々と照らしていた。

ちょうど近くを、ブレイザーズのテリー・ストッツHCが通りかかったので、照明の目的を尋ねると、「明るくするためだよ」という、まったくとぼけた答えを返されてしまった。たぶん詳しいことは話したくないのだろうと思いながら、「明るくすることで何かいい影響があるのでしょうか?」と聞くと、「そうだ。科学的なことなんだ」とだけ答えてくれた。

後でこっそりと別のスタッフに聞いたところ、照明によって体内時計をコントロールし、試合前に身体をアクティブにするという試みらしい。果たして、そのことがどれだけコート上での結果につながるのかはわからないが、たとえば82試合のシーズンで1勝でも2勝でも上乗せできる可能性があるのなら試みよう、ということなのだろう。

最近のNBAはどのチームも、プレー面での科学的分析だけでなく、選手の疲労コントロールや怪我の予防、時には心理的なことまで、様々な研究結果から自分たちに役に立ちそうなことを取り入れている。それだけ競争が激しく、1勝がシーズンの成否を分ける世界なのだ。

なかでも、この数年のウェスタン・カンファレンスはかなり競争が激しい。たとえば昨シーズン、カンファレンス9位と、あと一歩でプレーオフ出場を逃したフェニックス・サンズの成績は48勝34敗だった。そのサンズを抑えて第8シード、最後のプレーオフの座を勝ち取ったダラス・マーベリックスの成績は49勝33敗。まさに1つの勝ち負けが運命を分けた。そのマーベリックスはプレーオフ1回戦で、その後チャンピオンとなったサンアントニオ・スパーズ相手に3勝4敗と肉薄したことを考えると、西のトップから9位までの差がごくわずかだったことがわかる。

それは今シーズンも変わりそうにない。

「プレーオフに出た8チームで、夏の間に戦力を落としたチームはないと思う」というのはブレイク・グリフィン。確かに、どのチームも戦力を維持したか補強したチームばかり。オクラホマシティ・サンダーは、MVPのケビン・デュラントが故障で開幕には間に合わず、少し出遅れが考えられるが、むしろ、そのことがさらに競争を激しくしていると見ることもできる。

「私に言わせると西はまったくの横並びだ。スパーズはほかより頭ひとつ抜けているけれど、次の8チームは横並びだと思う」と、クリッパーズのドク・リバースHCは言う。

「どのチームも、シーズン中の1試合の負けが、プレーオフで第3シードと第4シードの違いになることはわかっている。(昨シーズンのプレーオフを逃した)ジャズやペリカンズも成長していて侮れない。歴史的に厳しい戦いになるだろう。毎試合、しっかり心構えをして臨まなくてはいけない。それは私たちにとって大きなチャレンジだ」。

"歴史的な激戦"──コーチたちは大変かもしれないけれど、10月28日(日本時間29日)の開幕から、毎試合がプレーオフのシードを左右する戦いなんて、NBA好きにとっては天国だ。

Turn the lights up! コートだけでなく、ロッカールームでも。

今シーズンも、NBAの取材現場で見つけたこと、聞いた話をもとにコラムをお届けします。よろしくお願いします!

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji


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