NBA

[2017-18シーズン戦力分析]ユタ・ジャズ

Author Photo
Sporting News Logo

NBA.comのショーン・パウエル記者が2017-18シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第23回目は、ユタ・ジャズ編をお届けする。

MORE:[2017-18シーズン戦力分析]全30チームの戦力を徹底チェック!


2016-17シーズン成績:51勝31敗

新加入選手:ドノバン・ミッチェル(ドラフト)、リッキー・ルビオ(トレード)、ジョナス・ジェレブコ(フリーエージェント)、タボ・セフォローシャ(フリーエージェント)、エペイ・ユドー(フリーエージェント)

退団選手:ゴードン・ヘイワード、ボリス・ディーアウ、ジョージ・ヒル、シェルビン・マック、トレイ・ライルズ、ジェフ・ウィジー

ジャズは嫌なボディブローが来るのをわかっていた。そして、それを受けてしまった。2017年の夏、NBAで最も大きな痛手になったのは、ゴードン・ヘイワードの退団だろう。ポール・ジョージを失ったインディアナ・ペイサーズでも、クリス・ポールをトレードしたロサンゼルス・クリッパーズでもなく、ジャズが受けたダメージが最も重かった。

すでに下降し始めていたペイサーズ、ポールを含むチームで限界に到達したクリッパーズとはわけが違う。ジャズはようやくヘイワードを中心とするコアを作り上げ、ウェスタン・カンファレンスの荒波を乗り越え始めたところだったのだ。

すべてヘイワードのために正しい行動をとってきたにもかかわらず、その努力が実らなかったこともジャズにとって痛手だった。2010年のドラフトで指名し、オールスター、NBAトップ15には入る選手にまで成長させた。ファンのサポート、優秀なクイン・スナイダー・ヘッドコーチの指導、デニス・リンジーGMによるファーストクラスの球団運営を含め、選手としてレベルアップするのに必要な完璧な環境をヘイワードに与えてきた。それに加えて、ヘイワードの周りを固められる優秀な選手をドラフトで指名してきた。その最たる例は、2年前に総額1億ドル(約110億円)で再契約したほどのモンスターに化けつつあるルディ・ゴベアだ。

そもそも、今夏ヘイワードが無制限フリーエージェントになるのはわかっていたことだ。当然、多くのチームがヘイワードの獲得に名乗りを挙げることもわかっていた。ただ、バトラー大学時代の恩師ブラッド・スティーブンズHCが率い、優勝レベルにあり、伝統のあるボストン・セルティックスに対抗するのは簡単ではなかった。

ジャズがとった手法の粗探しもできる。3年前にヘイワードとマックス契約を結ぶべきだったという意見は根強い。当時ジャズは、制限付きフリーエージェントだったヘイワードにシャーロット・ホーネッツからのオファーシートを受けさせ、それにマッチした。それもこれも、ジャズからすればヘイワードを今後もチームに残すための方法だった。

ヘイワードの退団を受け入れるのには時間がかかる。きっとジャズは、「自前の選手を育てても強豪に移籍されるのだろうか?」と考えているだろう。そして不意に、NBA選手が希望移籍先にソルトレイクシティの名前を挙げないという古傷について考え始め、小規模な市場の球団に危険が迫りつつあると感じ始めるかもしれない。現代の選手には、雄大なワサッチ山脈の美しさ、そして1チーム一筋のキャリアを送る魅力は十分ではないのかもしれない。

ヘイワードはジャズの中心選手に育ち、競った試合の終盤には頼れる存在だった。彼はケビン・デュラント、レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリーのようなフランチャイズプレイヤーではなかったが、大半のチームでリードボーカルを務められる選手だ。

そのヘイワードがセルティックスと契約を結んだ後、ジャズは痛みを伴う人員整理を始めた。トレードでミネソタ・ティンバーウルブズからリッキー・ルビオを獲得し、フリーエージェントだったジョージ・ヒルとの再契約を選択しなかった。ヒルは退団し、サクラメント・キングスと高額の契約を結んだ。そのヒルを称賛するヘイワードの姿が見られた今年の3月には想像もできなかった結果だ。

獲得したルビオは、ジャズにとってジョン・ストックトン以来初とも言えるパス優先型のポイントガードだ。チームメイトを探す能力、大半のオフェンスを引っ張る力のあったヘイワードがいた頃は必要としなかったタイプの選手である。ルビオがいれば、これまで自らチャンスを作らなければいけなかったチームメイトに得点機会を与えられる。言い換えれば、今季はルビオのロブパスをゴベールがフィニッシュさせる形が多く見られるだろう。

ルビオの課題はアウトサイドシュートで、ここが改善されなければ彼のインパクトは薄れてしまう。ルビオの獲得により明確になったのは、ジャズがダンテ・エクサムの力に確信を持てていないということだ。ロッタリー指名を受けたエクサムは、昨季3P成功率29%に終わったほか、ポイントガードに必要なプレイメイクの力を発揮できなかった。

エクサムは新人時代に可能性を感じさせたものの、前十字靭帯の断裂により2015-16シーズン全休を余儀なくされた。昨季復帰したのだが、ヒル、それからシェルビン・マックとの競争に勝てなかった。まだ22歳という見方もできるが、年齢による擁護は最終的になくなる。ジャズはエクサムに対する決断を来夏までにしなければならない。

その他では、退団したボリス・ディーアウとのポジション争いに負け、2年目の期待に応えられなかったライルズを諦め、ストレッチ4のジョナス・ジェレブコと契約した。今年のドラフト1巡目に指名したドノバン・ミッチェルは、サマーリーグで印象に残る活躍を見せた。

ミッチェルはジャズが時間をかけて育てたいタイプの選手で、きっと潜在能力を発揮してくれるだろう。ただ、それはヘイワードのケースと一緒とも言える。1度目の延長契約はチーム手動で行なえたが、2度目の延長契約は違った。

過去の失敗は、ゴベアと2度目の延長契約を結ぶ際にジャズを苦しめることになるのだろうか?

原文:30 Teams in 30 Days: Utah Jazz regroup after summer shock of Gordon Hayward's departure by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)


2017-18 ユタ・ジャズ主要データ

プロフィール

日程

ロスター


著者
NBA Japan Photo

NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ