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[2017-18シーズン戦力分析]ワシントン・ウィザーズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2017-18シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第22回目は、ワシントン・ウィザーズ編をお届けする。

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2016-17シーズン成績:49勝33敗

新加入選手:ティム・フレイジャー(トレード)、ジョディ・ミークス(フリーエージェント)、マイク・スコット(フリーエージェント)

退団選手:ボーヤン・ボグダノビッチ、ブランドン・ジェニングス

昨季のウィザーズは、チーム名を現在のものに改名して以降初の年間50勝に1勝届かなかった。それでも2017年のイースタン・カンファレンス準決勝に勝ち進んだ。

また、オットー・ポーターJr.を見ればわかる通り、イースト4位のチーム内で3番手であっても不満を抱えていない選手もいる。

2013年ドラフト全体3位指名選手のポーターJr.は、多くの新人と同様に1年目から徐々に力を発揮し始め、昨季は頼れるシューターに成長し、フィールドゴール成功率51%、3ポイントショット成功率43%という結果を残した。ウィザーズではジョン・ウォール、ブラッドリー・ビールに次ぐオプションではあるものの、昨季のMIP賞を決める投票で4位のポイントを集めた。これまでの成長を見る限り、NBAで安定したキャリアを送れる選手ということがわかる。

そして今夏、制限付きフリーエージェントになる時期を迎えた。たいていのケースの場合、フリーエージェント選手にとって重要なのは、タイミングと勢いだ。制限付きフリーエージェントだったポーターの場合、そのどちらにも恵まれていた。ポーターに関心を持ったのは、武器を持った若手を欲し、サラリーキャップに余裕のあるブルックリン・ネッツだった。そしてネッツは4年1億700万ドル(約118億2200万円)という大型契約を提示し、ウィザーズがこれにマッチした。制限付きフリーエージェント選手に関するルールにより、ウィザーズは契約期間内中は毎年10月1日(日本時間2日)までに各年の年俸の半額をポーターJr.に支払わないといけない。

これにより昨季1試合平均10本のショットを放ったポーターJr.は、来季2400万ドル(約26億5000万円)の年俸を受け取る。ウィザーズも、同選手の残留を喜んでいるだろう。

ポーターJr.のような選手にこそ、チームは投資したがる。24歳で安定感があり、プロフェッショナルの姿勢を身に着けている。1年目と比べて大きく成長もした。新人時代は3P成功率19%だったのだが、昨季は3P成功率でリーグ4位の数字を残していることが、その証だ。急成長を遂げながらも、ウィザーズはポーターJr.の全盛期はこれからと見ている。

ポーターJr.の残留により、ウォールとビールを含むトリオはウィザーズで全盛期を迎える。つまり、このままイーストで優勝を狙えるベストな環境が整った。

今夏ウィザーズは、選手獲得より現有戦力への資金投入に力を注いだ。ポーターJr.との再契約以外にも、ウォールと4年1億7000万ドル(約187億7100万円)のマックス契約を締結し、チームのベストプレイヤーを満足させた。

1年前の状況を考えると、ここまで上手く事が運んでいるのは不思議に思える。昨夏はワシントン出身のフリーエージェント選手、ケビン・デュラントと交渉すらできなかった。一昨季はビールが健康な状態を維持できず勝率5割を上回れなかった。昨季は昨季でマーチン・ゴータットによるチーム批判も見られた。またイアン・マヒンミを過大評価し、今後3シーズンは1600万ドル(約17億6600万円)の年俸を支払わなければならない。

それでも昨季は全てが機能した。ポーターJr.は大きく成長し、新人ケリー・ウーブレイJr.は可能性を示した。ウォールは4年連続オールスターに選出され、ビールはリーグで3人しか達成できなかった平均23得点以上、3P成功率40%以上をマーク(あとの2人はカイリー・アービングとステフィン・カリー)。レギュラーシーズン後半戦はリーグトップクラスとなる27勝14敗で乗り切った。

この結果を受け、今夏ウィザーズは大幅なロスター改造ではなく、現在の路線を継続する方を選択し、チーム内のベストプレイヤーを満足させることが目標だった。クリーブランド・キャバリアーズ、トロント・ラプターズ、ボストン・セルティックスに対抗するために下した判断により、ウォール、ビール、ポーターJr.の年俸は年俸2000万ドル(約22億円)を超えた。

今夏しなかったことは、パワーポジションのアップグレードだ。資金的な余裕がなかったためゴータットを残した。あとはマヒンミが健康な状態に回復し、マーキーフ・モリスが安定したプレイをもたらしてくれることを当てにしている。

昨季途中にボグダノビッチとクリス・マッカラーを獲得するのにドラフト1巡目指名権をネッツに譲渡した結果、ボグダノビッチはわずか3か月の在籍に終わってしまった。それでもマッカラーには、発展途上の22歳のパワーフォワードという評価を与えている。

新加入のマイク・スコットとジョディ・ミークスは経験豊富なベテランで、チームの力になれる。ミークスはけがの影響により直近3シーズンで99試合にしか出場していないものの、キャリア3P成功率37.6%を記録している。スコットはベンチからの得点源になれる万能性の高いスコアラーで、シュート力をチームにもたらしてくれる存在だ。

ジェニングスとの再契約を結ばないことを決めた以上、今季はフレイジャーがウォールの控えを務めなければならない。スピードに優れ、緩急をつけたプレイが可能なポイントガードではあるのだが、キャリアFG成功率はわずか40.3と心許ない。

2年前、ウィザーズはデュラントの獲得準備を進めるためビールへの延長契約提示を遅らせた。結果として希望は叶わなかったのだが、今夏はウォールがポール・ジョージを獲得できればチーム力は飛躍的に上昇すると発言。だがこれも現実のものにはならなかった。

ウィザーズはドラフト指名選手の育成、現有戦力の成長という方針を貫いた。もしデュラントやジョージを獲得できていたら、イーストの優勝候補になっていただろうか? その可能性はあっただろうが、レブロン・ジェームズがキャブズに今後も残るかどうか怪しくなっていることを考えれば、ウィザーズは、近い将来アクションを起こせる絶好のポジションにいると言える。

原文:30 Teams in 30 Days: Climbing NBA hierarchy solely on Washington Wizards' minds now by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)


2017-18 ワシントン・ウィザーズ主要データ

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